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福徳岡ノ場の噴火と軽石の活用について

小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で放出された軽石が、沖縄県の沿岸に漂着するほか、高知沖の海域でも確認され、最近では、伊豆諸島周辺では軽石の漂着が相次いで確認されています。
昨日も、三宅島の海岸にはこれまでにない量の軽石が打ち上げられました。
沖縄の軽石漂着は、2021年10月14日午前中に、沖縄本島北部の国頭村安田の海岸での確認から始まりました。
すでに魚の養殖や船の運航などに大きな支障を来しており、今後は本州への到達も懸念されています。
今回の噴火は、日本の領土・領海では100年に1回あるかどうかの大噴火でありました。

「福徳岡ノ場」は東京から約1300キロ南の太平洋にあります。
噴火したのは8月13日で、噴出したマグマの量は約5億立方メートルと見積もられています。
この量は、江戸の街に5センチの火山灰を降り積もらせた1707年の富士山噴火(約7億立方メートル)に匹敵するそうです。
もし陸上で噴火していたら大災害になっていたはずの量です。
「福徳岡ノ場」は日本に111ある活火山の一つであり、1986年の噴火では幅600メートル、高さ15メートルの新島が生じたのですが、波の浸食によって消滅しています。
「福徳岡ノ場」は、東京から南へ、伊豆大島、三宅島、八丈島と続いていく伊豆小笠原弧の海域火山の一つです。
近年噴火を続けている西之島からさらに335 km南に行ったところにあり、硫黄島と南硫黄島の間に位置している海底火山で、硫黄島の南南東56㎞、南硫黄島の北北東5㎞の位置にあり、その北300キロにはやはり活火山の西之島新島があります。
「福徳岡ノ場」は、伊豆七島を経て富士山まで続く「伊豆・小笠原-マリアナ島弧」と呼ばれる火山列島を成しています。
これらは、その東にある太平洋プレートが西にあるフィリピン海プレートの下へ沈み込むことによってできた火山帯です。
海底地形図をみると、「福徳岡ノ場」と南硫黄島は連続した火山体と考えられます。
南硫黄島の北の海域には、北福徳カルデラと呼ばれる海底カルデラがあります。
カルデラとは、巨大噴火で大量のマグマが噴き出した後に空洞ができて、そこが陥没してできた地形のことです。
南硫黄島は北福徳カルデラのカルデラ壁の一部を形成しているようにも見えます。
「福徳岡ノ場」はこの北福徳カルデラ内の中央火口丘と考えられます。

「福徳岡ノ場」という名称の正確な由来は不明でだそうですが、福徳丸という漁船が発見したことに由来するとの説が有力だそうです。
海底火山は天然の魚礁としての役割を持ち、漁船にとっては漁場としての価値を持ちます。
明治以降、南方での漁場開拓が進められ、発見された海底地形には漁場としての観点から、発見した船の名をとって「(船名)ノ場」という名称が付けられることが多かったそうです。
「福徳岡ノ場」は比較的水深の浅い場所であることから「岡ノ場」と名づけられたと考えられています。

この「福徳岡ノ場」では、有史以来たびたび噴火し、時には海面上に新しい島を形成するまでに成長しています。
気象庁によると、明治以降1986年までに、噴火が少なくとも7回確認され、島が3回生まれたそうですが、いずれも波浪の浸食により海没しています。
1904年及び1914年に出現した新島は「新硫黄島」と呼ばれたそうです。
産業技術総合研究所は、「福徳岡ノ場」の新島が消滅しやすいのは、溶岩でなく軽石が積もってできているためであるとの見解を示しています。
2010年の時点では島はなく最浅水深25mほどのギヨー(ギヨーとは、山頂部が平坦な地形をした海山のことです。平頂海山又は卓状海山とも呼ばれています。日本語ではフランス語読みの「ギヨー」の他に「ギュヨー」や「ギョー」と表記されることもあります)となっていました。
海上保安庁や海上自衛隊による調査では、2007年、2008年、2010年、2013年にも変色水が観測されています。
2021年8月13日には海底噴火が発生し、新島が形成されました。
「福徳岡ノ場」の歴史は次の通りです。
・1904年 - 1905年:海底噴火により高さ145 m、周囲約4.5 kmのほぼ円形の島が形成されました       
・1905年6月には高さ3 m弱まで小さくなり、やがて暗礁になりました。
・1914年:1月に海底噴火により高さ300 m、周囲11.8 kmの島が形成されました。
年末には各所で崩壊が始まりました。
・1916年:島が海没しました。
・1986年:1月に海底噴火によって島が形成されたのですがが、3月末までの短期間で島は海没しました。
・2005年:7月2日の海底噴火により、高さ1,000 m、直径50 - 100 mの巨大な水蒸気柱ができました。
・2007年:12月1日、気象庁が噴火警報の発表を開始します。以後「周辺海域警戒」を継続しました。
・2008年:2月頃より数ヶ月にわたり変色水を確認しました。
・2010年:2月3日の海底噴火により、周囲で噴煙や変色水等が観測されました。
・2013年:9月27日、海上自衛隊の観測で、半径450 mの範囲に海水面の緑色の変色と海面への白い泡の噴出を確認しました。
・2020年:2月4日、海上保安庁の観測で、黄緑色の変色水を確認しました。
・2021年:8月13日、海底噴火による噴煙を観測[9]。高さは約17,000 m。火山雷も観測されました。
火山灰はバシー海峡を越えて南シナ海東北部に到達しました。
この噴火は、日本国内で戦後最大級の規模と見られています。
8月15日に海上保安庁の観測で、直径1 km程の新島が確認されました。
8月17日には新島は東西2つに分かれた状態となりました。
10月20日には東側の新島の消滅したことが確認されました。
10月には、この噴火で噴出したと見られる大量の軽石が、1000km以上離れた大東諸島、沖縄諸島、奄美諸島、小笠原諸島、各地の海岸に漂着しました。

そして、今回の噴火で大量の軽石が噴出して漂流しています。
軽石は爆発的な噴火で噴出したマグマが、急冷されて固まったものです。
地下のマグマには大量のガスが溶け込んでいますが、噴火に伴って、マグマからほとんどのガスが放出されます。
溶岩噴出のようにゆっくりとした噴火をすると、ガスが抜けて緻密な岩石になります。
しかし、今回のような高い噴煙を形成する爆発的な噴火をすると、ガスが膨張しながらマグマが固結するため、空隙の多いスカスカの岩石(軽石)となります。
空隙のため全体の密度は水よりも軽くなり、海面を漂流します。
水がしみこんで空隙を満たすと沈降しますが、空隙の形が複雑なため、長い期間漂流を続けることになります。
2021年8月22日に、気象庁の海洋気象観測船「啓風丸」は北緯25度30.3分、東経138度53.3分付近(福徳岡ノ場から約300km西北西の海上)において浮遊する噴出物を採取しました。
JAMSTECでもその中のいくつかの分析を行いました。
分析結果は2021年10月20日に行われた日本火山学会秋季大会で、「福徳岡ノ場」から2021年8月に噴火した軽石(速報)」として発表しています。
軽石全体の組成は、これまでの噴火と同様のトラカイトという組成でした。
トラカイトは、アルカリ成分が多く(Na2O酸化ナトリウムとK2O酸化カリウムの総量が10 %前後)、シリカ(SiO2重量%)成分が60-70 %の火山岩です。
アルカリ成分が少なくなると通常の安山岩となります。
西之島の噴火は安山岩であるのに対して、「福徳岡ノ場」や硫黄島のマグマはアルカリ成分が多い特徴的な組成をしています。
その原因はよくわかっていませんが、沈み込んでいるプレートの不均一性(プレートの上の海山も沈み込んでいる?)が考えられます。
また、鉱物に含まれている成分を分析した結果、今回のマグマには、地球のさらに深いところから来た玄武岩マグマが含まれていることがわかりました。

マグマがそのまま固まると溶岩となり、水より重いために沈んでしまうのですが、多数の空洞がある軽石は水より軽く、たたいても簡単には壊れないことから海上を何千キロも漂流します。
軽石が海底に沈むには数十日かかるという実験結果があるほか、漂流する間に細かくなって完全に粉になるには、少なくとも数年はかかると予想されます。
沿岸に漂着した軽石は、粘り強く除去するしか目下の対処方法はないとされています。
問題になっている軽石は漁業などに甚大な被害を与え、厄介な漂着物であることは間違いありません。
ところが11月17日、沖縄県環境部から発表された「県内に漂着した軽石の分析結果について」の報告書を読むと、軽石に意外なプラス面もあることが分かってきました。
ある沖縄農業関係者によると、軽石が漂着したときに直観的に思ったのは「タダで土壌改良材が手に入る」ということだったそうです。
粘度の高い沖縄の土壌には軽石のような水はけのよい素材が必要だからとのことでした。
とはいっても、軽石の中に毒性のあるヒ素やカドミウム、水銀などが入っていては使うことはできません。
そこで今回軽石を分析した沖縄県環境部所は、沖縄県内三か所から採取したサンプルは、いずれも“土壌環境基準を満たしている”というものでした。
見方を変えると、今回の軽石は土木建築資材や農業用資材等としての活用が見込まれるということで、厄介者から一転、資源になる可能性も出てきました。
軽石の特徴としては通気性や排水性に長けているため、プランターの底に入れる鉢底石や土壌改良材として以前から使われていました。
今回は、軽石が土壌環境基準を満たしていることが分かったので、出来るだけ早く広範囲に除去されて、それが資材として広く活用されることを願っています。
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