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アラル海について

今から40年前、私が中学生の時の世界地図には世界一の湖のカスピ海の横で、アラル海が大きく載っていました。
このアラル海の変貌と環境問題について考えたいと思います。

(1)50年前のアラル海
このアラル海は、カザフスタンとウズベキスタンにまたがっており、今から50年前には世界第4位の面積(66,000km2,琵琶湖の約100倍)をもつ巨大な湖でした。
塩分濃度は1%(海水は3.5%)程度であり、魚の宝庫として地域の産業と水運を支えていました。
半砂漠地帯に位置するアラル海を涵養していたのは天山山脈を水源とするシルダリヤとパミール高原を水源とするアムダリヤの2つの河川で、2つの河川の年間流量は約1300億トン(130km3)あり,1950年にはそのうち半分以上がアラル海に到達していました。
これにより湖からの蒸発量と河川からの流入量のバランスがよく、当時のアラル海はその美しい姿を保っていました。
かつては6万人もの生活を支えていたそうで、ウズベキスタンの港町ムイナクには漁業者だけで1万人が働いており、魚を加工する工場も数多くありました。

(2)アラル海の衰退
ところが1960代になるとウズベキスタン(当時はソ連の一部)では大量の灌漑用水を取水して綿花を栽培するようになりました。
表面積の広いアラル海は、乾燥地帯に位置しており、毎年30-35km3の水分が蒸発しています。
科学的根拠に基づき生態系的に許容されるアラル海流域の限界取水量は毎年80km3とされていますが、その当時の現実の取水量はこれを大きく上回る102km3となっていました。
つまり、私が中学生の頃にはアラル海が衰退する兆しが見え出した頃だと思います。
このように、大量の灌漑用水に取水してしまうと、アラル海に流入する水量は蒸発量をはるかに下回るようになり、1980年代にはアラル海は南北に分かれてしまいました。(1989年の写真を参照してください)
北側は小アラル,南側は大アラルと呼ばれています。

2000年になると、アラル海は縮んで主に3つの湖に分かれています。
大アラルと呼ばれている2つの湖は塩分濃度は海水をはるかに上回るようになり、塩分濃度が高すぎて魚が消滅し、盛んだった漁業は壊滅しました。(2003年の写真を参照してください)
かつての湖底が広く露出して乾燥し、塩類と有害物質が風に飛ばされて人口密集地域に飛来し<深刻な健康問題を引き起こしています。
かっての港町ムイナクの周辺にも、砂漠にたくさんの船が放置され朽ち果てています。
新しい砂漠からは季節風に乗って年間7500万トンもの塩混じりの砂が飛散し、1000kmも離れた地域まで塩害を拡散しています。
 現在では、アラル海の水量は以前の約10%(1150km3),面積は27%(17,600km2)に激減し、干上がった広大な湖底は有害化学物質と塩が堆積する砂漠(アラルカン砂漠)となってしまいました。(現在の写真を参照してください) 

アラル海と同じ運命をたどり始めた湖が世界のあちこちにあります。
代表的な湖は、前にブログで紹介した中央アフリカのチャド湖と、米カリフォルニア州南部のソルトン湖ですね。

(3)小アラルとダム
それでも、北にある小アラルは、2005年に約100億円かけて完成したダムのおかげでシルダリヤ川の水を堰き止めることができ、その結果、湖域が急速に広がり、塩分濃度がかなり下がりました。
魚と湿地は回復しつつあり、それとともに経済も復活の兆しを見せています。
一方、南側の大アラルと呼ばれる大きな2つの湖は、この完成したダムで、一滴の水も南側の大アラルには注いでいません。
かつて水を運んできていたアムダリヤ川が大幅に改良されない限り、あと10年もすれば、かっての巨大な湖は地図の上から姿を消すことになります。
アムダリヤ川の改修土木工事には数百億ドルの巨費がかかるそうで、政治的合意が難しい状態にあります。  


消えゆくアラル海02
 

現在のアラル海の航空写真です。


消えゆくアラル海01

アラル海の分裂している状況の航空写真です。

(4)アラル海衰退のメカニズムと環境対策
環境破壊って恐いですね。
アラル海は大量の灌漑用水だけでこんなにも衰退してしまいました。
衰退のメカニズムとして、

①自然環境は人類によって簡単に破壊されてしまいますが、修復は時間がかかるうえ困難です。
自然の体系に大規模に介入する場合、計画立案者(主として政治家たち)は行動を起こす前に、介入の結果を慎重に見極めなければいけないのですが、旧ソ連はこれを怠ったと思います。

②現時点で深刻な問題が生じていないからといっても、将来も大丈夫だとは限りません。
アラル海集水域では何世紀も前から広範な灌漑が行われていましたが、1960年代までは湖に深刻な被害はありませんでした。
灌漑をさらに拡張したことによって持続可能な限界点を超え、一帯の水系が破綻しました。

③環境と人間が絡んだ複雑な問題の場合、その場しのぎの解決策は要注意です。
綿花栽培を大幅に削減すればアラル海に注ぐ水量は増えるのですが、国の経済に打撃を与え、失業を増やし、社会不安を招くこともあのます。
持続可能な解決策に求められるのは、資金と技術革新だけではなく、それ自体が政治・社会・経済の面で実際的である必要があります。

④自然環境は驚くほどの回復力を持っています。
希望を捨てたり環境保護の努力を怠ったりしないことが重要になります。
多くの評論家がアラル海はもうだめだと見限っていますが、実際にはかなりの部分が生態的に回復しつつあるとの情報もあります。
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