泥炭の用途と保存環境

先日、当ブログで、インドネシアの泥炭地での火災についてお伝えしました。
今回は、この泥炭についていろいろと調べてみました。

まず泥炭(でいたん)ですが、ピート(Peat)、あるいは草炭(そうたん)とも呼ばれ、字の通りで泥状の炭のことです。
見かけは湿地帯の表層の湿った泥ですが、可燃性があり、採取して燃料として使われています。
主に低気温地域の沼地で、植物遺骸が十分分解されずに堆積して形成されています。
泥炭が蓄積した湿地を泥炭地と呼び、日本では主に北海道地方に分布しています。
熱帯地域でも木質遺骸による泥炭(トロピカルピートと呼ばれる)が形成されることもあります。
泥炭の形成としては、このような植物遺骸などの有機物の堆積する速度が、堆積した場所にいる微生物が有機物を分解する速度を上回った時に形成されるとされ、泥炭は石炭の成長過程の最初の段階にあると考えられています。
泥炭は、炭素の含有率が低く(不純物が多く)、含水量も多い質の悪い燃料であるため、日本では工業用燃料としての需要は少ないのですが、第二次世界大戦末期には貴重な燃料として使われたそうです。
スコットランドではスコッチ・ウイスキーの製造で大麦を発芽させて麦芽にした後、麦芽の成長をとめるために乾燥させる際の燃料として香り付けを兼ねて使用されており、この時つく香気をピート香と言います。
ただし、泥炭だけで乾燥を行うことは少なく、他の燃料も併用することが多いそうです。
このほか、繊維質を保ち、保水性や通気性に富むので、園芸では腐植土として培養土に混入し土質を改善させるためによく使用されています。
泥炭中の微生物が有機酸を生成するために酸性であるので、アルカリ土壌を好む植物に使用する場合は石灰などで中和する必要がありますが、逆にアルカリ土壌を中和させるためにそのまま使われることもあります。
また泥炭をプレスして播種、育苗用の植木鉢としたものもあり、これは時間が経つと土と同化するそうなので、植物を抜かずにそのまま植え替えることができるそうです。
泥炭はわずかな荷重で圧縮するため、泥炭地は地盤として非常に軟弱です。
建築のみならず道路などの敷設においても問題のある土質で、十分な基礎工事が必要となります。
近年は火力発電のエネルギー源として主に北欧などで大規模に利用されています。
たとえばフィンランド一国の泥炭埋蔵量は北海油田の埋蔵量の2倍に匹敵し、泥炭発電は同国のエネルギー消費の7%を賄っているそうです。
日本でも、ニッカウヰスキーが自社使用のために石狩平野で採掘を行っているほか、工業用脱臭剤として小規模な採掘が行なわれているそうです。

泥炭の発達している土地を泥炭地(でいたんち peat bog; moor; moorland)と言います。
泥炭地は土そのものが可燃物であるため、いったん発火すると長期にわたり燃え続け、消火が困難であることは、先日のブログでも紹介しました。
インドネシアでは、泥炭地の乾燥により発生する野火が大規模な森林火災につながり二酸化炭素を放出しています。
これら火災は何週間、ときには何ヵ月も続き、広大な面積の厚い泥炭層を燃やします。
原因は、乾燥により自然発生することよりも、多くの火災の原因は、大規模プランテーション開発のための森林への火入れにあると環境団体は指摘しています。
何故こんなことをするかと言うと、禁止されているこの森林焼き払いは、伐採に比べてはるかに手っ取り早く、安上がりな農場造成・拡張方法だからです。
インドネシアの泥炭地総面積は約2 千250 万ha もあります。
近年でのインドネシアの泥炭地から排出される二酸化炭素は年間20 億トンに上り、このうち6 億トンは乾燥した泥炭の分解、14 億トンは火災から生じることが分かったそうです。
公式統計に基づく二酸化炭素排出量の国別ランクではインドネシアは世界で21番目だそうですが、この泥炭地からの排出量を含めると、米国、中国に次いで世界第3位となるそうです。
この排出量は英国やドイツの排出量の数倍にもなり、京都議定書の下で温室効果ガス排出を削減しようとする先進国のあらゆる努力(日本を含め、努力しているかどうかは疑問ですが)を帳消しにするそうです。
インドネシア政府も、開発最優先の姿勢は変わっておらず、安上がりな拡張のために、禁止されている火入れを取り締まる有効な手立ては今のところないそうです。

泥炭地での不思議な保存環境についてもお知らせします。
ヨーロッパの泥炭地では「ボグ・ボディ」と呼ばれる屍蝋(しろう)化した遺体がしばしば発見されることがあります。
その数は数百体とも言われ、中には1万年前のものもあるそうです。
主に北西ヨーロッパのイギリス、アイルランド、オランダ、ドイツ北部やデンマークに多く、最近では2011年に見つかったアイルランドの「カシェルマン」さんの遺体があります。
「ボグ・ボディ」の驚異的なところは、その抜群の保存状態だそうです。
1万年前にもかかわらず、完全に皮膚に覆われ、内蔵は全く損傷がないそうです。
これらは全て泥炭のおかげと言えるそうです。
泥炭は死んだ苔の堆積で、その保水性の高さが「ボグ・ボディ」にとって理想的な保存環境を育んでいたと考えられています。
彼らがどうして泥炭地に横たわっていたかは不明なのですが、首を縄で絞められた痕が残っていることから、犯罪者として処刑された、もしくは生贄だったのではとの説があります。
彼らの中で最も保存状態が良く、また世界的にも有名なのが「トーロンマン」の遺体だそうです。
1950年に、「トーロンマン」の遺体はデンマーク・ユトランド半島の泥炭地の中から発見されました。
ある兄弟が燃料に使うピートを切り出していたところ、泥炭層に遺体が埋まっているのを見つけたそうです。
遺体の首に縄が掛かかっていたことから殺人事件の被害者と思い、シルケボーの警察に連絡したそうです。
ところがこれは20世紀の殺人ではなく、放射性炭素年代測定の結果、この遺体は約2,400年前のものと判明しました。
また、検死報告で「トーロンマン」の死因は吊るし首とされ、2002年のX線撮影でも1950年当時の調査を裏付ける吊るし首特有の舌の膨張が確認されているそうです。
何故、泥炭地で発見された遺体は保存状態がいいのでしょうか。
これは、泥炭地中の高酸性水、低温、酸欠が原因と言われています。
これらの要素が原因で、見つかったミイラに傷みは無く、歯や爪から推定40歳、身長は161㎝と当時としては小柄だったことも明らかになりました。
胃の内容物からは、最後の食事がオートミールのようなものだったと判明したそうです。
なんとも、約2,400年前の遺体が、現在まで完全に近い形で残っているのはあまりいいものではありません。
完全に近い遺体は、ソビエト時代のレーニンを思い出します。
レーニンの遺体は、ソ連崩壊後、モスクワの赤の広場にある霊廟で、20年以上一般公開されていましたが、現在は、赤の広場は閉鎖されていて見ることはできませんが、レーニンの肌の状態は、毎週きちんと調べられているそうです。
精密機械を使って乾燥の程度を調べ、うるおい、色、輪郭の形状が測定されています。
遺体は2年毎にグリセリンと酢酸カリウムの風呂に30日間浸されるそうです。
こうすると遺体が何世紀もこのままの状態で保たれるそうです。
レーニンは、1924年1月21日、脳梗塞により亡くなったとされています。
もう100年近くこのようなことを続けることをレーニンが望んでいたかどうかは疑問です。
私ならご免こうむりたいものです。
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