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大腸菌感染について

最近のニュースでは、日本だけでなくヨーロッパやアメリカでも大腸菌感染での死亡者が確認されています。
井戸水の水質試験では、この大腸菌は1個でも検出されたら飲料水としては不適となりますが、さて、この大腸菌とはどういうものでしょう。

(1)大腸菌の発見
大腸菌の中には下痢を起こすものがあります。
これらを‘病原大腸菌’もしくは‘下痢原性大腸菌’と呼んでいます。
大腸菌が人の下痢症の原因となることを始めて報告したのは、1927年のAdam(アダム)が最初と考えられています。
その科学者は、胃腸炎を起こしている乳幼児の大便の中からいくつかの大腸菌を分離し、いろいろな種類の糖と混ぜて培養し、どの糖を栄養として利用するかを調べました。
そして、下痢をした多くの乳幼児の大便中に含まれる大腸菌のうち、いくつかの決まった糖を利用するただ1種類の大腸菌が下痢症を起こすと推測しました。
次いで1933年、Goldschmidt(ゴールドシュミット)が胃腸炎の乳幼児から分離された大腸菌に、
①血清学的な特徴があること
②その大腸菌が胃腸炎乳児の約半数から分離されても健康な乳児や成人からはほとんど分離されないこと
③人から人に感染して病気を起こす
という重要な発見をしています。

(2)大腸菌の種類
大腸菌には5種類あります。
① 腸管病原性大腸菌(EPEC)
② 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
③ 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
④ 腸管出血性大腸菌(EHEC)
⑤ 腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC)


1) 腸管病原性大腸菌(EPEC)
EPECは、2歳以下(特に6ヶ月以下)の子供に感染者が多く、発展途上国では乳幼児下痢症の原因の30~40%もがEPECであるとの報告があります。
日本でも、乳幼児の下痢症から散発的に分離されているだけでなく、時には集団食中毒も起きています。
下痢になったとき、粘液便の排せつや水様便が大量に出て脱水症状を引き起こすことがあります。
健康な大人にとっては“たかが脱水”かも知れませんが、乳幼児には重篤な症状を引き起こすことが少なくなく、非常に注意すべき症状です。
また、腹痛やおう吐、軽度の発熱を起こしたり、体がだるいなどの症状が現れたりします。
潜伏期間は多くは12~24時間です。
治癒期間は、一般に乳幼児では1週間くらいまで、成人は1~3日くらいで回復します。

2) 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
EIECは、重症な大腸炎を起こすことで知られる赤痢菌によく似た性質をもち、赤痢菌と同じように大腸の上皮細胞の中に侵入し、増殖しながら周囲の細胞にも広がり、大腸や直腸に潰瘍(かいよう)性の炎症を起こします。
EIECは、乳幼児に感染することはまれです。
また、その発生は散発的なことがほとんどですが、過去には大きな集団例も発生しています。
EIECの潜伏期間は1~5日間(多くは3日以内)で、患者は、しぶり腹を起したり、血液、粘液、あるいは膿(うみ)をまじえた下痢を起こします。
その他に、発熱、はき気、おう吐、けいれんなどの症状が現れることが多く、寒気、頭痛を伴うこともあります。
これらの症状は、長引く場合もありますが多くは2~3日で治まります。

3) 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
ETECは、大規模な食中毒あるいは海外旅行者下痢症の原因となることの多い病原大腸菌です。
特に、東南アジアやアフリカなどの上下水道が十分整備されていない国々へ旅行する方は、ETECなどの下痢を起こす微生物に感染することが多いので、旅先では水道水を口にしない、生の野菜や前もって皮の剥いてある果物は避けるなど、飲食に対する注意が必要です。
症状は、水様性の下痢を伴うことが多く、ひどい場合には、大便がコレラ患者のように ‘米のとぎ汁様’になり脱水症状を起こします。
腹痛、おう吐を伴うことが多く、発熱はあまり起こりません。
潜伏期間は、多くの場合12~72時間ほどです。回復期間は、1~3日で回復する場合から10日以上と長引く場合もあります。

4) 腸管出血性大腸菌(EHEC)
数年前に集団で発生したO157や今年4月に焼肉チェーン店のO111、そして今、ヨーロッパなどで流行っているO104などはすべてこの病原菌です。
この病原大腸菌は、血液が混じった下痢を起こすことから、腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E.coli、略しEHEC)と呼ばれています。
EHECはEPECに似た接着作用によって大腸に定着し、'ベロ毒素'と呼ばれる強い毒素を放出して腸管が水分を吸収できなくしたり血管を破壊したりします。
EHECが世界的に注目されたきっかけは、1982年に米国のオレゴン州とミシガン州で発生したハンバーガー食中毒事件です。
真っ赤な下痢便から今では有名になったO157が検出されました。
日本では、1996年に大阪府堺市で小学生を中心としたO157集団事例が発生し、散発例を含めて1年間に全国から17,877名の患者が報告され、12名が亡くなりました。
今年の4月には、焼肉チェーン店を原因施設とするO111集団食中毒が発生し、5月9日現在富山県と福井県で合わせて4名の方が亡くなっています。
日本におけるEHEC O111感染症の届出は、2007年以降年間100名前後ですが、死亡例の報告は、1986年愛媛県松山市内の乳児院入所者1名のみでした。
O111集団事例は2000年から2009年の間に幼稚園、保育所、学校等で12例の報告があります。
また、2008年8月に米国オクラホマ州で発生した患者数341名のO111集団事例では、O111感染が確認された156名中26名がHUSを発症し、1名が死亡しています。
そして、現在ヨーロッパで流行している食中毒の病原菌は、O104と呼ばれおり、日本国内では、2000年以降発生しておりません。
スペインのキュウリが病原菌の発生源とされ、輸入したヨーロッパ各国、特にドイツでは死者が10人以上もでている深刻な状態となっています。
最近10年間の我が国の腸管出血性大腸菌感染症届出数(患者及び無症状病原体保有者を含む)は年間3000~4000名です。
O血清型ではO157が最も多く、次いでO26、O111とO121が続きます。
O157の症状は、腹痛と水様性の下痢で発症し、翌日に血便を呈することが多いようです。
おう吐は少なく、発熱は37℃台と軽度です。
潜伏期間は、一般的に3~5日ですが感染後10日以降発症した例もあります。平均8日で回復するとされていますが、一部の患者ではHUSといわれる腎臓などの障害を引き起こし重症化・遷延して死亡することもあります。
O111の特徴としては、リジン脱炭酸反応陰性、運動性陰性株が多いことがあります。
O104は、O111やO157といった病原性大腸菌と同じ様な症状を引き起こします。
腸管出血性大腸菌は、特に小児や高齢者はHUSを発症する割合が比較的高く、重症化しやすいようです。
腸管出血性大腸菌はO血清型に関係なく熱に弱く75℃、1分以上の加熱で死滅するので、家庭での予防策としては食肉の十分な加熱(特に小児、高齢者、抵抗力の弱い人)、手洗いが有効です。
また下痢、腹痛、血便等の食中毒の症状が認められる場合は直ぐに医療機関を受診することが大切です。

5) 腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC)
EAggECは、南米やアフリカなどの発展途上国の乳幼児下痢症から多く検出されています。
しかし、先進国においてもEAggEC感染症は発生しており、国内では、東南アジアから帰国した下痢患者からだけでなく、乳幼児下痢症、食中毒などの集団事例からもEAggECが検出されています。
症状は、一般に粘液を含む水様性の下痢便が出て、ときには血液が混ったり緑色になったりします。
また、腹痛を起こすことが多く、吐いたり、38℃台に発熱することもあります。
潜伏期間は、一般的に7時間~2日程度です。
回復期間は3~7日程度ですが、乳幼児や免疫力が低下している場合は長くなる傾向があり、持続性(2週間以上)下痢を起こす場合があります。
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