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飛び地のカリーニングラード

ロシア連邦を構成する89の行政単位の一つであるカリーニングラードは、ヨーロッパの飛び地です。

ここは、ロシア連邦西部にあるカリーニングラード州の州都です。
バルト海に接する港湾都市で、カリーニングラード州はポーランドとリトアニアに挟まれたロシアの飛地領で、人口はおよそ95万人、世界有数の琥珀の産地です。
カリーニングラードはもともと1255年にドイツ人の東方植民によって建設された都市で、1946年まで使われていた旧名はケーニヒスベルク(ドイツ語で「王の山」の意)だそうです。
20世紀前半まではドイツの東北辺境の重要都市でした。
ハンザ同盟に属して、海上貿易で繁栄しました。

第一次世界大戦の結果、ドイツは敗北し、ポーランドが再独立を果たしました。
ケーニヒスベルクの地域は、ドイツ領のまま残されたのですが、この際にドイツ本土から離れた飛び地になりました。
北はリトアニアと国境を接し、それ以外はポーランドに囲まれました。
第二次世界大戦では、ナチス・ドイツがポーランドを占領し、「飛び地」は解消されました。
1945年にソ連がナチス・ドイツを破りこの地域を征服、ソ連領となり、この時に名前がロシア語名になりました。
そして、冷戦が終了した1991年に、ソ連からバルト三国が独立しました。
この土地はもともとリトアニアには含まれていなかったので、同国は飛び地は含まずに独立し、飛び地はそのままロシア領となって残されたのでした。
その後、ポーランドやバルト3国は、NATOに警備の強化を要請して受け入れられました。
そのようなNATO軍増派に対応するため、ロシアは2016年に戦術弾道ミサイル「トーチカ」に代わる核搭載ミサイル「イスカンデル」を配備しました。
射程距離400〜500キロの新兵器は、近隣諸国を全て脅かすことになりました。

リトアニアがソ連から独立した結果、カリーニングラードは今度はソ連・ロシア連邦の飛び地となりましたが、冷戦後の造船需要の悪化で造船業が衰退して失業率が増加し、市民の4割が貧困層といわれるほど経済状況が悪化し、琥珀も密売者の間で高騰したそうです。
ソ連崩壊後の一時期は東欧各国の中心にある地理的特性を活かして「バルト海の香港」としようという夢が語られたのですが、それとは程遠い状態になりつつあります。
ソ連崩壊直後にロシアはここをポーランド領とする案を用意(代わりにドイツはシュチェチンを得るという話であったそうです)したものの頓挫し、結局そのまま放置されたそうです。
そして、カリーニングラードの経済は崩壊し、この町が東ヨーロッパの中心に位置するということもあって、麻薬取引、人身売買、盗難車の取引中継地など、東欧・旧ソ連全域を舞台にしたさまざまな犯罪の拠点に使われるほど治安が悪化、エイズなどの感染症も蔓延し始めました。
さらに、軍事都市時代の有害な廃棄物が放置されており、住めない土地が各地に広がりました。

独立後10年を経て、ロシア政府は、カリーニングラードの復興をてこ入れすることにし、経済対策として経済特区を設け、輸入関税を免除するなど外貨獲得を目指しました。
しかし、当初はロシア国内向けの家電組立工場が多数成立した他は、特区の効果はあまり出ず、さらに2004年に周囲を取り囲むリトアニアとポーランドが共にEUに加盟したため、カリーニングラードとロシア本土との通行にリトアニアがビザを課すようになったなど、周囲との通行に障害が生じ、先の見通しが立たないとまで言われたそうです。
その後、ロシア本土との通行にリトアニアのビザ取得が簡素化され、物流も整備された結果、カリーニングラードの経済は成長しているそうです。
カリーニングラードの今後のさらなる発展は、東方拡大を進めてきたEUとロシアの関係の重要な課題となっている。現在では、ソ連時代に破壊された大聖堂などの歴史的建造物の再建が進められていると言われています。

今年になってロシアはウクライナを攻撃しました。
こんなことはあってはいけない事ですが、これによって当たり前の日常がそうではなくなって来ています。
ロシア本土と飛び地カリーニングラードの間には、列車が走っています。
ベラルーシとリトアニアを通るものですが、旅客も貨物もあります。
欧州連合(EU)がロシアに対して制裁をしています。
第4次制裁では、石炭、金属、建設資材、化学物質、コンピューター、携帯電話などが適用されています。
7月にはセメントとアルコールにも拡大される予定ですが、これらの物資は、列車でカリーニングラードに運ばれています。
リトアニアは、制裁によって前述の物資は、同国を通過させないと6月21日に発表しました。
これはカリーニングラードにとって輸入品の4割から5割に影響を及ぼすと言われています。
今年の、ロシアのウクライナ侵攻時には強襲揚陸艦3隻が寄港し、対岸のスウェーデンが軍事的な警戒態勢を強化しました。
陸だけではなく、カリーニングラードの港は、ロシアのバルト艦隊の要衝です。
戦争が始まってからロシアのバルト艦隊の活動が活発になったことは、フィンランドやスウェーデンがNATO加盟を要請することを決めた大きな要因の一つでもあります。

また、カリーニングラードは、日本人にとって無視しえない地域でもあります。
先に述べたように、ソ連邦崩壊後リトアニアが独立国となったために、カリーニングラードは、ロシア本土から地理的に切り離された陸の孤島となったのですが、モスクワの中央政府は、そのような境遇となった同地方に「経済特区」の地位を認めました。
経済特区とは、関税・査証・為替通貨などにかんし優遇措置を与えることを通じて内外からの投資を惹きつけ、よって当該地域の経済活動を活性化しようとする工夫のことです。
ソ連邦解体後の1991~1992年にかけて、ロシア連邦内には約14ヶ所の「経済特区」が設立されました。
また、ロシア政府は、1996年11月以来、日本から領土返還を要求されている北方領土で日ロ両国が「共同経済開発」を行うことを提案しています。
「共同経済開発」とは、ロシア側の解釈によれば、一種の「経済特区」のことのようです。
ロシアによる「共同経済開発」提案の諾否を決定するにあたり、日本側は、類似の「経済特区」構想が現実にはどのような運命を辿っているのか、研究する必要があります。
そのような観点からカリーニングラードの経済特区研究を行った研究は、皆無だそうです。
結局、ロシアの「経済特区」構想は、現在スローガン倒れに終わったそうです。
そのアイディアはロシア連邦の13ヶ所で失敗し、わずかにカリーニングラードで「自由関税地区」としてのささやかな形をとり生き長らえているにすぎません。

近い将来、リトアニアとポーランドのEU加盟が確実視されています。
これが実現すると、両国に囲まれたカリーニングラードとEUとの間の壁が現在以上に高くなり、同地方は数々の分野で甚大なる被害をこうむるだろうと言われています。
そのような事態に直面し、モスクワは一体どのようなカリーニングラード政策をとるのでしょうか。

いずれにせよ、戦争を平気でする国とは仲間には入れないと思います。
カリーニングラード国民は、もともとロシア国民なのである程度は耐えれるとは思いますが、攻め込まれているウクライナや、領土を勝手にとられた日本にとっては不条理そのものです。
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