治山事業について

都道府県で行っている事業のうち治山事業があります。

治山事業とは、森林法に基づき、森林の持つ水源のかん養及び山地災害の防止、生活環境の保全等の様々な働きを高度に発揮させるため、保安林内において森林を維持・造成することを目的とした事業で、保安施設事業とも言います。
地すべり等防止法に基づく保安林(森林)内での地すべり被害の除去・軽減を目的とした地すべり防止事業もこの治山事業に含まります。
つまり、山地の荒廃を防ぐことを目的としたもので、山地の荒廃は、
・渓流荒廃
・山腹荒廃
の2つに分けられます。
①渓流荒廃
治山事業でいう「渓流」とは、山林の中を、水が集まって流れる部分を指します。
したがって、山林を離れて、耕地や集落に流れた部分は「渓流」ではありません。
渓流の荒廃とは、
・浸食の進行・・・・渓流を流れる水の勢いによって、渓流の底や岸が削りとられたり(「浸食」)、渓流がクネクネと蛇行し、広い幅の部分を浸食している(乱流)状態を言います。
・不安定土砂の堆積・・・・浸食によって発生した土砂や、山腹の崩れによって落ちた土砂が、不安定な状態で、渓流の中に多量に貯まっている状態です。
このような渓流荒廃を放っておくと、不安定土砂が雨水と一緒に土砂流や土石流として流れ出し、集落や農地、道路などを襲い、人命や財産に被害を与えるおそれがあります。
また、渓流荒廃が、山腹荒廃を引き起こす要因となることもあります。
②山腹荒廃
山腹荒廃とは、山の斜面が崩れて(「崩壊」)落ちた(「崩落」)状態で、さらに崩壊が広がりそうな状態や、崩落した土砂が流れ出しそうな状態のことを言います。
山腹荒廃の種類としては、山腹の表面の土砂だけが崩落する「表層崩壊」、山腹の地面深くから崩壊する「深層崩壊」などの「山腹崩壊」、山腹上に点在する岩石が崩落する「落石」、そして、雪が深い地域では「なだれ」も含まれます。
山腹荒廃を放っておくと、崩落した土砂が人家や道路などを襲い被害を与えることが、最も深刻な問題です。
また、一度崩落した山腹の斜面には、放置した状態では樹木などの植物が再生しにくいので、森林の公益的機能を低下させてしまいます。
愛媛県では、林業課がこの治山事業を行っていますが、ここで設置されるダムには、その目的や機能によって
(1)えん堤工
えん堤工は、
①渓流の勾配を緩くして、川底や川岸の浸食を防ぐ
②川岸斜面を安定させ、崩壊の発生を防ぐ
③川底に貯まった土砂が流れ出ないようにする
④上流で土石流が発生しても、川底や川岸が削られて勢いがつくのを抑えるとともに、下流への流出を防ぐ
上記を目的に大きな流域に設けられ、規模も治山事業では一番大きいものとなります。
(2)谷止工
えん堤工の目的のうち、
①渓流の勾配を緩くして、川底や川岸の浸食を防ぐ
②川岸斜面を安定させ、崩壊の発生を防ぐ
③上流で土石流が発生しても、川底や川岸が削られて勢いがつくのを抑えるとともに、下流への流出を防ぐ
上記を目的に、比較的小さな渓流に階段状に設けられている所が多く見られます。
(3)床固工
えん堤工の目的のうち、
①川岸斜面を安定させ、崩壊の発生を防ぐ
②川底に貯まった土砂が流れ出ないようにする
③上流で土石流が発生しても、川底や川岸が削られて勢いがつくのを抑えるとともに、下流への流出を防ぐ
上記を目的とするもので、特に土砂が堆積している下流部で階段状に連続して設けることが多いのが特徴です。
また、水の流れを規制することを目的に、これら床固工と護岸工を組み合わせたものを流路工と呼んでいます。
(4)山腹基礎工と山腹緑化工
また、山腹荒廃に関する治山施設として、「山腹基礎工」と「山腹緑化工」があります。
「山腹基礎工」とは、崩れを食い止める基本的な構造物で、土の重さを受け止める働きをするのに対して、「山腹緑化工」は、山腹の表面の動きを止めるとともに、早い時期に植物が生育するようにします。
1)土留工
山腹基礎工の主なものが、「土留工」です。
崩れた山腹の最下部や、中腹のところどころに、等高線に沿った形に壁を設置します。
土留工の役割は、山腹をしっかりと固定することで、上部から落ち崩れようとする土砂を抑えます。
設置場所や土質によって、コンクリートや、コンクリートブロック積、金属の枠に石などを詰めたもの(鋼製土留工)、丸太を組んだものなど、様々な材料を使用します。
大きな土の圧力がのしかかる部分ではコンクリート製とし、あまり土の圧力がかからない部分ではコンクリートブロック積製を使うのが一般的です。
設置する地盤が柔らかかったり、土に浸みた水の圧力がかかるようなところでは、歪みに強く水を通しやすい「鋼製土留工」を使います。
2)木柵工
木柵工は、その名の通り、丸太で造られた柵です。
分類としては「山腹緑化工」に含まれますが、基礎工と緑化工の中間的な働きをします。
高さは、地上に出ている部分で50センチメートル前後のものが一般的につくられています。
木柵は、上部からの大きな土の圧力を受けるようなことはできませんが、山腹のごく表面の土砂の動きを止めることができます。
表面の土(「表土」)の動きを止めることは、森林を再生させるために、非常に重要なことです。
表土が動いている限り、植物の種子などが落ちて発芽しても、その芽はすぐに流されてしまい、いつまでたっても植物が再生しません。
しかし、表土の動きが止められると、自然の植物がきわめて再生しやすくなります。
3)筋 工
筋工は、山腹緑化工の代表的な方法です。
筋工は、斜面の等高線に沿って、細かい帯を何本も入れていくような緑化工です。
筋状にすることで、筋と筋のあいだに樹木の苗木を植栽できることが大きな特徴です。
筋工による緑化では、植物の種子が含まれた資材や苗木を帯状に並べるのといっしょに、その支えとなるものを設置することが一般的です。
支えとするものとして、現在もっとも使用されているのは、丸太です。
丸太筋工と呼ばれ、木柵を低くしたようなもの(高さは10cmから20cm)を設置し、それに沿って植物の種子が付着している布状のもの(植生帯)を張り付けたり、苗木を植えたりします。
丸太筋工のほかには、土のう(土を詰めた袋)を並べた「土のう筋工」、石を積んだ「石筋工」、木々の細い枝を束ねて並べた「そだ筋工」などがあります。
4)伏 工
伏工は、山腹緑化工の代表的な方法です。
伏工は、斜面全体を植物の種子などが含まれたシートなどで覆(おお)い、金属などのピンで固定する方法です。
斜面が急で、筋工などの方法が使えないような場合に使います。
シートとはいっても、その材料は様々で、「稲のわら」をつなぎ合わせてシート状にした「わらむしろ張り伏工」や、天然繊維や化学合成繊維のネットを使用した、「ネット伏工」などがあります。
現在では、重量が軽く強度のある化学合成繊維のネットが、もっとも多く使われています。
「わらむしろ伏工」は、小規模な部分でよく使用されています。
伏工に使用される植物の種子は様々ですが、多くのものには牧草類が混入され、
なるべく早い時期に草の根によって斜面が安定するように配慮されています。
近年では、様々な製品が開発され、ある程度の時間がたつと、微生物などによって分解され土になる、「生分解性」の化学合成ネットや杭なども使用されます。
5)厚層基材吹付け工(客土吹付け工)
土砂の層が薄い山腹崩壊地では、岩盤が露出してしまうことがあります。
岩盤では、表土がないため、筋工や伏工などの緑化工法では植物が育ちません。
そういう場合に、厚層基材吹付け工という方法で緑化します。
厚層基材吹付け工とは、植物が生育しやすい基盤材や土、肥料、水、そして植物の種子をタンクの中で混ぜて、泥のようになったそれらを圧力ポンプでホースに送り、岩盤に吹付ける方法です。
岩盤の表面には、種子入りの泥が付着しやすいように、あらかじめ金網などを張っておきます。
6)法枠工
急傾斜の斜面で、亀裂が多く入り、崩れやすくなったような岩盤では、厚層基材吹付け工ではとても斜面を抑えきることができません。
そのような場合、格子状のコンクリートなどで斜面を抑えつけ、その枠の中に厚層基材吹付け工を行います。
この工法を、「コンクリート法枠工」と呼びます。
コンクリートの枠は、斜面の状況によっては柱のように太くしたり、半円形に吹付けたりと、いくつかのバリエーションがあります。
小規模な斜面では、丸太を格子状に組んだ「丸太法枠工」を施工することもあります。
7)その他の渓流荒廃に関する施設
山腹荒廃地での施設は、他にも、「モルタル吹付け工」「水路工」「暗渠工」など様々ありますが、それらの工法をとりまぜて、崩壊した山腹を安定させ、緑に戻していきます。
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