アルプスで除去できないトリチウム

福島第一原発では、放射性物質を含んだ汚染水の処理について苦慮しています。
こんな中で、汚染水を除去できると言われている多核種除去設備があります。
この設備は、アルプス(ALPS)と言い、原子炉の冷却に使った水から62種類の放射性物質を除去できるそうです。
でも、アルプスでもトリチウムは取り除けないそうです。

(1)トリチウムについて
トリチウムについて調べてみると、トリチウムは別名、三重水素とも呼ばれ、水素爆弾の主原料でもあります。
特徴は、水素の放射性同位体であり、水に溶けやすく、半減期は約12年です。
そして、弱いβ線を出して崩壊する核種です。
放射性同位体の中では、危険性が高く、破壊的であり、放射性同位体の中ではワーストNo.1と言われています。
この理由しとて、水素結合しているDNA等を直接被曝することから、かなり破壊的、破滅的だそうです。
さらに放射性物質でありながら、水素が元素転換してヘリウムに置き換わります。
この一連の流れによって、さらに破壊力が増すと考えられ、ある意味ではプルトニウム以上に怖い核種と言われています。
そして、
①トリチウムは一度放出されると、環境の中から取り除くことはできません
②トリチウムは皮膚を通して吸収され、摂取されるそうです
③トリチウム3H(三重水素のことです)を含んでいる食べ物を食べると、水に含まれるトリチウム3Hを飲むよりもいっそう傷つけることになります

つまり、トリチウムは人体において最も危険性が大きい物質と言えます。
トリチウムは、放射能をもった水素なんですが、海へ流れ出ると水の形になります。
そして、海水が蒸発して雲になればそれがまた雨になって落ちてくるように、普通の水のように循環していきます。
こんな中、アルプスの試運転が開始されています。
62種類の放射性物質を除去できるとうたわれています。
本当にそうなのかと何かしら疑いを持ってしまいますが、その場合にでも、それぞれの核種がどれだけの割合で除去できるのかということになるとは思います。
つまり、完璧に62種類の放射性物質が何も残らないように除去できるとは考えられにくいと思います。

(2)東電のトリチウムについての説明
東電は、平成25年2月28日に、トリチウムについて説明しています。
トリチウムの特性として、
①化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています
②ろ過や脱塩、蒸留を行なっても普通の水素と分離することが難しい
③半減期は12.3年、食品用ラップでも防げる極めて弱いエネルギー(0.0186MeV)のベータ線しか出さない
④水として存在するので人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される
⑤セシウム-134、137に比べ、単位Bqあたりの被ばく線量(mSv)は約1,000分の1
トリチウムは水素の仲間で、正確には水素の同位体です。
水素は原子核の中に陽子が一つ、周りを一つの電子が回っている元素ですが、海水の中にはまれに原子核に中性子が一つ入り込んだ重水素と呼ばれるものがあります。
ここにさらに中性子が取り込まれ、陽子一つと中性子二つになったものが三重水素で、トリチウムです。
化学式ではH3と書きます。
トリチウムは自然界にもありますが、これは微々たるもので、ほとんどは核実験や原発の運転で膨大に作られてきました。
そして、今回の福島原発事故でも大量のトリチウムが炉内から出てきてしまっています。
こんな危険なトリチウムですが、東電は「化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています」と書いています。
また「ろ過や脱塩、蒸留を行なっても普通の水素と分離することが難しい」とも書いています。
「水道水にも含まれている」と書くことによって、安全だと思わすように誘導しています。
でも、水素の仲間であるトリチウムは安全なわけはありません。
化学的には原子核に陽子が一つだけの普通の水素とまったく同じように振る舞うので厄介です。
この理由として、確かに水としても存在していますが、多くの化合物は水素が入っているものが無数にあり、そのどこにでもトリチウムは入り込んでしまいます。
人体でも、構成要素の中にたくさんの水素を含んだ化合物があります。
トリチウムはその全ての水素と取り替わる可能性があるのであって、非常に多様な形で存在することができ、決して水としてだけ存在わけではありません。
だけど、東電はトリチウムについて、「水として存在するので、人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される」と発表をしていました。
これは虚偽だと思います。
「水として存在したものは、人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される」が正しいと思います。
その場合でも東電は、ただちに排出されるかのような書き方をしていますが、高度情報科学技術研究機構によれば生物学的半減期は10日とされています。
したがって、決してただちに排泄されるわけではありません。
また、有機化合物の形をとったものはより長く残り続けます。
この場合のトリチウムは、有機結合型トリチウムと呼ばれていますが、同機構によれば半減するのに30日から45日かかるそうです。
また、放射性物質としてのトリチウムが出すベータ線がエネルギーが大変低く、セシウムなどに比べて著しく危険性が低いとしています。
これは一般的な見解であって、そのためトリチウムの危険性は非常に小さく見積もられています。
法的規制もとても弱いのですが、実はここにこそ、原発が抱える構造的矛盾、あるいは構造的危険性の大きなポイントの一つがあるとも言えます。
これは、「実用発電用原子炉の設置・運転等に関する規則の規定に基づく線量限度を定める告示」による法規制の濃度制限に基づくもので、この中の、「周辺監視区域外の水中の濃度限度」では、
トリチウムは、1リットル6万ベクレルという高い値に設定されています。
セシウム137は同90ベクレル、セシウム134が同60ベクレルとなっていることと比較して異常に高くなっていますが、これはトリチウムの危険性が、ベータ線のエネルギーからだけ判断されていることによるものです。

(3)福島原発内のトリチウム
このトリチウムですが、扱いが非常に難しく、なかなかうまく管理できない物質なので、これまでの原発の通常運転でも、常に相当量が漏れ出していると推定されています。
酸素と結合すると水そのものですから、除去がほとんどできないのが現状です。
通常の汚染水は、水の中に汚染物質がある状態であって、濾過であるとか、化学的手法での除去が目指されてきたわけですが、トリチウムが酸素と結合してできた水は、それそのものが放射性物質であって、濾過の対象にもならないのです。
それが通常の水と混じってしまうともうどうしようもありません。
また気体の形でも水素は非常に捕まえにくい物質で、現に福島原発事故の発生直後にも、真っ先に水素がたくさん発生してきて原子炉建屋内に溜まり、爆発を引き起こしました。
今から考えると、あのとき爆発した水素の中にトリチウムが混ざっていたと考えられますが、とにかく閉じ込めにくい物質が水素です。
そのため水素の仲間であるトリチウムの法的規制を強化すると、技術的にクリアすることが難しくなり、すぐに原発の運転を止めなければならなくなってしまいます。
本当は、世界中の原発をすぐに止めるべきだと思われますが、そうした反対派を抑えるために、トリチウムの危険性は、非常に小さく見積もられてきました。
そして、トリチウムの危険性は、水爆として確立しており、何度も大気中核実験が行われました。
核爆発の材料となったのもトリチウムで、今も核融合発電の燃料とされようとしているわけですが、この面からも危険性が過小評価されてきています。
このトリチウムですが、どれぐらい環境中に飛び出してきたかですが、東電が2011年6月6日に発表した大気中に飛び出した核種についての発表を見ていくと、31核種の中に、トリチウムは含まれていません。
しかしこれは絶対におかしいと思います。
原子炉の運転の中でトリチウムは必ず生まれてきます。
炉内ではそれが水として存在していたとしても、当初、水位が下がることにより、燃料棒が加熱してメルトダウンが起こりました。
ということは壊変がどんどん進み、放射線がたくさん出ています。
これが水に当たると分子切断が起こり、酸素と水素に分けられます。
イオン化して分かれるわけですが、そのことでも水素が発生します。
そして、その水素の一部がトリチウムですから、爆発を起こした水素の一部はトリチウムだと思われます。
だけど、東電はこのことについては発表していません。
それでは、炉内で作られていたトリチウムのうち、どれぐらいの量が出たのでしょうか。
これについては、「福島第一原子力発電所の滞留水への放射性核種放出」という日本原子力学会に提出された論文の中で試算があります。
①ヨウ素およびトリチウムの放出率はセシウムと同程度か、それよりも数倍大きい
②バリウムおよびストロンチウムの放出率はセシウムよりも1号機では3~4桁小さく、2, 3号機では1~2 桁小さい
③モリブデンの放出率はセシウムより2桁小さく、アンチモンは3桁小さい
④トリチウム,ヨウ素,セシウムについて、1号機では7%程度,2号機では35~60%程度,3号機では20~70%程度の放出率と見積もられる

⑤2号機とTMI-2事故と比較して、トリチウム,ヨウ素,セシウム,ストロンチウムの放出率は類似である
この試算は、福島第一原発のタービン建屋ならびにその周辺において発生した多量の放射性核種を含む滞留水に対してのサンプリング調査の結果と、放射性核種の炉心インベントリ計算に基づいて、炉心から滞留水への放出率を評価したものです。
炉内で作られていた放射性トリチウムのうち、相当量が環境中に出て行ってしまい、汚染水の中に混じっていることが分かります。
その汚染水のかなりの部分がすでに海に入ってしまったわけですが、今、タンクや貯水槽に貯めている汚染水を海洋投棄すれば、さらに海洋汚染が重ねられることになります。
ではこれまで海の汚染としてはこれらは確認されたことがないのでしょうか。
そう考えて調べてみると、すでに次のような報告がありました。

(4)トリチウムと健康との因果関係
平成23年9月12日に採取した、海水中に含まれる放射性物質の核種分析の結果を見ると、「福島第一1~4号機取水口内北川海水」から1リットルあたり470ベクレルのトリチウムが検出されています。
同じ場所で採取されたセシウム137が同100ベクレル、134が88ベクレルですので、セシウムよりもかなり多いことが分かります。
ただ東電はここでも、先に述べた「濃度限度」を強調し、セシウムより危険性がかなり低いことを強調しています。
トリチウムと健康との因果関係では、ガン、遺伝子・生殖への影響、発達異常、腫瘍など、低線量でも影響大と言われています。
トリチウムの危険性として、
①ガン、遺伝子への影響、発達異常、生殖への影響が含まる
②突然変異、腫瘍、細胞の死を生じさせる
③汚染された水は、脳及び生殖器の重さの深刻な減少に関連がある

と言われています。
東電は希釈した上で海洋放出を模索していましたが、漁業関係者を中心に反発が大きく実現は不可能だと思います。
このように、汚染水一つでも大問題になっています。
本当に廃炉なんて出来るのかと思えるような、気が遠くなるような永遠に続く作業が待っています。
一日に出る汚染水は400tと言われています。
多核種除去設備アルプスが使えないとなると、タンクをいっぱい造って永久に溜めておくしかないとは、あまりにも無策すぎます。
タンクにも耐用年数があります。
「事故なんて起こるわけがない」
「火力よりクリーンで安全」
こうして、利権の下に見切り発車して造った自民党政権が、今でも国民に支持されているなんて不思議でなりません。
福島原発の事故から2年が経過し、まだまだ健康を保っている人は多いと思いますが、トリチウムを含め、62種類の放射性物質の影響は年月と共にジャブのように効いてくると思います。
このような状況では、倒産寸前の東電任せにしないで、国主導での抜本的な対策工事をお願いしたいものです。
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