原発の再稼動と「活断層」

原発の再稼動について、「活断層」問題がずっと尾を引いています。

(1)原子力規制委員会について
まず、東京電力福島第1原発で起きたような炉心溶融(メルトダウン)など、過酷事故や地震・津波に対する原発の新しい基準づくりが原子力規制委員会で行われています。
この原子力規制委員会ですが、環境省の外局として設置される機関で、2012年に公布された原子力規制委員会設置法2条により、同年9月に発足しました。
この委員会は、国家行政組織法3条2項に基づいて設置される三条委員会と呼ばれる行政委員会で、内閣からの独立性は高いそうです(法2条、5条)。
そして、組織としては、委員長及び委員4人です(6条1項)。
委員長及び委員は、人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命しています(法7条1項)。
国会の同意を得る必要がありますが、当時はねじれのため得られていません。
但し、原子力緊急事態宣言発動中のため、設置法附則第7条第3項の例外規定に基づき、当時の総理大臣の野田さんにより初代として次の人たちが任命されています。
①委員長
田中俊一さん
工学者(原子炉工学)、元日本原子力研究所東海研究所副理事長、元 原子力委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
②委員
島﨑邦彦さん(委員長代理)
地震学者、東京大学名誉教授、元日本地震学会会長、元地震予知連絡会会長
更田豊志さん
工学者(原子炉安全工学、核燃料工学)、日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長
中村佳代子さん
放射線医学者、日本アイソトープ協会プロジェクトチーム主査、元慶應義塾大学医学部放射線科専任講師
大島賢三さん
外交官、元国連大使、元国連事務次長

(2)あいまいな今までの安全基準
1月22日には、原子力規制委員会は「活断層の上に原発の重要施設を設置してはならない」ことなどを明文化した新安全基準の骨子素案を発表しています。
私たちは、活断層の上に建てるのはもともと禁止だったのでは?と思っていましたが、現在の耐震安全性に関する安全審査の手引きには、「重要施設を活断層の上に建ててはいけない」という規定はないそうです。
書かれている内容としては、
「建物・構築物の地盤の支持性能の評価においては、次に示す各事項の内容を満足していなければならない。ただし、耐震設計上考慮する活断層の露頭が確認された場合、その直上に耐震設計上の重要度分類Sクラスの建物・構築物を設置することは想定していないことから、本章に規定する事項については適用しない。」
つまり、活断層の上に建てることは「想定していない」と書いてあるだけで、それを禁止してはいないとも解釈できます。
この基になっている耐震設計審査指針でも、
「敷地周辺の活断層の性質、過去及び現在の地震発生状況等を考慮し、さらに地震発生様式等による地震の分類を行ったうえで、敷地に大きな影響を与えると予想される地震を、複数選定すること」と書かれているだけで、「活断層の上に建ててはいけない」という規定はどこにもないそうです。
また、仮にそう書いてあったとしても、これは電力会社が発電所を建てるときの「手引き」にすぎないので法的拘束力はないそうです。
なんともいい加減な、自民党らしい言い回しかたです。

(3)現場を知らない原子力規制委員会の人たち
そして、「地震・津波に関わる新安全基準に関する検討チーム」の第8回会合が1月29日に開かれています。
これは、新しい基準の骨子案をとりまとめる最後の会合だったそうです。
この時の提案として、原子炉などの重要施設については、「将来も活動する可能性のある断層等の露頭が無いことを確認した地盤に設置すること」と、前回の案にはなかった「露頭」の文字が突然加わりました。
露頭とは、断層などが地表に表れたもので、活断層が真下にあっても、露頭が見られない場合もあります。
ある地質の専門家が、「(露頭が真下になければ)活断層が真下にあってもいいのですね」と聞いたそうですが、座長で規制委の委員長代理である島崎邦彦さんは「大丈夫です」と答えたそうです。
なんともいい加減な原子力規制委員会です。
私は、原発の再稼動にはもちろん反対ですが、先に紹介した人たちの顔ぶれを見たら、学者や研究者が中心で、だから「露頭が真下になければ活断層があっても安全」と答えられるのだと思います。
火力発電所のように、多少のトラブルが発生しても大きな問題にならない炉ならまだしも、原発は火力発電所とは違い、少しのミスで日本崩壊に繋がる危険な発電所です。
危険な事故の可能性を、現場も知らない大学教授や研究者などが作った安全基準で、新たに原発の新設を認めることもあり得ると言ってしまう安倍さんの思考にはあきれてしまいます。

(4)「活断層」と「地すべり」の議論
それにもう一つ、今再稼動中の関西電力大飯原発で、「活断層」か「地すべり」かのくだらない議論が続いています。
もし「活断層」なら、せっかく再稼動できた唯一の大飯原発をまた止めないといけないので、いろいろなところから締め付けもあるのでしょう。
大飯原発の敷地内を南北に走る「F―6断層(破砕帯)」について、去年の11月4日に調査団が会合を行い、「敷地内の地層にずれがある」との認識で一致したにも拘らず、「活断層」か「地すべり」かに見解が二分されたとして、その判断が先送りにされています。
そして、1月23日に、委員長である田中俊一さんの質問に答える形で、専門家調査団の団長役で原子力規制委員会の委員長代理である島崎邦彦さんは、「地すべりの可能性が強まった」との認識を示しました。
調査団の一人で、東洋大教授の渡辺満久さんは、「敷地内に活断層があることは確実であり、すぐに運転を停止して調査するべきだ」と主張していますが、それが普通の考えではないでしょうか?
「活断層」が疑われるところに、更に、非常時に原子炉の冷却用海水を送る重要施設「非常用取水路」が通っているます。
そして、この大飯原発については、「安全だから再稼動」としたとする政府見解は何だったのか?ということになります。

(5)「地すべり」は安全なの?
そして、「活断層」は危険で「地すべり」は安全と両極端な見解ですが、果たしてそうでしょうか?
「地すべり」は地質的不連続面、すなわち「すべり面」を境にして、すべり面上の地塊が移動する現象です。
すなわち、「地すべり」は地盤が高いところから低いところへ「重力ですべり落ちる」現象です。
移動の原因は地震もありますが、それだけではありません。
雪解けの時期や梅雨時、台風による豪雨などでも発生します。
地下水が急激に上昇した場合によく発生します。
動きは急激な場合もありますが、年間数mmから数cm程度の目に見えないほど緩やかなものもあります。
火山活動で生じた強度の低い堆積岩内や粘土層で生じるケースが多いとされています。
四国では、三波川帯の変成岩での岩盤すべりがよく見られます。
これに対して断層は、地下の地層もしくは岩盤に力が加わって割れ、割れた面に沿ってずれ動いて食い違いが生じた状態です。
極めて近い時代まで地殻運動を繰り返した断層であり、今後もなお活動する可能性のある断層を特に「活断層」と言っています。
大飯原発の「地すべり」がどの程度の規模なのかは把握していませんが、たとえどんなに小さくても、「活断層」が動くような大地震が発生した場合には、「地すべり」はそれよりも早く動くことは明らかで、加速度がついて、先に述べたような冷却用海水を送る重要施設「非常用取水路」などは瞬く間に破壊してしまうと思います。
まずは、こんな危険な大飯原発は直ちに止めるべきです。
そして、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)の報告書が共通して指摘しているように、東電福島第1原発事故の原因究明もまだ終わっていません。
国会事故調で指摘された、地震による損傷の可能性の問題も議論されていません。
私は、原発は必要ないと思っている国民の一人ですが、百歩譲って、国民の安全を最優先に考えるなら、性急な新基準づくりよりも、事故の原因究明に全力を挙げるべきだと思います。
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