東北の大震災の時に、防災対策庁舎から、「津波が来ます 高台に逃げて下さい!」と、何回も何回も防災無線から町民に避難をよびかけるアナウンスを流しつづけた、当時24歳の宮城県南三陸町町職員の遠藤未希さんは、自ら津波の犠牲となりました。
遠藤さんだけではありません。
消防の車で同じように高台への避難をマイクで呼びかけ続けた消防職員や、たくさんの消防団員のみなさん。
交差点に立って交通整理をしながら早く避難しろと声をからせて訴えた警察官たち。
黙々と住民の避難誘導を助けた役所の職員たち。
お年よりや足の悪い人、子どもの誘導を世話した民間人の方たちも含めて多くの人たちが、自分も早く逃げたいのを我慢して、しかし、その瞬間では自分よりも他の人たちの人命を優先したのだと思います。
宮城県南三陸町の防災対策庁舎で死亡・行方不明となった町職員33人の遺族が、危険な公務中の災害だったとして、地方公務員災害補償基金に「特殊公務災害」を申請したところ、32人が不認定となったことが5日、わかりました。
1人は未決定だそうです。
この1人が遠藤さんかどうかは別として、明らかに「特殊公務災害」であるにもかかわらず認定しないなんて、出し惜しみをしているとしか思えません。
地方公務員災害補償基金(ちほうこうむいんさいがいほしょうききん)は、常時勤務を行っている地方公務員及び一般地方独立行政法人の役員及び職員について、地方公務員災害補償法(昭和42年8月1日法律第121号)(第七章(非常勤職員等)を除く)に定める補償を実施し、並びに公務上の災害又は通勤による災害を受けた職員の社会復帰の促進、被災職員及びその遺族の援護、公務上の災害の防止に関する活動に対する援助その他の職員及びその遺族の福祉に必要な事業を行うために設置された法人です(地方公務員災害補償法第3条)。
そして、「公務災害」が認められると、最大2160万円の一時金のほか、給与や家族構成に応じた年金などが遺族に支払われます。
特に、今回の大震災のように危険が予測される状況下で犠牲になった場合などには、先に述べた「特殊公務災害」と認定され、一時金、年金とも最大1・5倍が支払われることになっています。
宮城県南三陸町では、住民を避難させようと、最後まで庁舎に残った職員は20数人いたそうです。
でも、無事が確認されたのはわずが8人で、遠藤さんは、防災無線を使いぎりぎりまで住民に避難を呼び掛け、最後に残った職員は、屋上に避難してフェンスやアンテナにしがみついたが、津波の力は想像をはるかに超えていたそうです。
こんな現状をわかっていながら、それでも「特殊公務災害」に不認定だとは、地方公務員災害補償基金は何のためにあるのかわからないと思います。
宮城県南三陸町のようなケースは、他の市町村でもいっぱいあると思います。
遺族は不服として、医師や弁護士などからなる第三者委員会に順次、審査請求を行っています。
ある遺族は「震災という特殊な状況。弾力的な判断をしてほしかった」と話していますが、遺族が二重に悲しむのだけは避けてほしいと思います。

3階の屋上に避難してフェンスやアンテナにしがみついたそうですが、この建物を見る限り、3階まで津波が押し寄せてくるとは、当時は想像できなかったのだろうと思います。
今でも、鉄骨はしっかり残っています。
ある意味、この防災対策庁舎は、あわてて外に逃げるよりは安全な所だと思ったのかもしれません。
だから公務員としての役目がまっとうできたのだと思います。
これは、明らかに「特殊公務災害」に認定すべきだと思います。