沈埋トンネルについて

函を沈めてトンネルをつくる工法で、沈埋トンネルがあります。

(1)沈埋トンネルとは
この沈埋トンネル(ちんまいトンネル)ですが、どんな工法かというと、あらかじめ海底に溝を掘っておき、そこにケーソン(コンクリートや鋼板でつくった函体)を沈めて土をかぶせるトンネルです。
海底にトンネルを作る際には、開削・シールドトンネルよりも浅く、短距離にトンネルを作ることができます。
この工法は、19世紀末にアメリカで開発され、100年あまりの歴史をもっています。
欧米を中心に発展してきましたが、日本でも有効な海底トンネルとして全国各地につくられてきています。

(2)沈埋トンネルの施工
1)沈埋トンネルの施工手順
沈埋トンネルの施工手順としては、
①ケーソン製作・・・・ケーソンを地上で構築します。
②基礎工事・・・・ケーソンを設置する部分に平らな穴を海中に掘っておきます。
③曳航・・・・両端をバルクヘッドという蓋で閉塞して浮上後、船で目的の位置まで牽引します。
④沈設・・・・アンカーワイヤーで位置を調整をしながら、所定の位置に設置します。
⑤内部構築・・・・内部の仕切り壁などを構築します。
⑥埋戻・・・・側部と上部を埋戻して完成です。
このように、基本的にはケーソンを海中に設置する作業ですが、漏水には神経を使うので施工の精度は高くなければいけません。 

2)沈埋トンネルの有利性
沈埋トンネルには以下のような有利性があります。
①函体はドライドックや造船ドックでプレハブ方式により製作されるので、構造的に高品質で水密性に優れた構造ができます。
②トンネルの土被りを少なくできるので、トンネル全長を短くできます。
③函体の比重が小さいため、地盤の支持力があまり必要ありません。
④プレハブ方式なので、現場での沈設・据付時間が短くてすみます。


3)ケーソンの構造
沈埋トンネルの沈埋するケーソン(函体)の構造としては、次の4つのタイプに大別でき、施工性や経済性、製作ヤードなどを考えて決定されています。
①鋼殻構造
鋼殻構造は、造船所などで鋼殻を造り岸壁などに一次曳航し、鋼殻を浮かせた状態で内部にコンクリートを打設して製作します。
浮遊打設を条件とした形式で、構造的には鉄筋コンクリート式のみです。
鋼殻は曳航時の外殻、コンクリート型枠、防水鋼板としての役割をもっています。
②コンクリート構造
コンクリート構造には、
・鉄筋コンクリート式
・プレストレストコンクリート式
の2つの方式があります。
両方式とも函体端部を鋼殻、底面と側面は防水鋼板、上面は防水シートで被覆するのが一般的です。
鉄筋コンクリート式が通常の鉄筋コンクリート構造なのに対して、プレストレストコンクリート式は横断方向や軸方向にプレストレスを導入した構造で、部材を薄くできるメリットがあります。
③鋼コンクリート合成構造
鋼コンクリート合成構造は、鋼とコンクリートの長所を生かした構造で、
・オープンサンドイッチ式
・フルサンドイッチ式
の2つの方式があります。
オープンサンドイッチ式は、函体外面を鋼板で製作したあと、内側に鉄筋を組みコンクリートを打設して一体構造にする方式です。
先に述べた鉄筋コンクリート式に比べて外側鉄筋を大幅に低減できるのが利点です。
一方のフルサンドイッチ式は、函体外面・内面すべてを鋼板で、造り鋼板の間にコンクリートを打設して一体にした方式です。
内外鋼板が鉄筋の代わりになるので、鉄筋は不要となります。
④プレキャストセグメント構造
プレキャストセグメント構造とは、トンネル延長方向に分割されたセグメントを工場や製作ヤードで製作し、これらを連結してPC鋼材で一体化する工法です。
・鉄筋コンクリート式
・プレストレストコンクリート式
の2つの方式があり、コンクリートの水密性を確保することで防水鋼板を省ける一方で、セグメント間の止水性を確保する必要があります。

4)沈設
沈設は沈埋トンネル施工の一番大事な作業です。
・プレーシングバージ方式
・タワーポンツーン方式
・SEP(自己上昇式作業台船)方式
といった沈設方法があり、地形や函体の大きさ、水路の広さなどによって選択されています。
海底の設置場所には、あらかじめ函体を埋める掘り込みをし、その底部には基礎捨石を敷設して基盤面を整備しておきます。
ここにアンカーワイヤーで位置を調整しながら函体を据え付け、終わったら隣の函とのつなぎ目の水を抜き、締め切ってあった扉を開放していきます。
このため接合には、高い精度が求められます。
接合方法には、
・水中コンクリート打設方式・・・・継手部の周囲を水中コンクリートで固める方法
・水圧接合方式・・・・ゴムのガスケットを使い水圧を利用し、引き寄せて圧着させる方法
がありますが、近年は、施工性や経済性に優れた水圧接合方式が一般的です。
さらに最終接合は、
・締め切りをしてドライワーク方式で行う方法
・Vブロック、ターミナルブロックと呼ばれる特殊な函体を別につくって使う方法
などが開発されています。
どの方法を採用するかは施工条件や水深といった現場の条件を判断して決められています。
こうした方法で据え付けられた沈埋函は、最後に函の上に土を盛って元の海底の高さまで埋め戻します。
さらに内部の仕切り壁をつくったり、舗装工事などでトンネル内部を構築して完成となります。

5)沈埋トンネルの施工実績 
沈埋トンネルは、日本では1944(昭和19)年、大阪市安治川の河底に第一号が完成しています。
都市の臨海部における河川、運河、航路などを横断する際に、有力なトンネル工法として採用されています。
これは、建設費が抑えられるだけでなく、用地が少なくて済み、施工が比較的容易といった利点から、これまで約30の沈埋トンネルが建設されてきました。
ただし、橋梁やシールドトンネルに比べて、技術的に留意しておくべきいくつかの課題もいくつかあります。
まず接合や止水には、技術的に十分な検討が必要になります。
一番重要な接合方法には、水圧接合方式や水中コンクリート打設方式などが採用されていますが、特に大水深海域での施工には、高度な技術が要求されています。
2011年8月29日に開通した、全長1140m沈埋部分724m那覇うみそらトンネル(なはうみそらトンネル)も沈埋トンネルです。
トルコ最大の都市イスタンブールで、2013年10月に、日本の支援で完成した、アジアとヨーロッパとを隔てるボスポラス海峡を繋いだのも沈埋トンネルです。
このトンネルは、沈埋トンネルとしては世界最深だそうで、水面から約60mの位置に設けられています。
また、トルコは世界有数の地震国のため、マグニチュード(M)7・5の地震に耐えるような構造だそうです。
日本でのおもな沈埋トンネルとしては、
①道路トンネル
・安治川トンネル - 1944年
・衣浦海底トンネル - 1973年
・首都高速羽田線 羽田トンネル - 1964年
・首都高速湾岸線 東京港トンネル - 1976年
・多摩川トンネル - 1994年
・川崎航路トンネル - 1994年
・第二航路トンネル - 1986年頃 限定供用開始・2002年 一般供用開始
・川崎港海底トンネル - 1979年 限定供用開始・1992年 一般供用開始
・大阪港咲洲トンネル - 1997年 道路と鉄道(市営地下鉄中央線)が一体構造
・神戸港港島トンネル - 1999年
・東京港臨海道路臨海トンネル - 2002年
・夢咲トンネル - 2009年
・新潟みなとトンネル - 2002年 暫定供用開始・2005年 全面供用開始
・那覇うみそらトンネル - 2011年 一般供用開始
・新若戸道路海底トンネル- 2012年 一般供用開始
②鉄道トンネル
・総武快速線隅田川トンネル - 1972年
・東海道貨物線羽田トンネル - 1973年
・都営地下鉄新宿線隅田川沈埋トンネル - 1978年
・京葉線東京港トンネル - 1990年


沈埋トンネルの作業の様子を模式化しています。


沈埋トンネルの断面図です。
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