世界農業遺産の阿蘇

日本には、国際連合食糧農業機関が認定する「世界農業遺産」があります。
今回は、熊本県の阿蘇草原の持続的農業を紹介します。

熊本県 阿蘇草原の持続的農業は、静岡県 静岡の伝統的な茶草場農法、大分県 国東半島・宇佐の農林水産循環システムと一緒に、2013年5月29日に「世界農業遺産」の認定を受けました。
この理由として次のようなものがあります。

(1)世界農業遺産としての阿蘇地域の認定理由
①草原を活用した農業
・放牧、採草、野焼きなどによる草原の管理
・畜産だけでなく稲作や畑作と緊密に結びついた草原の活用
・草原は集落単位で共同管理され、持続的な草資源の利用が長年にわたり引き継がれている貴重な草原性動植物の保全
・広大な草原には数多くの希少な草原性動植物が生育・生息
・九州が中国大陸と陸続きであったことを物語る植物や、阿蘇の固有種も生育
・絶滅危惧種が集中している生物多様性ホットスポット
②美しい草原・農村景観の維持
・草原景観は人々の農業活動によって作られた「二次的な自然」
・カルデラの中の水田・田畑は長年の土壌改良によるもの
・カルデラ内は上から草原、森林、農地、集落という特徴的な景観
③農耕祭事が息づく伝統文化
・阿蘇火山を畏れ敬う心が火山信仰の元となった
・おんだ祭りなどの豊作を願う数々の農耕祭事
・かつては「草泊まり」や「盆花採り」などの風習があった

(2)阿蘇の地形の利用と工夫
阿蘇地域では、世界でも有数の規模のカルデラ内外で、1000年以上もの間人々の暮らしが営まれ、多様な農業生産活動の中で、草原維持や農耕文化、地下水涵養、農村景観保全などの取組みが生活の中に息づく、世界に類のない特徴的な農業システムが築かれてきました。
活火山である阿蘇山の中央火口丘と世界最大級のカルデラ周辺に広がる阿蘇の草原は、土壌が火山性であり、かつ地理的条件も、農耕に不適なため、人々は長年、その高冷地の土壌を水田・田畑として改良し、また牧野として利用してきました。
その結果、水稲や露地栽培、施設園芸、畜産など様々な農業が営まれるようになりました。
阿蘇の農業システムの特徴は、野焼き、放牧、採草を行うことで森林化を妨げ、草原を利用した農業を行いつつ、生物多様性や農業景観の保全が図られている事です。
また森林や広大な草原は、雨水を蓄え易い地質特性のため、多くの湧水地が分布しています。
白川水源、池山水源は、「日本名水百選」に選定されています。
毎年春に行われる野焼きは、樹木の育成を抑制し、ダニの駆除や草の新芽の出をよくし、イバラ類などの低木を除去、初夏には牛馬が好むススキなどを再び繁茂させる、省力的で効果的な草原管理技術です。
22000haという日本で最も広大な阿蘇の半自然草原は、集落単位で共同管理され、畜産への活用に留まらず、水田稲作や畑作にも循環的に利用されてきました。
多くの希少動植物がそこに生育・生息しているのも、特徴のひとつです。
草地の持続的な活用を通じて、伝統的農業・農法、農村文化を受け継ぎながら、独特の生物多様性や農村景観が保全されている阿蘇地方は、長年に及ぶ自然との共生の中で生み出された農村風景なのだと思います。

(3)認定の効果としては
①メリット
・国内だけでなく国際的な知名度も高まることから、観光振興や農業振興へ活用し、相互が連携することにより新たな地域の農業の牽引が期待されます。
・阿蘇の農業の価値が世界レベルであると認められることにより、経済社会の変化に伴い継続が難しくなっている野焼きなどの取組みの維持に対する県全体の機運の高まりがります。
・阿蘇地域が現在取り組んでいる世界文化遺産、世界ジオパークの認定への弾みになります。
・認定を契機とし、地域の農林産物に認証制度を設けるなどの取組みを通して付加価値が向上します。
②認定後の責務
・認定されることによって、農業生産活動そのものに直接の制限が加えられるものではないのですが、認定の核となる農業システムが維持されていくことは必要となります。
・申請書の記載に沿った行動計画・保全管理の実施について、年1回報告書の作成が必要となります。

(4)世界文化遺産としての阿蘇
阿蘇市では、熊本県・南小国町・小国町・産山村・高森町・南阿蘇村・西原村との共同により、「阿蘇・火山との共生とその文化的景観」として、提案書を平成19年9月27日にに文化庁へ提出しました。
先日は富士山が登録されましたが、世界文化遺産への登録には5~10年ほどかかるみたいです。
阿蘇は、約27万年前~9万年前にかけて4回の大噴火により世界最大級の規模を誇るカルデラが形成されました。
カルデラ周囲の距離は約128㎞にも及び、火口原に5万人もの人々が生活する世界に類例のない地域です。
現在も活発に活動を続ける中岳は、古くから信仰の対象として崇め、人々も巧みにこの地を開拓し、火山とともに共存してきました。
そして、阿蘇の草原は、平安時代の書物に放牧の記述があることから「千年の草原」と評されています。
古代より人々が牛馬とともに輪地切り・野焼き・採草・放牧等により維持管理を行なってきたからこそ草原環境が守り継がれています。
草原は希少動植物の宝庫でもあり、阿蘇地方の植物の分布種は約1600種といわれ、国内の2割が生育していることになります。
これらの中には中国大陸と陸続きであったという太古の歴史を物語る植物もあります。
世界農業遺産と共に、世界文化遺産にも登録されますと、名実ともに「世界の阿蘇」として高く評価されるとともに、文化財を始めとする地域の宝の保護が進み、環境保全や地域活性化にも繋がると思います。
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