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「プラウドマン共鳴」の不思議

またまたトンガのフンガトンガ・フンガハーパイ火山の噴火について調べてみました。

1月15日(土)13時10分ごろ(日本時間)トンガ火山が噴火しました。
この噴火に関連して、気象庁は当初「津波による被害の可能性は低い」として津波注意報などの発表は見送っていました。
ところがその日の20時30分ごろになると、日本各地で津波とは思えない潮位上昇が起こり、23時55分にはついに奄美大島で1メートル20センチ、岩手県久慈港でも津波警報の基準値に近い1メートル10センチの潮位上昇を観測するにいたりました。
これを受けて気象庁は急遽、津波注意報と津波警報を発表したわけですが、今回の海面上昇は本来の津波とは異なる現象で、これを「津波」として扱っていいのかどうか、前代未聞のことにおそらく気象庁の担当者は、逡巡してこの津波警報を発表したものと思われます。
フンガ・トンガ フンガ・ハアパイでの大規模な噴火の後、太平洋の島々や沿岸部では津波が観測されています。
▽チリでは1.7メートル、
▽アメリカ・カリフォルニア州で1.3メートル、
▽アメリカ・アラスカ州で1メートルなどです。
約8000キロ離れた日本でも
▽鹿児島県奄美市で1.2メートル、
▽岩手県久慈市で1.1メートル
を観測しました。
一方で、トンガに近いミクロネシアの島々では、10センチから30センチの津波という情報でした。
現在では、トンガの島では局所的に3~15メートルという情報もあります。

トンガから遠い場所で津波が高くなった原因について、注目されているのが「気圧の変化」です。
フンガ・トンガ フンガ・ハアパイで起きた噴火は規模も大きく爆発的だったため、急激な空気の膨張などで周辺で気圧が変化し、それが「大気の波動」として広がりました。
気象衛星「ひまわり8号」の撮影した画像を元に分析すると、噴火で発生した大気の波動が、同心円状に世界中に広がっていく様子がわかります。 
大気の波動が伝わる速度はおおむね「音」と同じ速さで、波動が伝わった場所では気圧が低下したことが確認されています。
これが日本での津波到達の速さに影響したとみられます。
今回は通常の津波ならば、およそ8000キロ離れた小笠原諸島の父島まで到達するのにおよそ9時間かかると予測されていました。
しかし、実際に潮位の高まりが観測され始めたのは、噴火の7時間後にあたる15日の午後8時ごろで、予測より2時間ほど早くなりました。
これは大気の波動が日本に伝わった時間とほぼ一致していて、この大気の波動による気圧変化の影響で潮位が上昇したとみられています。
こうした気象現象によって起きる津波は「気象津波」と言われます。
さらに、潮位が高くなった理由について、津波や気象による海面変動を研究する鹿児島大学の准教授である柿沼太郎さんは「プラウドマン共鳴」という
▽気圧変化が起きる場所が移動する速度
▽気圧変化によって生じた波が移動する速度
が近くなり、波が増幅されて高くなる現象が起きた可能性があると指摘しています。
こうした潮位の変化は「あびき」や「副振動」とも言われています。
今回、気圧変化をもたらした大気の波動は音の速さに近い一方、津波の速度もマリアナ海溝など水深の深い海域では音の速さに近づくため、柿沼さんは「プラウドマン共鳴」が起きたと考えられています。

考え方はいろいろあります。
例えば、気象庁の考え方として、「トンガで噴火はあったけど、太平洋の観測状況から津波が来ることは考えにくい。しかし目の前で原因不明の潮位上昇があるのだから、津波では無いけれども津波警報で警戒を呼びかける」というものだと理解できます。
では津波で無いとしたら、何が起こったのでしょう。
津波とは何なのか調べてみました。
津波の「津」は船が着くところで港を意味するそうです。
日本の地名で津が付くところは大津にしても唐津にしても、たいてい港を意味しています。
その港にやって来る波が津波の語源だそうです。
港は本来、波が来ないように工夫して造ったところですから、そこに波がやってくるのは昔から特別な現象だったのでしょう。
海面が上がる原因は大きく分けて三つあります。
一つは風によって起こる「高波」で、この高波が遠くまで届いたのが「うねり」です。
二つ目が台風などの気圧低下によって海面が吸い上げられる「高潮」です。
高潮は海面全体が盛り上がる状態で、しかも高波と一緒にやってくることが多いですから、大きな被害をもたらします。
そして三つめが地震などによる「津波」です。
津波が他の波と違うのは、海底陥没(隆起)などによって海全体が変化するので、すさまじいエネルギーをもっていることです。
高波は波長も短く海の表面だけの変化ですが、津波は波長が長く、海全体の変動です。
沖で波が穏やかに見えても陸地に近づくと破壊的な勢いで陸地の内部にまで押し寄せることもあります。
そこで今回やってきた「津波」ですが、まだ気象庁から正式な発表はないものの、東北大学の今村教授らによると、潮位上昇の主たる原因が空振(くうしん)と呼ばれる、大気の変動だったようです。
これだと本来の津波(海底起因)と性質が違っていて、移動速度が速く、また潮位変化も津波とは異なります。
トンガで噴火が起きたのは13時10分、その7時間20分後の20時30分に東京の気圧が2hPa上昇し、各地で気圧の変化が観測されました。そしてちょうどその頃、あちこちで津波にしては早すぎる潮位変化が観測され始めていました。
トンガから日本までの距離8000キロ、それを7時間20分で割ると、時速およそ1100キロの速さでトンガの異変が日本に到達したことになります。
通常の津波だと時速700~800キロ(水深4000メートルの場合)くらいですから、津波ではあり得ないようなスピードで日本にやってきたことになります。
しかもこの潮位異常は、太平洋の島々の観測所では10~30センチくらいの小さな変化しかもたらしていません。
本来の津波なら、日本に接近するほど勢いが弱くなり潮位も低くなるのですが、今回は日本近海で潮位が高くなりました。
こうして、本来の津波の知見とは異なる現象に、気象庁はとまどいながらも、防災を優先し「津波」として警戒を呼び掛けたというのが事実に近いでしょう。
もうひとつ、今回の潮位変動で不思議な事がありました。
NOAA(アメリカ海洋大気庁)によると、カリブ海でも数十センチの潮位異常が観測されました。
トンガ噴火で発生した潮位異常がもし津波なら、カリブ海と太平洋は陸地でへだてられていますから、その陸地を越えて津波が届くはずはありません。
ただこれが空振(空気の振動)だとすると、陸地を越えてその振動はカリブ海に伝わり、そこから潮位が上がっていく事は十分に考えられるそうです。
また、いったん圧力による潮位変動が作られると、その圧力の変化の伝播と波の位相が作用しあい、長い距離を伝わっていくうちに潮位が増幅されていくことは物理的に知られています
これが先に述べた「プラウドマン共鳴」です。
ということから今回の一連の潮位変動は、噴火による大気の衝撃のようなものが原因の一つだったことは間違いないと思われ、少なくともこの100年では、過去に事例の無い出来事だそうです。

今回の津波は、大気の波動による気圧の変化だけでなく、噴火に伴うカルデラの陥没や海底地滑りなど、海底の地形が変わったことで発生した波が、さらに津波を高くした可能性も指摘されています。
しかし、火山周辺を調べないと分からないことが多く、謎の多い今回の津波について、多くの専門家が今後さらに詳しい調査や分析を進めることになると思います。

20220121_01_13
津波の高さの不思議です。
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