fc2ブログ

結晶片岩について

結晶片岩について調べてみました。

結晶片岩(けっしょうへんがん crystalline schist)は、変成岩の一種で、片岩(へんがん)とも言います。
広域変成作用により地下深部で剪断応力を受けて再結晶したため、雲母のような薄い板を多数重ね合わせたような構造や、角閃石のような柱状の鉱物が方向性をもって配列し、それに沿って平板状に割れやすい性質の変成岩を片岩と言いますが、片岩のなかで、肉眼によって鉱物粒が認められる程度に粗粒のものを結晶片岩と呼んでいます。
実際には細粒のものをも含めて、薄板状に割れる性質(劈開(へきかい))をもつ変成岩を、広く結晶片岩とよぶことも少なくありません。
結晶片岩がこのような性質をもつのは、構成鉱物が一定の方向に配列しているためで、変成岩における造岩鉱物の定向配列を片理(へんり、schistosity)と呼ばれる、面状構造を持っており、岩石は片理に沿って板状に割れやすいのが特徴です。
片理は結晶片岩の組織上の特徴をいうことばであり、劈開は岩石の機械的性質についての術語です。
鉱物の粒度が大きくなり縞状の構造が顕著になったものが片麻岩です。

結晶片岩の鉱物組成は、変成作用の温度と原岩の化学組成によって規定されています。
泥質堆積岩が低温で結晶片岩になったものは、白雲母(しろうんも)、緑泥石、曹長(そうちょう)石などから成りますが、高温では黒雲母、ざくろ石、藍晶(らんしょう)石などを生じます。
塩基性火成岩からは、低温では緑泥石、緑簾(りょくれん)石、アクチノ閃(せん)石などからなる緑色片岩ができ、高温では斜長石や普通角閃石を主成分とする角閃岩が生成します。
結晶片岩は広域変成作用の産物で、変成帯とよばれる広大で帯状の地域に分布しています。

結晶片岩は、比較的低温の広域変成帯に出現し、変成作用の温度が上昇して、鉱物の粒度が大きくなると岩石の縞状構造が顕著になり、先に述べたように片麻岩と呼ぶべき岩石になります。
したがって、広域変成帯の中では、三波川変成帯のような低温高圧型変成帯に広く見られ、領家変成帯のような高温低圧型変成帯では、その低変成度部において見られます。
結晶片岩が、日本で最も典型的に見られるのは、三波川変成帯であり、中央構造線の南側に関東山地から四国の中心部一円、そして九州東部まで広く分布しています。
関東山地の秩父盆地では長瀞渓谷の岩畳、四国中央部の大歩危、小歩危など、特異な景観をなすことで知られています。
板状に割れやすいので、中世に流行した板碑造立などを除いて石材として利用されることは少ないのですが、三波川変成帯の周辺にある和歌山城や徳島城の石垣には近くで産出した緑泥石片岩が使われています。
また高槻市の闘鶏山古墳など、古墳の石室に用いられた例も知られています。
大仙院書院の枯山水など、京都の庭園に青石として好まれ使われています。
愛媛でも、加茂川には広く見られており、石材店では庭石として使う緑色片岩が高価で売買されています。

結晶片岩の源岩は様々であり、源岩の成分と変成作用を受けた条件により種々の変成鉱物が形成されています。
岩石の名称としては、「片岩」の前に、特徴的な変成鉱物の名を冠して呼ばれていることもあります。

・紅簾(石)片岩(piemontite schist)
マンガンを多く含む緑簾石族の鉱物である紅簾石を含み、桃色を呈する結晶片岩で、石英片岩(quartz schist)の一種です。

・藍閃(石)片岩(glaucophane schist)
低温高圧下で安定な藍閃石を多く含み青色を呈する結晶片岩で、その色から青色片岩(blueschist)とも呼ばれています。

・緑色片岩(green schist)
緑泥石、緑簾石、緑閃石(アクチノ閃石)などを含み緑色の外観を呈するものですが、玄武岩や玄武岩質火砕岩が、比較的低い温度条件(約200℃)の下で広域変成作用を受けて生成したものです。
再結晶作用は完全でないことも多く、そのため原岩の鉱物、とくに単斜輝石が残留していることが少なくありません。
しかし、片理の発達は一般に顕著で、緑泥石やアクチノ閃石はその方向に平行に配列します。
広域変成帯の最低温度部分を構成する代表的な岩石で、緑色片岩相という変成相の名称のもとになっており、塩基性火成岩を源岩とする結晶片岩をさす言葉としてよく用いられます。
緑色片岩のなかで、変成作用のときの圧力が高かったものは、藍閃(らんせん)石やローソン石を含むこともあります。
緑泥(石)片岩(chlorite schist)や緑簾(石)片岩(epidote schist)などとも呼ばれています。

・泥質片岩(pelitic schist)
泥岩やそれに類する堆積岩を原岩とする結晶片岩のうちで変成度の低いものです。
泥質岩に含まれている有機物が変成してできる石墨(グラファイト)を特徴的に含むため、光沢のある黒色を呈するため、一般に黒色片岩と呼ばれています。
正規の岩石名ではなく、緑色片岩と同じく通称です。
グラファイト以外には主に絹雲母,緑泥石,斜長石,石英などを含みます。
低温高圧型広域変成帯に特徴的な変成岩であり、高温低圧型広域変成帯や接触変成帯、大陸衝突型変成帯などの低変成度部分でも広く見られます。
一般に片理が発達し、著しい微褶曲構造が見られます。
岩石を構成鉱物で分類する際には、石墨片岩と呼ばれることもあります。

・砂質片岩(psammitic schist)
砂岩を原岩とする結晶片岩で、 構成鉱物は主に石英、絹雲母、緑泥石などです。
見た目は灰色、灰緑色、黄灰色などのくすんだ色で、薄く剥がれやすいのが特徴です。
ルーペで拡大してみると、石英を主とした中、に白色~灰色の絹雲母や、濃緑色の緑泥石の粒が多く見られます。

・礫岩片岩(conglomerate schist)
礫岩を源岩とする結晶片岩で、 通常、礫は片理面に沿って引き伸ばされています。

・珪質片岩(silicious schist)
チャートや石英質な砂岩などの堆積岩を源岩とする結晶片岩で、体積の90%近くが石英のみから成ります。
見た目は純粋なものでは白色や灰色ですが、副成分鉱物によって赤色、褐色、緑色などを呈します。
低温高圧型広域変成帯に特徴的な変成岩であり、高温低圧型広域変成帯や接触変成帯、大陸衝突型変成帯などの低変成度部分でも広く見られます。
珪岩片岩と同じ鉱物組成であっても片理構造が明瞭でない変成岩は、クォーツァイト(quartzite, 珪岩)と呼ばれています。

・塩基性片岩(basic schist)
火成岩を化学組成に基づいて分類したとき、二酸化ケイ素SiO2(シリカ、ケイ酸)の含有量が組成の50%前後を占める火成岩をさします。
火成岩の化学組成は一般に金属元素の酸化物の重量%をもって表す習慣になっていますが、この場合、二酸化ケイ素の%がもっとも高くなるのが普通で、それは約40~80%に及びます。
そこで、中性岩(52~66%)、酸性岩(66%以上)に比べて二酸化ケイ素の含有量が少なく50%前後(45~52%)を示す火成岩を化学組成の面から塩基性岩と呼んでいます。
これには玄武岩、ドレライト(粗粒玄武岩)や斑糲(はんれい)岩が含まれます。
火成岩の化学組成には緩い規則性があり、二酸化ケイ素の百分比で塩基性岩を定義すれば、それに伴って他の成分の量もほぼ限定されます。
塩基性岩ではアルミナAl2O3やアルカリ(Na2OとK2O)が乏しく、鉄(FeOとFe2O3)や酸化マグネシウムMgO(マグネシア)が多いのて、塩基性岩を苦鉄質岩あるいは鉄苦土質岩とも言えますが、両者は定義が異なるため厳密には同義ではありません。
苦鉄質岩は有色鉱物の体積%による分類の用語であり、塩基性岩は二酸化ケイ素の重量%による分類の用語です。
苦や苦土は酸化マグネシウムのことです。
また、塩基性岩から導かれた緑色片岩や、角閃(かくせん)岩なども、化学的特徴から塩基性変成岩と呼ばれることがあります。
なお、ここでいう塩基性とは、化学における酸や塩基などという用法とは関係がありません。
スポンサーサイト



最新記事
カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム
QRコード
QR