横浜市の欠陥マンションと「ダイナウイング工法」

横浜市都筑区のマンションでの基礎杭が支持地盤にまで施工されていないことが問題になっています。

このマンションは、三井住友建設が施工し2007年12月に完成しています。
2014年に建物のうち11階建ての西棟で、住民からの通報により、会社側が調査した結果、幅員約56mの建物の両端で約2.4cm差があることが分かりました。
実際に工事を行ったのは、旭化成の100%子会社の旭化成建材で、建物を支える52本の地中の杭のうち少なくとも8本が強固な地盤に届いていなかったり、地盤に打ち込まれた深さが不足したりしていたそうです。
その8本のデータに、全部地盤に届いたという嘘のデータを改ざんしていたことまで発覚しています。
また、この8本を含む3棟の合計38本について、支持層に届いていた杭の地盤データを転用するなどの改ざんが行われていたそうです。
それだけでなく、杭の先端部分と地盤を固定するセメントの量にもデータの転用、改ざんがあったと発表しました。
旭化成建材から報告を受けた横浜市によると、セメントは掘削した穴に注入し、量が記録されるが、不自然に似通ったデータが見つかったため同社が調査したところ、全4棟のうち3棟の計45本の杭に改ざんが見つかったそうです。

このマンションでの杭打ち工法は、当初は、旭化成建材株式会社が独自で開発したとされている「ダイナウイング(DYNAWING)工法」が採用されていたと言っていました。
旭化成建材の話では、もともと既製コンクリートパイル事業として「RODEX工法」「CMJ工法」「DYNABIG」など、 また中小型杭事業として「EAZET」「ATTコラム」など、先進性を追求した高付加価値の製品・ 施工技術を提供していたそうですが、これまで培った杭技術を結集し、 杭施工時の発生残土量を従来の埋め込み杭工法に比べて大幅に低減(低排土)でき、 しかも杭の設計支持力が大きくとれる(高支持力)画期的な杭工法として「ダイナウイング工法」を開発したそうです。
主な特徴は次のようです。
①発生残土を大幅に低減
「ダイナウイング工法」は、掘削方法と杭形状とに独自技術を採用することで、 従来の埋め込み杭工法と比べ、杭施工時に発生する残土量を大幅に減らすことが可能となるそうです。
自社従来工法であるプレボーリング拡大根固め工法(RODEX工法)に比べて約7割も残土量を低減でき、 「環境に配慮した杭工法」がうたい文句です。
②高い設計支持力を実現
「ダイナウイング工法」は、杭の先端に杭本体径の約1.7倍の 径の鋼製羽根付き杭を使用することにより、同杭径の自社従来工法(RODEX工法)に比べ 約3倍の設計支持力の設定が可能になったと言われていました。
これにより、杭の施工本数を減らすことができ、 工期の短縮による経済的な設計が可能となったそうです。
③安定した高品質の施工
「ダイナウイング工法」は、施工管理装置を用いて、 安定した根固め液の管理を行い、先端羽根部と根固め部とが一体になることにより、 高品質の根固め球根を築造するとしています。

「ダイナウイング工法」は、先に述べたように旭化成建材が開発し、2004年から全国のマンションや商業施設で採用され始め、翌年の2005年12月から2006年2月にかけて工事が行われた今回の物件にも使われたとされていました。
鋼製の羽根が先端に付いたくいを回転させながら地中に埋め込んだ上、セメントミルクを注入して固める工法で、旭化成建材は「1本1本のくいの支持力を従来の約3倍に高める」と当時発表しています。
「ダイナウイング工法」は、計算式の中で、先端支持力係数α=260で、本体径換算ではα≒750になり、これにより従来工法の約3倍の支持力としています。
でも、今回のケースでは、少なくとも8本のくいの打ち込み不足が明らかになっています。
建築エコノミストの森山高至さんは「おみこしで言えば、担ぎ手を全員力持ちにして人数を減らした状態なので、(くいの施工不良で)担ぎ手が減ればバランスを崩す原因になる可能性はあります」と指摘しています。
今後のポイントとして「施工主がくいの本数をギリギリに設定したか、余裕を持って設定したか。また(施工不良のくいが)どのように配置されているかも重要だと思います」と分析しています。
傾斜した西棟には計52本の杭が施工されているそうです。
これまで南側の28本は調べたそうですが、北側の24本は未調査だったようです。
事業主の三井不動産レジデンシャルと施工主の三井住友建設は、19日から北側の24本が強固な地盤に届いているかどうかの調査を始めるそうです。
調査方法として、杭の脇にドリルで穴を掘る「サウンディング調査」と呼ばれる方法を採用するそうです。
また、他の3棟についても、住民と話し合った上で順次調査する予定だそうです。

こんな中、フジテレビ「報道2001」の取材では「ダイナウイング工法」の杭ではなく、従来のコンクリートパイルが使用されていることが判明したそうです。
仮に従来の工法を採用した場合、全体の支持力で単純計算すると、24本のくいが打ち込み不足になっていることになりますが、親会社の旭化成は「単純計算はできません」としています。
私は、杭の施工については専門ではありませんが、支持層にまで施工するのが基本なことはわかっています。
ただし、どうしても良い支持層がない場合や支持層があまりにも深い場合などは、周面摩擦力によって支持をさす摩擦杭を採用することがあります。
つまり、杭が宙ぶらりんでも杭と地盤との摩擦力によって支持をさす工法です。
でも、これには粘性土か砂質土か礫質土かによって摩擦力が全然違ってきます。
私は、かつて、上載加重の小さい床版橋の設計で摩擦杭を使ったことがありますが、これだけ大きいマンションだとやはり支持層にまで施工するのは常識だと思います。
すでに、2.4cmも建物が沈下しているのがわかっているので、これは明らかに支持力不足ということになります。
三井側は「震度7の大地震でも倒壊しない」と横浜市に説明し、旭化成は「現時点で緊急の危険性はない」としていますが、この発言はあまりにも無責任な気がします。
ただでさえ、「ダイナウイング工法」の杭ではなく、従来のコンクリートパイルだとすると強度は3分の1になるのは常識です。
そして、それは支持地盤についていることが前提ですが、それすら不明となると実際の強度はどれくらい低下しているのかわからないほどです。
大きいマンションが、地震もないのに沈下することは少ないのですが、これは多少なりとも杭を打てば沈下はしないものです。
そういう意味ではよっぽどずさんな杭打ち工事だったことが実証されたと思います。

下図は、「ダイナウイング工法」の施工フローです。
  • 【掘削作業・拡大掘削】
    掘削ロッドを正回転または逆回転しながら地盤を掘削、孔内の土を緩めます。
  • 【根固め液の注入】
    支持層においては、所定の長さを拡大掘削しつつ根固め液を注入し、土との撹拌のより良質な根固め部を設けます。
  • 【ロッドの引き上げ】
    掘削ロッド引抜き時には、原則として拡大しながら掘削孔を築造します。
  • 【杭の埋設】
    羽根付き杭を回転埋設し、根固め部に杭先端を定着させます。


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