地下水の海への放出について

福島第1原発の地下水を海洋に放出する計画について、私見を述べたいと思います。

(1)汚染水を減らす対策の三本柱
まず、東電の資料によると、汚染水を減らす対策の三本柱というのがありました。
①建屋地下の止水
②排水用立て杭の復旧
③地下水くみ上げ井戸の新設

ですが、まずこれでは汚染水問題の抜本的解決にならないと思います。
①も②も現場の作業員は、必死になってやっているとは思いますが、この対策は、汚染水が出るのを減らすことしかできず、どちらにしても汚染水の問題は解決できません。
そして、最近の報道では、③地下水くみ上げ井戸の新設がクローズアップされています。

(2)井戸から地下水の汲み上げ計画
これまでの汚染水の処理量は30万㎥を超え、現在も第1原発1~4号機の原子炉建屋などの地下に約9万8000㎥の汚染水が溜まっています。
1~3号機の原子炉冷却のため、1日当たり約600㎥を注水しているのに対し、地下水の流入は400㎥に達しているため、汚染水の低減には地下水の流入対策が必要でした。
そして、1~4号機の原子炉建屋から80~200m山側の高台に、井戸(直径30cm、深さ32m)12本を、5月中に掘り終るそうです。
この井戸から地下水を汲み上げ、図.1に示すように海へ放出するのが③の計画でした。
この、背後の山体からの地下水を、井戸で汲み上げ海洋に放出する計画は、5月13日に、福島県漁連の了承を得られず先送りされました。
東電は漁連との話し合いが不調に終わった理由について、「(漁業への)風評被害への懸念を持っている方がいた。さらに丁寧な説明が必要だ」との認識を示しています。
その上で、地下水の放射性セシウム濃度は周辺の河川を下回っているとして、「汚染水の減少策として、(海洋放出の)必要性を理解していただくことが重要」と強調し、地元の理解を得ることに最善を尽くす方針を示したようです。

(3)計画の問題点
この計画ですが、背後の山体からの地下水が汚染されてないことが前程ですが、今のように貯留タンクが満杯で、八方塞の状態では、400㎥の地下水を海に流すのは、案としてはいいと思います。
但し、図.2のように、地下水の流れが、上流から下流へ確実に流れるならの話です。
井戸を32mも掘って、井戸底の標高が、原子炉建屋の標高より高いのならまず逆流することはないのですが、80~200m山側の高台ということなので、原子炉建屋に近い井戸もあり、高さの関係が図.2のようなら、井戸から大量に地下水を汲み上げると、原子炉建屋の汚染水が逆流することになります。
ある文献によると、1号機周辺の敷地は標高30mないし35mの台地を掘削し、標高10mで整地されたそうです。
これは、原子炉建屋など、重要度の高い建物を岩盤に直接支持させるためだったそうです。
これだとまさに図.2のようになり、32mの井戸は、標高35mとしても、井戸底の標高が3mなので、原子炉建屋標高10mより低い位置にあり、逆流が懸念されます。
これだけではありません。
試験的に掘った井戸3本のうちの1本の地下水では、ごく微量の放射性物質トリチウムが検出されています。
これは、つまり、大気中の放射能が山林に降りかかり、地下水となって原子炉下の地下水にまで達しているということになります。
そして、試算では地下水の動きは速いそうです。
土壌も放射性物質を吸着しにくければ、6年後には、井戸の地下水は、海に放出できる放射性ストロンチウムの基準値を超えるところまで汚染されるとの結果が出ています。
これでは、いくら高台に井戸を掘っても汚染水対策にはなりません。
そればかりか、10年後には、原発前の海も井戸の水と同程度の汚染になる可能性もあるといわれています。
汚染状況は、前提条件によって大きく異なってきますが、汚染度はそれほど高くならなくても、井戸も海も汚染が数百年続く、との試算です。
福島県漁連は、汚染水については「たとえALPSで処理した水でも放出は認めない」と言っていますがこれは当然だと思います。
あれだけの爆発があり、放射能が飛び散ったわけですから地下水に何も影響がないと考えるほうがおかしいと思います。
つまり、原発で一度大事故があると、どうにもならない状態になってしまいます。
日本には、「もんじゅ」「常陽」という、全くお金にならず、事故がおきればどうにもならない原発もあります。
冷却材に液体ナトリウムを使っているため、爆発が起きても水で冷やせません。
こんな原発は日本だけです。
それなのに、まだ原発を再稼動しようとするのですか?
原発が安全なわけはないのです。
これが、2年以上経っても、汚染水の一つも解決できない「福島第1」が物語っています。


表.1 汚染水を減らす対策の三本柱


図.1 バイパス井戸と原子炉との位置関係図


図.2 バイパス井戸と原子炉間の地下水の流れ断面図
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