四国の「県の石」

日本地質学会は、5月10日に、全国47都道府県について、その県に特徴的に産出する、あるいは発見された岩石・鉱物・化石をそれぞれの「県の石」として選定しました。
このうち、四国に関する岩石・鉱物・化石を紹介します。

(1)愛媛県の「県の石」
①愛媛県の石 エクロジャイト(産地:東赤石山周辺)
展示してある場所は、愛媛県総合科学博物館です。
当ブログでもエクロジャイトは紹介しましたが、ひすい成分を含む輝石(オンファス輝石)とガーネット(ざくろ石)を構成鉱物とする代表的な高圧型変成岩です。
産出は希少ですが、三波川変成岩類の分布する東赤石山周辺での分布範囲は日本で唯一数km2規模にも及んでいます。
一般に地下40km以深の高圧条件で形成され、地下深部での地質現象を解明するための重要な研究対象となっています。
別子地域の瀬場には2001年に新居浜市で開催された第6回国際エクロジャイト会議の記念碑(エクロジャイト製)が建てられています。
②愛媛県の鉱物 輝安鉱(産地:市ノ川鉱山)
展示してある場所は、愛媛県立総合科学博物館, 西条郷土博物館, 愛媛大学ミュージアムなどです。
愛媛県市ノ川鉱山産輝安鉱(stibnite)は、世界的な結晶鉱物として知られています。
標本は伊予の国,市ノ川産として世界各国の名だたる自然史博物館に展示されています。
輝安鉱結晶は晶洞に水晶を伴い最長60cmを超える巨晶群として産しました。
また多くの結晶面を持つ輝安鉱も産出し、すばらしい結晶図が描かれています。
世界的な市ノ川鉱山産輝安鉱は、日本を代表する鉱物であり、「愛媛県の鉱物」に最もふさわしいと断言できるとの日本地質学会の判断です。
③愛媛県の化石 イノセラムス(産地:宇和島, 松山~四国中央部)
展示してある場所は、愛媛大学ミュージアム, 愛媛県立科学博物館です。
ジュラ紀から白亜紀にかけて栄えたイノセラムス科二枚貝の代表的な一属で、殻の外層に方解石からなるプリズム層が顕著に発達するという顕著な特徴を持っています。
分布は汎世界的で、有効な示準化石として用いられてきました。
愛媛県では宇和島層群,和泉層群などから数種が知られていますが、中でも白亜紀コニアシアン期前半を示唆するInoceramus uwajimensisは、その学名に“宇和島産のイノセラムス”という意味を付与されています。

(2)徳島県の「県の石」
①徳島県の石 青色片岩(せいしょくへんがん)(産地:眉山~高越地域)
展示してある場所は、徳島県立博物館,徳島市立考古資料館,徳島県埋蔵文化財センター,美馬郷土博物館,海陽町立博物館などです。
青色片岩も当ブログで何度か紹介しましたが、藍閃石に代表されるNa角閃石を多く含むために濃青色を呈する代表的な低温・高圧型変成岩です。
白亜紀の海洋沈み込みによって海洋底の玄武岩が地下30~65kmもの深さに達し、プレート間力の元で構成鉱物が変化して生じたものです。
東西800 kmに渡って延長する三波川変成岩類の中でも、まとまった産出が知られるのは徳島県の眉山-高越地域のみだそうです。
弥生時代の徳島県周辺では石庖丁や磨製石斧といった石器の材料として用いられていたそうです。
②徳島県の鉱物 紅簾石(こうれんせき)(産地:徳島県徳島市眉山)
展示してある場所は、徳島県立博物館などです。
紅簾石紅は桃色~黄色の多色性を持ち、おおむね長柱状の形態を示しています。
緑簾石族の鉱物で、3価のマンガンを含んでいます。
一般にペグマタイトやマンガン鉱床などに産しますが、比較的低温の変成作用によって変成チャート中にも生じます。
広域変成作用によって形成した紅簾石の報告は、小藤文次郎によるここ眉山地域の三波川変成岩類(変成年代は後期白亜紀)の例が世界初だったそうです。
③徳島県の化石 三角貝 プテロトリゴニア(Pterotrigonia pocilliformis)(産地:徳島県上勝町・勝浦町)
展示してある場所は、徳島県立博物館などです。
三角貝の化石は、中生代の示準化石として理科の教科書に登場しています。
徳島県勝浦川流域に分布する前期白亜紀の砂岩層(物部川層群傍示層)からは、本種が密集して産出し「菊目石」の愛称で親しまれています。
密集層の石材標本は、徳島県内各地の校庭にも展示されているそうで、徳島県を代表する化石といえます。
2004年には、上勝町が本種の化石をチョコレートで型取りし、地域紹介に活用、発信したことでも知られています。

(3)香川県の「県の石」
①香川県の石 讃岐石(古銅輝石安山岩)(産地:五色台)
展示してある場所は、香川大学博物館,香川県立五色台自然センター,,さぬき市雨滝自然科学館などです。
讃岐石(古銅輝石安山岩)は、いわゆるサヌカイトで、当ブログでも紹介しました。
中新世の瀬戸内火山岩類を代表する岩石で、黒色緻密でガラス質石基が多い安山岩の一種です。
独特な高温の打撃音から、讃岐(香川県の旧国名)では古くから「かんかん石」と親しまれてきました。
ドイツの地質学者であるヴァインシェンク博士が、東京帝国大学で初めて地質学を教授したナウマン博士がドイツに持ち帰った試料を研究して、代表的な産地である讃岐にちなんでSanukit(英語名はsanukite)と1891 年に命名したそうです。
②香川県の鉱物 珪線石(産地:猫山)
香川県まんのう町の猫山には、かつて日本で珍しい珪線石鉱山がありました。
珪線石はAl2SiO5で示されるアルミニウム珪酸塩鉱物のうち高温で安定なものだそうで、地学の教科書にもとりあげられています。
吉木文平「讃岐國猫山に於ける珪線石礦床に就いて」岩石礦物礦床學 11(3), 103-118, 1934.に詳細な記述があります。
③香川県の化石 コダイアマモ(産地:阿讃山脈)
展示してある場所は、香川県立五色台自然センター,さぬき市雨滝自然科学館などです。
コダイアマモは、後期白亜紀(およそ7千万年前)の海底に堆積した和泉層群に産出する化石で、かつては海草であるアマモ類の祖先の化石と考えられてきました。
その後の植物学的検討の結果、アマモ類とは系統関係に無いことが指摘されています。
最近では、植物化石という考えそのものに疑義が呈されており、海底で泥を食べていた生物がつくった生痕化石であると言う意見が主流になっています。

(4)高知県の「県の石」
①高知県の石 花崗岩類(閃長岩)(産地:足摺岬)
展示してある場所は、高知大学理学部1号館,サイエンスギャラリーなどです。
花崗岩は、石材としても使われる身近な岩石です。
マグマが地下でゆっくり冷えることで作られ、足摺岬の花崗岩類は約1300万年前(中期中新世)に形成された、日本列島がアジア大陸から分かれた頃の出来事で、その時代の四国では活発なマグマの活動がありました。
足摺岬の花崗岩類は、ナトリウムとカリウムに富む特殊な化学成分をもち、Aタイプ花崗岩とよばれるグループに分類されています。
また、ラパキビ花崗岩も産する、このような花崗岩類が見られるのは日本で足摺岬だけだそうです。
②高知県の鉱物 ストロナルシ石(せき)(産地:高知県高知市蓮台)
ストロナルシ石(せき)(Stronalsite,SrNa2Al4Si4O16)は、高知県から発見された最初の新鉱物である、ストロナルシ石は長石族の鉱物であり、黒瀬川構造帯内にある高知市蓮(れん)台(だい)の蛇紋岩採石場で、変成苦鉄質岩捕獲岩中に、スローソン石およびペクトライトとともに、白色細脈として見出されました。
蛇紋岩は高知県の重要な地下資源であり、その代表的な採石場で発見されたことも意義深いそうです。
③高知県の化石 横倉山のシルル紀動物化石群(産地:高知県高岡郡越知町横倉山)
展示してある場所は、高知県高岡郡越知町立横倉山自然の森博物館,高知県高岡郡佐川町立佐川地質館です。
越知町横倉山に広く分布する4億年前の古生代シルル紀の地層は、かつて赤道付近に存在したゴンドワナ大陸の一部であったシルル紀の“土佐桜”石灰岩を主とする地層からは、クサリサンゴ,ハチノスサンゴなどの造礁サンゴを始め、三葉虫・直角石等々当時のサンゴ礁に生息していた多種多様の生物群の化石を産しています。
これらは、日本最古の大型化石で、クサリサンゴの中にオーストラリアとの共通種が認められることは注目に値します。
この他、日本唯一の「筆石」化石も見つかっています。
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