井戸にまつわる昔話①

井戸にまつわる昔話があります。
この中で、トルストイの童話で「七つの星」があります。
トルストイは、ドストエフスキーと並んでロシア19世紀文学の巨峰の一人である小説家です。
心理描写や道徳観念が複雑にからまりあうトルストイの作品は、現実性を重視したリアリズム文学の傑作とされています。
代表作は、「戦争と平和」(1865~69)、「アンナ・カレーニナ」(1875~77)などがあります。
トルストイの童話では、「イワンのバカ」が有名ですが、「七つの星」を紹介します。

七つの星
むかしむかし、ある村で、毎日毎日、あつい日照りが続きました。
雨が、ちっとも降らないのです。
池も井戸も、すっかり水がなくなってカラカラです。
ある家に女の子がいましたが、お母さんが病気になって寝込んでしまい、
「ああ、水を飲みたい、水を飲みたい」
と、言うのです。
女の子はどうにかして、お母さんに水をあげたいと思って家を出て行きました。
でも、どこを探しても、ひとしずくの水さえも見つかりません。
女の子は疲れてしまって、野原の中の草の上に座ると、そのまま眠ってしまいました。

しばらくして目を覚ました女の子は、目の前にある物を見てビックリ。
すぐ前に一本の木のひしゃくが置いてあり、その中にきれいな水が光っているのです。
「あら、水だわ!」
女の子は喜んで、そのひしゃくを取りあげました。
すぐに飲もうとしましたが、
「いいえ、わたしよりもお母さんに、早く飲ませてあげましょう」
急いで、家の方へかけて行きました。
すると途中で、一匹のイヌが言いました。
「わたしはのどがかわいて、死にそうです。一口だけ飲ませてください。ワン」
女の子は可愛そうに思い、手のひらに少し水を入れるとイヌに差し出しました。
イヌは喜んで、ピチャピチャと水を飲みました。
すると不思議な事に、木のひしゃくはキラキラと光る銀のひしゃくに変わりました。
それから、急いで家へ帰った女の子は、
「さあ、お母さん、お水ですよ」
お母さんはゴクリ、ゴクリと、ひしゃくの水を飲みました。
「ああ、おいしかったわ、ありがとう」
お母さんがそう言った時、銀のひしゃくは金のひしゃくに変わりました。
そのひしゃくの底には、まだ水が少し残っています。
女の子が、今度はやっと自分が飲もうとすると、ふと、一人の知らないおじいさんがやって来ました。
「のどがかわいて、倒れそうです。一口でも水を飲ませてください」
残っている水は、わずかです。
おじいさんにあげてしまうと、自分は飲む事が出来ません。
でも女の子は、
「はいどうぞ、おあがりなさい」
と、言って、ひしゃくを渡してしまいました。
その人は、うれしそうに水を飲むと、
「ありがとうございました」
お礼を言って、出て行きました。
女の子は、あとに残ったひしゃくを見てビックリしました。
ひしゃくからはきれいな水が、こんこんとわき出ているのです。
女の子が喜んで飲んだあと、金のひしゃくには、ピカピカと光る美しい七つのダイヤモンドがついていました。
そしてそれが空へ飛んで行ったかと思うと七つのお星さまになり、ひしゃくの形の星座になりました。
それから、ひしゃくの水を飲んだおかげでお母さんの病気も治り、二人は幸せに暮らしたということです。

「北斗七星」はこうして生まれたと言わんばかりの昔話です。
自分のことは後回しにして、他人を助けるような昔話は、日本にもいっぱいあります。
喉がカラカラの時には、自分で飲んでしまうものですが、昔話の主人公はなかなか我慢強い人が多いです。
但し、現代に生きる私たちは、この昔話のような究極の我慢はしなくてもいいのではと思っています。
スポンサーサイト
最新記事
カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム
QRコード
QR