原発事故と木下聡さんの証言

福島第一原発事故が起きたとき、1号機内部にいて、今年8月にがんで亡くなった元作業員の木下聡さん(65)の証言を紹介します。

あの日は午後から、1号機で定期検査のための足場を組む作業をしていた。
1階には私と同僚の2人。
4階に元請けと協力会社の4、5人がいた。
最初の揺れはそれほどでもなかった。
だが2回目はすごかった。
床にはいつくばった。
配管は昔のアンカーボルトを使っているから、揺すられると隙間ができる。
ああ、危ないと思ったら案の定、無数の配管やケーブルのトレーが天井からばさばさ落ちてきた。
落ちてくるなんてもんじゃない。
当たらなかったのが不思議。
4階にいた人たちは水が大量にゴーと襲ってきたと言っていた。
それが使用済み燃料プールからなのか、非常用復水器が壊れたからなのか、そのときは分からなかった。
皆で集合して、1号機から脱出した。
地震が起きてどれぐらいだったかな。
必死だったからはっきりしないけど、10分ぐらいじゃないかな。
途中の様子も恐ろしかった。
タンクはぼこぼこ倒れてるし、潮が引いていて、これは津波が来ると思った。
沖のテトラポットがむきだしになっていた。
敷地内にある元請けの事務所に戻り、装備品を返して、まとまった班から解散になった。
東電は「全電源喪失と地震の揺れは無関係」と言っているが、そんなのあり得ない。
謙虚に検証する姿勢がないと、安全神話が復活する。
そもそも、運転開始から40年になる1号機の老朽化はすごかった。
重要器具は定期検査で交換するが、周辺の装置はそのままだ。追加、追加でどんどん配管を増やし、耐火構造にするために防火剤を塗りつけるから、重量は半端じゃなかった。
設計基準を大幅に超えていたはずだ。
建屋のコンクリートも相当劣化していた。
インパクトドライバーを当てると分かる。
ずぶずぶと刺さって、粉は真っ白。
鉄筋をモルタルで塗り固めるときもクレーンで流し込むだけ。
本来はバイブレーターを使うが、竹の棒で突っつくだけ。
施工はひどいものだった。
だから水素爆発で粉々に吹き飛んだ。
ずっと世話になったが、今は言っていることの半分も信用できない。
事故後の対応については新聞をずっと切り抜いている。
「4号機の建屋、問題なし」という記事があるが、そんなのうそっぱちだ。
あれだけ揺れて「問題なし」だなんて。
事故後の対応は全てメーカー任せだった。
正常に作動していればメルトダウンを防げた可能性がある非常用復水器(緊急時に原子炉の蒸気で冷却)も、当直の社員は使い方を知らなかったって言うんだから。
当直の人は、中央制御室の操作はできても、せっかくの冷却装置を使えない。
訓練もしていなかったって言うんだから、恐ろしい話だ。
現場にいた私らに明確な指示があれば、対応できたはずなのに。
3月には仮設の配電盤にネズミが入って停電する事故があった。
侵入を防ぐ初歩的な施工ができていない。
熟練した作業員が線量オーバーで入れなくなっているから。
今後も事故は起きるだろう。
人生のほとんどを原発に捧げてきたのに、情けない。
のんびり暮らそうとした途端、病気が分かった。
体力は元気なときの10分の1になって、ペンも持てなくなった。
だけど、簡単には死ねない。
納得できない。
俺は俺で、じたばたして生きてみせる。

これが木下聡さんの証言です。
証言の中で「運転開始から40年になる1号機の老朽化はすごかった」と言っています。
愛媛県の伊方原発も含め、全国に老朽化した原子炉はいっぱいあります。
今現在が停まっていて本当に良かったと言わざるを得ません。
今年の8月6日にも東電は、福島第一原発事故で炉心溶融(メルトダウン)した3号機について、核燃料のほぼすべてが溶け落ちた可能性が高いとする解析結果を発表しました。
これまでは溶け落ちた量を6割程度とみていました。
1号機でもすべての核燃料が溶け落ちたとみられており、廃炉のための核燃料の取り出しは、何か新しい発明か発見でもないかぎり不可能だと私は思います。
東京電力は去年の8月12日に、福島第一原子力発電所の20~50歳代の男性作業員10人に、放射性物質による身体汚染が見つかったと発表しています。
これについては、東電は、「作業員の熱中症対策のため、作業拠点の免震重要棟前で水を噴霧している。10人は移動用のバスを待っている間、この霧を浴びた可能性が高く、霧に放射性物質が混じっていた」とか言っていましたが、そんなちょっとしたレベルの問題ではないと思います。
放射性物質による身体汚染についても、あれから1年経っています。
木下聡さんが亡くなっているように、あの当時に働いていた人たちや、放射能を浴びた後に非難した人たちの中には、すでに亡くなっていたり、ものすごく体調が悪い人もたくさんいるはずです。
これが何故、表にでないのでしょうか。
東電は、誰にでも納得できる現在の原子炉の状況と、被爆した人たちの現状を伝えるべきです。
そして政府は、もう二度と原子力発電を行わないことを誓うべきです。
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