世界で一番最古の岩石「偽角閃岩」

「偽角閃岩」を知っていますか?
世界で一番最古の岩石だそうです。

地球上の大陸には、太古代(たいこだい、26億年前以前)にできた岩石が所々に分布しています。
最近まで最も古いとされていたのは、グリーンランド南西部に分布するイスア緑色岩帯(堆積岩)で、約38億年前の岩石でした。
しかし、岩石の年代測定技術の進歩に伴って、カナダのノール・デュ・ケベック州北部ウンガバ(Ungava)にある、ヌヴアギツク(Nuvvuagittuq)グリーンストーン帯(緑色岩帯)で発見された「偽角閃岩」 (faux-amphibolite) が、約42億8000万年前と確認されました。
この岩石は、最古の変成岩でもあります。
今まででも、古い時代の岩石は、カナダの北西準州のアカスタというところから見つかっていたのでしたが、今回は、同じカナダでも、まったく違った地質帯から見つかりました。
ヌヴアギツク帯は、火山岩や変成した堆積岩を主としているそうです。
ここでは、一方向に傾むいた(等傾斜)向斜構造が、後に南に開きながら傾斜している向斜構造になるような造構運動を受けています。
周囲は36.6億年前のトーナル岩に囲まれ、非常に複雑な地質となっています。
ヌヴアギツク帯を構成する岩石は各種あり、それぞれが違う時代に形成されていると考えられています。
年代が決まっているのは、いくつかあり、量は少ないですが珪質長の鉱物からできる岩石のバンドがいくつもあり、そこからジルコンの年代が求められていて、38.17億年前と37.5億年前の年代が求められています。
このジルコンは、非常に有力な年代測定の手段となっています。
ヌヴアギツク帯の構成岩石の主体は、世界最古の「偽角閃岩」の他にも、斑レイ岩、超苦鉄質石、玄武岩類の順に多く、量は少ないですが縞状鉄鉱層や珪質岩もあります。
主構成岩石となっている角閃岩、斑レイ岩、超苦鉄質、玄武岩からはジルコンが見つかっておらず、年代はまだ決まっていません。
この主体となる「偽角閃岩」(faux-amphibolite)は、周囲の一般的な角閃岩とは違った成分の角閃石(カミングトン閃石と呼ばれています)からできています。
さらに、角閃石の多いところと黒雲母が多いところが層を成すような複雑な構造をもっている岩石です。
斑レイ岩には、2種類あり、あまり変成作用を受けていない斑レイ岩(以下斑レイ岩と呼びます)と、変成作用を強く受けて片麻状の構造をもった斑レイ岩(以下変斑レイ岩と呼びます)です。
超苦鉄質岩は変成を受けていない斑レイ岩のグループになります。
「偽角閃岩」は苦鉄岩ですし、斑レイ岩も苦鉄質岩です。
ですから「偽角閃岩」は、斑レイ岩と同じマグマから由来して、火山砕屑岩として噴出し、激しく変質を受けたため、組成の違うものができたのではないかと、従来は考えられてきました。
しかし、変質で変化のしにくい化学成分で比べると、同じマグマとは考えられないことがわかってきました。
ですから、違う起源の可能性ががあります。
さらに、角閃岩は、斑レイ岩と超苦鉄質岩に貫入されているのが、この地域の西端で確認されています。
これは非常の重要な産状です。
角閃岩の方が斑レイ岩より以前に形成されたことを意味します。
ヌヴアギツクの岩石は、複雑な地質で、なおかつ変成作用を受けています。
そして、貫入関係から「偽角閃岩」が一番古い岩石であったことがわかってきたのですが、ジルコンもみつからず、岩石全体のU-Pb法による年代測定もうまくいきませんでした。
そこで、いよいよSm-Nd法による年代測定が登場します。
Sm-Nd法(サマリウム-ネオジム法)についてはよくわからないので省略しますが、「偽角閃岩」のSm-Nd法で測定をしたところ、42.86(+0.96、-3.7)億年前という年代値になったそうです。
変成作用を受けた変斑レイ岩は40.23億年前という年代、ひとつのマグマからできたと考えられる斑レイ岩から超苦鉄質岩は38.40億年前の年代だそうです。
トーナル岩と珪長質のバンドは、36億から38億年前の年代だそうで、この地域の岩石には、6億年以上にわたる歴史が記録されていたそうです。
「偽角閃岩」の化学的性質は、マントルの橄欖岩から形成され、通常の海洋地殻の岩石(玄武岩や斑レイ岩)と比べて、いくつかの違いがあることを示しています。
「偽角閃岩」には、低いカルシウム(Ca)、高いカリウム(K)、高いルビジュウム(Rb)、高い軽い希土類元素(ランタンLa、セリウムCe、Nd、Smなど原子量の小さい希土類元素でLREEと略されています)などの化学的特徴があります。
これらの特徴のうち、KやRbは、変質や変成作用で移動しやすい元素なので、もともとマグマが持っていた値を示してはいないと考えられます。
高いLREEの濃度という特徴は、マントルからマグマができるときの溶ける(部分溶融)程度が低いことを示しています。
しかし、部分溶融程度が低いということは、チタン(Ti)やニオブ(Nb)の少ない含有量とは矛盾しています。
高いLREE濃度、少ないTiやNb濃度というのは、列島にみられる火山岩(カルクアルカリ岩)の特徴と似ています。
このあたりは、まだ完全に解明されていません。
したがって、「偽角閃岩」の年代値の解釈も、断定はしていないそうです。
論文では次のような考え方だそうです。
①まず、「偽角閃岩」が、冥王代(40億年前以前)に、最古の地殻として形成されます。
②その地殻は、高いLREE濃度、少ないTiやNb濃度を持つ物質から由来しています。
③その後38億から40億年前に、斑レイ岩から超苦鉄質岩になるマグマが、現在の海洋地殻をつくったのと同じようなマントルから由来し、「偽角閃岩」に貫入します。
④36億から38億年前に、「偽角閃岩」の部分溶融に由来すると考えられるトーナル岩と珪長質のバンドが形成されます。

「偽角閃岩」が形成された冥王代ですが、この時代は、地球が誕生してから後、38~40億年前までの5~7億年間の地質時代区分です。
この時代にオーシャンマグマは冷えてきて地殻と海ができ有機化合物から地球上に最初の生命が生まれたといわれています。
でも、この時代の地層としての広がりは全く残っていません。
これはその後の地球の活動の中でマントルに戻ったとされていますが、大陸を構成している物質を見ると密度の小さいものが残ってできてきたものですので、何となく大陸の深部には点在してそうな気がします。
この古い岩石の発見は近年相次いでいて、本当に少ないですが、鉱物としてはオーストラリア西部のジャックヒルズで発見された岩屑性ジルコン (detrital zircon) のうちで最古のもので約44億400万±800万年前(冥王代初期)です。
岩石は、「偽角閃岩」 の変成岩で約42億8000万年前(冥王代初期)です。
堆積岩は、イスア緑色岩帯で約38億年前(始生代初期イオアーキアン)です。
つまり、今のところ、鉱物も岩石も冥王代が最古ということになります。
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