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地すべりの設計について

私は当初の仕事は設計が主体でした。
特に地すべり関連のアンカー工とか鋼管杭工とか、また杭頭アンカー工とかはバブルの頃にはよく設計をしていました。
当社のソフトに「地すべり」がありますが、(NTOのホームページを参照してください)これは受圧板やアンカーの種類が多くなって経済比較するのがめんどうになってきたので開発したものです。
この設計の中で数々の疑問がありました。

①すべり面方向と測線方向
安定計算に用いるすべり面方向は、地すべりブロックの中で一番深い位置のところでないといけないと思います。
そこをメインの測線方向として考えていますが、それを決める根拠としては地表踏査で地すべりブロックを決めて、その中心をすべり面方向としているのが現状です。
そのあと何箇所か調査ボーリングして別のところがすべり面方向だと後でわかったとしても、当初決めたことがなかなか変えられないものです。(まるで公共事業が後戻りできなかったのと一緒ですね)
この時に設計でどれくらいの誤差が生じるかを計算したことがあります。
この計算結果では測線方向が9°違えば1割、18°違えば2割の誤差が出ます。
これだけで過大設計になったり過小設計になったりしてしまいます。

②すべり面形状
安定計算に用いるすべり面は円弧すべりになったり複合すべりになったりして計算します。
でも、実際に地すべりが発生したところに行って同じ方向で断面をとってみると以外にもでこぼこしているのに気がつきます。
つまり、はっきりした円弧や直線はなく起伏のあるすべり面となっている所がほとんどです。
これも当初の円弧と実際のすべり面を比較したことがあって、実際のすべり面の安全率を1とした場合、当初設計の円弧は0.89となりました。
つまり、この比較でも約1割の誤差が生じることになります。
また、実際のすべり面の中には方向が分かれていたり、すべり面に転石が食い込んでいたりします。
こうなると設計そのものの考え方をまるっきり変えないといけないのかな?と思ってしまいます。


③粘着力と内部摩擦角
地すべりの設計する際に土質試験を行って粘着力と内部摩擦角をきちっと算出することはまずないでしょう。
だいたいは移動層の厚さから粘着力を推定して、これよりC-Φ相関図より内部摩擦角を求めるのが一般的なやり方です。
つまり、移動層の厚さが10mなら粘着力Cは1t/㎡、移動層の厚さが20mなら粘着力Cは2t/㎡となります。
一番大切な設計常数が、このような何の根拠もないやり方でいいのでしょうか?
誤差ということになるともう計算のしようもありません。

④地下水位
地すべりの誘因は間隙水圧によるものが大きいと思います。
この間隙水圧は自由面地下水と被圧地下水を含めたものでありこの水位を調べることは非常に重要だと思います。
ただ、10年程前までは傾斜計や歪計ですべり面位置は把握するが、ストレーナ無しのパイプを入れているために水位すら測れなかったことがありました。
崖錐堆積物のすべりは自由面地下水で岩盤の中のすべりは被圧地下水。
こんなこともあまり考えてなかったし、調査ボーリング孔と水位観測孔を別々に設置するのも最近になってだと思います。

⑤単位堆積重量
安定計算に用いる単位堆積重量はやはり土質試験はやっていません。
単位堆積重量を1.8t/㎥とすることが多いが、ある安定計算では、実際は1.7t/㎥だった場合は5.9%の誤差が生じます。
実際は1.6t/㎥だった場合は12%の誤差が生じます。

このように地すべり対策のための安定計算だけでもいい加減なものになっています。
アンカーの設計での摩擦抵抗の地盤の種類の選定や締め付けと引き止めの考え方。
鋼管杭の設計での変形係数の算定やくさび杭と抑え杭の選定の仕方等、アバウトな要素は数限りなくあります。






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