乳頭温泉郷での事故と硫化水素

秋田県仙北市田沢湖生保内にある「乳頭温泉郷」の近くで、3月18日午後5時過ぎころ、「乳頭温泉郷」の源泉の調査をしていた3人が亡くなりました。
3人はいずれも硫化水素による中毒で倒れた可能性が高いとみられています。
この3人は、乳頭温泉郷の旅館から「温泉の量が減って温度も下がっている」との連絡を受けたため、通報者の仙北市職員を含めた4人で調整に向かっていました。
事故現場は秋田駒ヶ岳のふもとの「乳頭温泉郷」にある「カラ吹き源泉」と呼ばれるところで、硫化水素を含む水蒸気が噴出しているところです。
3人は、源泉から約200m離れたくぼ地で倒れていたそうです。
仙北市企業局によると、源泉は、先に述べたように、「カラ吹き源泉」と呼ばれ、硫化水素を含む水蒸気が噴き出し、水蒸気に水を加えて温泉として供給する設備があります。
源泉は掘削から40年ほど経過し、設備は以前から老朽化が指摘されていました。
2010年には蒸気が漏れる事故があり、応急措置として蒸気管の修繕工事を行っていました。
源泉付近は有毒な硫化水素が発生するため、一般の立ち入りは禁止されています。
仙北市企業局は「作業員は経験が豊富で、ガスの危険性は十分に認識していたはずだが」と話してはいます。
秋田県では2005年12月、湯沢市の泥湯温泉で、湯で解けてできた雪穴に落ちるなどした一家4人が、たまっていた高濃度の硫化水素ガスを吸って死亡する事故が起きています。
これだけでなく、温泉地では、硫化水素による事故がたびたび起こっています。

硫化水素は、火山ガスや鉱泉中に含まれる腐った卵のような臭いをもつ無色の有毒気体です。
実験室では,硫化鉄に希塩酸を加えてつくります。
空気中で青色の炎をあげて燃焼して二酸化硫黄を生じ、還元性をもち、各種の金属と反応して硫化物をつくります。
水に少し溶けて弱酸性を示し、金属塩水溶液に通じると、各金属に特有な色をもった硫化物の沈殿を生じます。
そして、硫化水素は、高濃度になると、嗅覚をまひさせるため、気づかない場合も多く、死亡例も多くみられます。

「乳頭温泉郷」は、十和田・八幡平国立公園にあり、乳頭山麓に点在する七湯が呼ばれています。
七湯は独自に源泉を持ち、その泉質は多種多様で、「乳頭温泉郷」には十種類以上の源泉があります。
また、乳頭山登山道には一本松温泉というかつての温泉場跡地の野湯も存在しています。
①鶴の湯温泉
・場所
県道の「鶴の湯入口」バス停より数km分け入った場所にあり、他の宿とは距離があります。
・泉質
含硫黄・ナトリウム・カルシウム塩化物・炭酸水素泉、他3種です。
・効能
高血圧症、動脈硬化症、リウマチ、皮膚病、糖尿病他です。
②妙乃湯温泉
・場所
秋田県道194号線沿いにあります。
・泉質
カルシウム・マグネシウム硫酸塩泉・単純泉です。
・効能
皮膚病、動脈硬化症、消化器病等です。
③黒湯温泉
・場所
県道の休暇村前より1km強分け入った場所にあります(冬季は休業しています)。
・泉質
単純硫化水素泉・酸性硫黄泉です。
・効能
高血圧症、動脈硬化症、抹消循環障害、糖尿病他です。
④蟹場温泉(がにばおんせん)
・場所
秋田県道194号線起点付近です。
・泉質
重曹炭酸水素泉です。
・効能
糖尿病、皮膚病他です。
⑤孫六温泉
・場所
県道の大釜温泉より1km強分け入った場所にあります。
・泉質
ラジウム鉱泉です。
・効能
胃腸病、皮膚病(ジンマシン)、創傷他です。
⑥大釜温泉
・場所
秋田県道194号線沿いです。
・泉質
酸性含砒素ナトリウム塩化物硫酸塩泉です。
・効能
真菌症(水虫)慢性膿皮症、リウマチ性疾患他です。
⑦休暇村乳頭温泉郷
・場所
秋田県道194号線沿いです。
・泉質
単純硫黄泉・ナトリウム炭酸水素塩泉です。
・効能
高血圧症、動脈硬化症などです。
⑧一本松温泉
・場所
登山道の途中にある野湯です。
・泉質
単純硫黄泉です。
・効能
神経痛・リウマチ・胃腸病・腰痛・皮膚病・婦人病・運動器障害です。

このように「乳頭温泉郷」は硫黄泉が多いのが特徴です。
硫黄泉(いおうせん)は、掲示用泉質名に基づく温泉の泉質の分類の一種で、療養泉に分類される泉質です。
硫化水素の特徴でも述べましたが、硫黄泉も、卵が腐ったような臭いがします。
また湧出後湯船にて湯の花により白濁する温泉も多いのも特徴です。
掲示用泉質名では硫黄泉と一括りにされますが、硫化水素の含有の有無により、全く含まない硫黄泉と、これを含む硫化水素泉に大別されています。
硫化水素を含む温泉の泉質名では、以下に分類されています。
①旧泉質名
・単純硫黄泉
・含食塩重曹-硫黄泉
・単純硫化水素泉
・酸性硫化水素泉
②新泉質名
・単純硫黄泉
・含硫黄-ナトリウム-塩化物-炭酸水素塩泉
・単純硫黄泉(硫化水素型)
・酸性-含硫黄(-ナトリウム)-硫酸塩泉(硫化水素型)
効能としては、以下が挙げられています。
①浴用
一般的適応症のほか、慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病
硫化水素型では他に、高血圧症、動脈硬化症
②飲用
糖尿病、痛風、便秘

硫化水素泉の場合、空気中に放出される硫化水素ガスを長時間または高濃度のものを吸引すると中毒を起こすと言われ、内風呂では十分に換気が行なわれなければいけません。
野湯の場合、窪みや穴状の地形の中にあると高濃度の硫化水素ガスが溜りやすく、過去にも中毒死亡事故が起きています。
冬季には地形にかかわらず積雪で温泉の周りが囲まれた状態でも同じことが起きると言われています。
今回は不幸な事故ですが、専門家がわかっていながら防げなかったことを考えると、異常な量の硫化水素が発生していたのかも知れません。
まさに、効用と事故は紙一重なのでしょうか。
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