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桜三里と千原鉱山

国道11号線で、松山を経て、東温市から西条市丹原町へ続く峠越えの道を「桜三里」と言います。
この桜三里の景勝地に「千羽ヶ岳」があります。
根引峠にある河之内トンネルを過ぎて「桜三里」をずっと下って千原地区の桜三里食堂があった広いカーブから左側を見ると、石鎚山の天狗岳のようにそびえ立っています。
標高は412mだそうですが、どこから登っても絶壁のように見える山です。

(1)千原鉱山の歴史
この付近には「千原鉱山」がありました。
「千原鉱山」は、「桜三里」の中山川河岸に存在していました。
中山川の川原に下りると上流に吊橋が見え、通行止めの標示があります。
ここを対岸に渡ると ここが旧千原鉱山の坑口です。
少し上に歩くと2箇所の古い坑口もありました。(国道側に2箇所 対岸に3箇所の坑口があります)
「千原鉱山」の開坑は古く、江戸時代初期と伝えられています。
「愛媛県東予煙害史(大正15年発行)」によれば、宝暦3年(1753年)の文書(壬生川町役場保存)に「千原銅山宿壬生川三津屋紛争し云々」とあるので、18世紀半ばにはすでに存在していたとされています。
近代的鉱山として形が整うのは、明治35年以降で、昭和初期までは中江産業により大々的に採掘と精錬が行われたそうですが、狭隘な山間での精錬は甚大な煙害を及ぼしたそうで、大正3年に当地での焼鉱過程は中止となっています。
戦後は千原鉱業として操業を継続し、昭和38年に休山しました。

(2)千原鉱山の地質
歴史もさることながら、「千原鉱山」の面白さはその地質にあると言われています。
この付近は東からまっすぐに進んできた中央構造線が、高縄半島を形成する巨大な花崗岩体に押されて南に撓んでいる場所で、地質図を見ても明らかです。
ここは三波川変成岩類に属していますが、変成の強い結晶片岩や紅簾石片岩を主体とし、その地層は、鉱床もろとも中央構造線に属する断層群によってズタズタにされています。
「千原鉱山」では、凄まじい断層や褶曲が坑道のあちこちに見られたそうです。
さらに花崗岩との境界には特殊な接触鉱床も見受けられ、ここの閃亜鉛鉱は、別子銅山や大久喜で普通に見られる産状とは異なり、スカルン鉱床と思しき鉱物も確認されているとされています。
スカルン鉱床(skarn deposit)とは、熱水鉱床の一種であり、石灰岩などの大規模な炭酸塩岩が発達する地域で、花崗岩などが貫入した際に発生する熱水により、交代作用が起こり、炭酸塩岩が単斜輝石や柘榴石などに置き換えられることがあり、これがスカルンです。
この付近には石灰岩の分布はありませんが、基盤岩は三波川変成岩類でも母岩は石灰岩質で、この中に粒状を為して連なる特異的な形態なのでスカルン鉱床が形成されたのでしょうか?
「愛媛の自然」によれば、鉱床自体も変成を受けていることが千葉大学の教授だった兼平慶一郎さんにより明らかにされました。
「千原鉱山」は、変成岩(三波川変成岩類)中に現れるキースラガー鉱床(層状含銅硫化鉄鉱床)ですが、これは海底火山などの活動にもたらされた熱水鉱床 の一種と考えられています。
「千原鉱山」でも、純度の高い黄銅鉱(銅の鉱石)黄鉄鉱が産出されていました。
この対極に属するのが、伊予富士の直下にある「基安鉱山」の隣にある「黒滝鉱山」です。
「基安鉱山」は、700mに及ぶ分厚い緑色片岩の地層内であるため、別子のような黒色片岩や石英片岩は見られず、その意味では比較的単純な鉱床であると言えますが、「黒滝鉱山」は、鉱床が結晶片岩の中に整合的に一枚に繋がっていて目立った層間褶曲や断層もみられず、キースラガー形成後の変成をほとんど受けない産状を残す貴重な鉱山として知られています。
10kmも離れていない同じ地域に両極端のモデル鉱床が共存しているところに愛媛の地質の面白さや奥深さを感じることができます。
しかし今日、「千原鉱山」「黒滝鉱山」とも、わずかに斜面に残るズリを除いては、その片鱗を伺い知ることのできるものは何も残っていないのは残念です。

(3)現在の千原鉱山
現在は荒れるにまかされています。
近年では、中予地域の水源確保として中山川ダム構想が浮上しましたが、「千原鉱山」の鉱毒水や廃坑の処理がクローズアップされ、環境問題にもなりました。
すでに消滅してしまった会社に撤去命令や賠償を課すこともできず、ダム建設計画も宙に浮いたままです。
「桜三里」は、街道沿いに8000本もの桜が植えられていましたが、この「千原鉱山」の煙害により枯れてしまったと言われています。
このような廃坑の持つ“負”の遺産を如何に解決してゆくかが今後の行政の大きな課題だと思います。


    
             国道11号線から見た千羽ヶ岳です。

 
千羽ヶ岳山頂より千原集落と国道11号線を見下ろします。
国道上の斜面は地すべりが顕著で調査ボーリングを数箇所行っています。
また国道下の擁壁は20年ほど前にクラックが見つかり、現在ではアンカー
工事を行っています。 
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