大蘇ダムは「底抜けダム」

まさかと思うダムが日本に存在しています。
本当に漫画みたいなダムです。
それも2つもあります。
それは、いずれも農水省が農業用ダムとして建設したもので、熊本県の大蘇ダムと北海道の東郷ダムです。
なんで漫画みたいなダムかと言うと、ダムなのに水が溜まりません。
つまり「底抜けダム」なのです。
今回は、この「底抜けダム」の中で、大蘇ダムについて調べてみました。

大蘇ダムは、熊本県産山村を流れる大蘇川をせき止めて造られています。
農水省九州農政局が「大野川上流農業水利事業」として建設したもので、計画上の有効貯水量は約390万トンとなっています。
中心遮水ゾーン型ロックフィルダムで、大野川水系最大のロックフィルダムとなっています。
大蘇ダムの最大の目的は大分県の竹田市、熊本県の産山村、阿蘇市の2県3市村にまたがる約2,500haの農用地の畑地灌漑と水田の用水補給を行うことです。
受益地の7割以上を大分県竹田市が占め、ハウスでのトマト栽培を手がける農家が中心でした。
水をせき止めるダム本体の堤の高さが約70m、長さ約262mで、総貯水量は430万m3となります。

当初は1987年(昭和55年)に完成する予定でしたが、ダムサイトは阿蘇カルデラの北東斜面に位置し、地質は火山噴出物で地盤がとてつもなく悪く、基礎掘削に着手すると、基礎地盤の一部に開口亀裂を発見したりの繰り返しで、一時ダム建設工事を中断し、調査と対策の実施など、何度も計画変更を余儀なくされ、事業費も当初見込みの約130億円から約595億円と大幅に増加しています。
でも、堤体は2004年に完成しています。
完成は、実に今から10年以上も前なのです。
2006年(平成18年)にも給水を開始する計画でしたが、2005年3月に堤体の試験湛水を行なったところ、貯水池の土壌に当初の予測をはるかに上回る浸水が確認され、計画は延期されました。
この原因として、地盤にいくつもの亀裂が生じていて、ダム湖の底やのり面から水が漏れ出し、まるで底に穴があいたバケツ状態になり、計画通りに水が貯まりませんでした。
大成建設や鹿島建設など、大手ゼネコンのした施工にしては前代未聞のあり得ない事態でした。
周辺一帯はいわゆる火山灰地であり、先に述べたように地盤が悪く、地元の人たちは当初から「水を貯めるのは難しいのではないか」と、語り合っていたそうです。
そもそもダムを造るような場所ではないと心配していたのですが、ダム建設の関係者らは「ここにダムが造れれば、世界中のどこにでも造れることになる」と、全く意に介さず、技術力への自信と驕りをみなぎらせていたそうです。
九州農政局は当初、水を待ち望む受益農家らに対し、この重大事実を明らかにしませんでした。
しかし、土地改良区の関係者が試験湛水のデータなどが示されないことなどに不審を抱き、水漏れの事実を突き止めました。
こうして水漏れダムの存在が初めて、表面化しました。
マスコミにも報道され、「欠陥ダム」になりました。
でも、2008年の時には、九州農政局の担当者は、「ちょっと待ってください!欠陥!欠陥!と言わないでください」と言い、「欠陥ダム」を認めなかったそうです。
彼らはダムからの漏水を認めず、「水の想定外の浸透によるもの」と言い張ったそうです。
水がダムの底や周辺から地中に浸透していくのは、当たり前のことなのですが、ダムを建設するということは、それらを全て想定した上で、水を貯めるのに適した場所を選定するものです。
そもそも水が貯まらないような地質のところにダムを造ってしまったことが、大きな間違いだったのです。
その後に、水漏れダムの存在が世間に広く知られるようになり、事業主体の九州農政局に批判の声が寄せられるようになりました。
国民の多くがとんでもない欠陥品を造った不手際に呆れ返り、憤激したのは言うまでもありません。
さすがにこのままではまずいと思ったのでしょう。
農水省は漏水の事実を認め、補修工事を行なうことにしました。
2010年度から3年間かけ、ダムののり面や底面の一部(約3万平方m)にコンクリートを厚さ約10cmまで吹き付けるというものです。
つまり、地盤にできている亀裂をコンクリートで塞いでしまおうという計画です。
補修工事は、その効果を調査する意味合いもありました。
それで、まずは地盤全体の10分の1の面積を対象としました。
でも、全体の10分の1とはいえ、かかる費用は約8億4000万円と見積もられました。
この補修工事を九州農政局は「貯水池浸透抑制対策調査工事」と命名しました。
ダムの水漏れ対策ではなく、あくまでも「浸透抑制対策」だそうです。
九州農政局はこうした水漏れ対策を2年ほど続け、「効果あり」と判断したのでしょう。
2013年度からは残りの斜面や湖底(約30万m²)に漏水対策を実施する案を地元自治体や土地改良区に新たに提示しています。
つまり、ダム湖の底とのり面の全体をコンクリートで覆いつくすという案です。
2010年度からの総事業費約8億4千万円は全額国費で賄われたのですが、2013年度からの総事業費126億円は、国が7割を負担し、残る3割を大分県、熊本県、竹田市、阿蘇市が受益面積に応じて負担することとされています。
ただし、2009年度からは、供給能力は計画の半分程度にとどまるものの、一部で農業用水の利用が開始されている現状もあり、熊本県側は現状の供給能力でも足りるとして追加負担に難色を示していました。
熊本県側の受益面積を減らして、大分県側の負担のみで実施する可能性も模索しているみたいですが、結局どうなったのかは私には情報不足です。
工期は、給水を中断して施工する場合には5年、給水しながら施工する場合には7年が見込まれていましたが、2015年の段階ではまだ「欠陥ダム」のままのようです。

阿蘇火山灰土のなかにダムを造るという奇抜な設計から始まり、大成建設、鹿島建設といった国内有数のゼネコンに工事を発注して完成検査を済ませ、最後の計画変更同意を取ったら一月もたたないうちに事業所をたたみ(2005年3月末日)蜘蛛の子を散らすように雲散したそうです。
そのときの国営所長K氏は東北農政局長になり、工事第一課長T氏は大臣官房へと栄転されたそうです。
翌年度から試験湛水が始まりましたが、漏水が激しくて一向に貯水できなかったのは前述の通りです。
「雲散したころのことを思い返すと、どうもあの頃のひとたちは、ダムには水が貯まらないと思っていた節がある」とマスコミの人は語っています。
なんとも不可解で、計画性に乏しいダム建設ですね。
でも、まだ終わったわけではありません。
これからも、まだ何億円も国費が支払われるこ思います。
こういうのを「無駄な公共事業」と言うのでしょう。
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