fc2ブログ

アゼルバイジャンとアルメニアの戦争について

今は、ウクライナとロシアとの戦争が世界中で注目されていますが、なにも戦争はウクライナとロシアだけではありません。
内紛も含めると世界中で起こっていると言っても過言ではありません。
アゼルバイジャンとアルメニアの戦争についてと、それを取り巻くロシアとトルコの立ち位置について調べてみました。

アゼルバイジャン軍は9月19日、アルメニア人勢力が実効支配するナゴルノカラバフで「対テロ作戦」と称する軍事行動を開始したと発表しました。
この地域はアゼルバイジャンとアルメニアの間に横たわる山岳地帯で、国際的にはアゼルバイジャンの領土とされてはいるのですが、約12万人の住民の大半はアルメニア人で、「アルツァフ共和国」として一方的に独立を宣言しているところでした。
2023年9月24日のニュースでは、アゼルバイジャン軍が隣国アルメニアとの係争地、ナゴルノカラバフで19日に開始した軍事行動では、アルメニア側は武装解除などを受け入れ、事実上敗北したそうです。

アルメニアとアゼルバイジャンは長年、この地の帰属をめぐり紛争を繰り返してきた歴史があります。
直近では2020年に大規模な軍事衝突が勃発し、その後にロシアは紛争の再燃を防ぐためナゴルノカラバフに平和維持部隊を派遣しました。
だが兵員2000人強のロシア部隊は停戦監視の任務をまともに遂行できず、ロシア主導の「集団安全保障条約機構」(CSTO)の加盟国であるアルメニアは、集団防衛の義務を果たしていないとしてロシアを激しく批判していました。
アゼルバイジャン軍が攻撃を始めたその日、エレバンのロシア大使館前に集結したデモ隊は、ロシアこそ「アルメニアの最大の敵」だと怒りをぶちまけていました。
「ロシアの政策がこの惨事を招いた」と、デモ参加者の1人は「(ナゴルノカラバフを)守る気がないのなら、さっさと出て行ってほしい」語ったそうです。
ウクライナ大統領府のポドリャク顧問は「(アルメニアを見捨てたことは)ロシアはいつでも誰でも裏切ることの証拠だ」と言っています。

ロシアは長年にわたりアルメニアを影響下に置き、それを足がかりとして、広く南カフカス地域全体を勢力圏に組み込もうとしてきました。
そのためアルメニアに軍事基地を置き、CSTOの同盟国として軍事支援を行ってきたように、ロシアはアルメニアの最大の武器供与国でした。
だが今やロシアは及び腰で、アルメニア側では不信感が募っています。
「ロシアに頼り過ぎたのは誤りだった」と、アルメニアのパシニャン首相は今月、アゼルバイジャン軍の攻撃開始前の段階で、ロシア軍の庇護に頼りすぎたことは間違いだったと悔やんでいました。
「アルメニアの安全保障体制は武器弾薬の購入も含め、99.999%ロシア頼みだった」と、パシニャンはイタリアの有力紙レプブリカに語っています。
「だが今はロシア自体が(ウクライナ戦争で)武器弾薬を必要としている。この状況では、たとえロシアにその気があっても、アルメニアの防衛ニーズに応えられないことは理解できる。この例からわれわれは学ばなければならない。安全保障でただ1国のパートナーを頼りにするのは戦略的なミスだ」と、アルメニア安全保障会議のアルメン・グリゴリアン書記は9月20日、集団防衛の義務を怠ったロシアに不信感を露わにし、「ロシアは長年、アゼルバイジャンと手を組んできた」と言い切っていました。
「その証拠に、ロシアの平和維持部隊にはナゴルノカラバフを守る義務が明らかにあるにもかかわらず、アゼルバイジャン軍が攻撃してきたときに何ら行動を起こそうとしなかった」とも言っています。

紛争地であるナゴルノカラバフとはいったいどのようなところなのでしょうか。
ナゴルノカラバフはアルメニアとアゼルバイジャンが互いに帰属を主張する係争地で、これまでも激しい武力衝突がたびたび起きていました。
アルメニアとアゼルバイジャンはともに旧ソビエトを構成していた隣国で、1991年以降、ナゴルノカラバフを巡って本格的な戦闘に発展したあと、1994年にいったん停戦に合意しました。
その後も緊張した状態が続くなか、2016年の武力衝突に続いて2020年には双方あわせて5600人を超す死者が出る事態に発展し、去年9月に起きた衝突でも双方で多くの死傷者が出て、互いに相手が攻撃したと非難しあっていました。
ナゴルノカラバフをめぐっては、アルメニアの後ろ盾となっているロシアが仲介役をアピールしてきたほか、トルコが宗教的にも言語的にも近いアゼルバイジャンを支持してきましたが、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を続ける中、その影響力が弱まっているという指摘が出ていました。

アゼルバイジャン国防省が隣国アルメニアとの係争地、ナゴルノカラバフに対して対テロ作戦を開始したと発表したことについて、トルコのエルドアン大統領は19日、国連総会での演説で、「ナゴルノカラバフはアゼルバイジャンの領土であり、それ以外の主張は受け入れられない」と述べて、同盟関係にあるアゼルバイジャンの軍事作戦を全面的に支持する考えを表明しました。
トルコ人とアゼルバイジャン人は、人種・民族的に近いテュルク系であり、アゼルバイジャン語はトルコ語とは言語的に近いそうです。
異なる意味の言葉や文法的な違いはもちろんあるのですが、お互いにある程度の理解は可能だそうです。
また、両国はアルメニアに対する敵対感情を共有しており、政治家レベルだけではなく、国民の間でもお互いにシンパシーを持っているそうです。
例えば、トルコのカディルハス大学が毎年トルコ人1,000人を対象に行なっている外交に関する世論調査のなかの「あなたはどの国がトルコにとって友好国だと考えますか」という質問において、毎年最も高い割合となるのがアゼルバイジャンだそうです。
統計では、2015年から2020年にかけての全ての年で、最も高い割合となっているそうです。
加えてトルコとアルメニアの間には全国民レベル(アルメニアはディアスポラも含め)で第一次世界大戦期のいわゆる「アルメニア虐殺」をめぐり、反トルコ感情と反アルメニア感情が強いそうです 。
トルコ側はアルメニアが主張する数は誇張であり、トルコ側も犠牲を伴い、さらには冷戦期にトルコの外交官がアルメニアのテロ組織に殺害される事件が起きたことを持ち出し、反論しています。
いずれにせよ、トルコがナゴルノ・カラバフ紛争に関与する理由のひとつが国民レベルで共有されたアゼルバイジャンとの絆およびアルメニアへの敵対心であることは間違いないようです。

ロシアだけでなく、アルメニアとアゼルバイジャンはともに旧ソビエト連邦を構成していた隣国です。
国の中の陣取り合戦のつもりかも知れませんが、どうしてこうも争うのでしょうか?
ウクライナとロシアだって旧ソビエト連邦で一緒だった隣国です。
ナゴルノ・カラバフのように、あっという間に紛争が終わりかけているのは遠くから見ている私にとってはホッとします。
ウクライナとロシアの戦争もどちらの利益も考えず早く決着をつけてほしいと願っています。

スポンサーサイト



最新記事
カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム
QRコード
QR