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LPGの水封式地下備蓄

愛媛県の波方基地で2010年完成予定のLPGの水封式地下備蓄について考えてみたいと思います。
計画では、地下150m以深にプロパン用貯槽2基とプロパン/ブタン兼用貯槽1基が建設される予定です。
水封式地下備蓄は、石油だと愛媛県の菊間をはじめ、岩手県の久慈、鹿児島県の串木野の3基地ですでに完成して利用されています。
LPGの水封式地下備蓄とは地下水圧により高圧状態のLPGを岩盤内に封じ込める方式です。
すでに完成している石油の貯蔵圧力は0.05MPa 程度であるが、プロパンガスを液体の状態で岩盤内に貯蔵するためには常温(20℃)で0.97MPa以上の圧力が必要となり原油のようには簡単にはいきません。
高圧のガスは閉じ込められた貯槽から岩盤内の亀裂を伝い、外部に流れ出ようとします。
本方式では漏気しようとする圧力より高い地下水圧によって漏洩を防止しなければなりません。
ただし、海外ではアメリカ·カナダ·イギリス·フランス·中国·韓国など12カ国で70箇所以上のLPガスの地下岩盤備蓄基地が建設され、海外では多くの実績のある技術であります。

愛媛県の波方基地は、高縄半島先端部から西方に伸びる東西約3km、南北約0.8kmの岬に位置し、波方ターミナル(株)に隣接しています。
この一帯の地形は標高135m 以下の山稜で、浸食により細かな沢地形を形成しています。
地質は、中生代白亜紀の領家花崗岩類における花崗岩、花崗閃緑岩が分布しており、一部に石英斑岩などの岩脈も認められます。
花崗岩は、風化の程度により、風化部、漸移部、新鮮部の3層に区分され、新鮮岩盤の一軸圧縮強度は100~150MPa(平均118MPa) 程度、平均透水係数は5×10-7cm/s程度です。
また、花崗岩の割れ目はNW-SE、NE-SW系走向で急傾斜がやや卓越し、北西部の石英斑岩は割れ目が多く、平均透水係数は2×10-6cm/s 程度を示しています。

水封式地下備蓄が成立するためには所定の地下水圧を維持することが重要となります。
貯槽掘削は発破を用いたNATM工法で行っています。
岩質は前述した花崗岩と花崗閃緑岩からなり、削孔には削孔誘導システム搭載の2ブーム2バスケットホイールジャンボを2台使用し、削孔長、削孔角度をコンピューター制御し、発破を行っています。
しかし、掘削によって地下水はトンネル内部に湧水となって染み出し、地下水位が低下します。
地下水位の低下は貯槽の湧水に直結し、ロックボルト孔削孔時に発生することが多く、1個所当りの湧水量が毎分0.5リットル程度でも水位の低下を招くことがあります。
地下水位や間隙水圧の低下が認められたときには掘削を中止し、止水グラウトを実施することになります。
水封ボーリングは地上からの高低差を利用して高圧の水を地山へ注入し、地下水位の低下を防ぎます。
貯槽内に染み出した地下水は排出されます。 

この「水封式地下備蓄」という方式は、鉄板などの内張をせずに素掘りのまま使用できるという、まさに自然を巧みに利用したシステムといえます。
主な利点としては次のことが挙げられます。
① 地下水面下の岩盤タンクにLPGが封じ込められているのでLPG流出の心配がない。
② タンク本体が岩盤で、かつ不燃性ガスで密封されており火災・爆発に対する安全性に優れている
③ 地下深い堅固な岩盤なので、地震の影響が地表より遙かに少ない
④ 広大な用地を要しないほか、掘削により生じた岩砕の活用が図れる。
⑤ 施設の大部分が地下にあるので自然環境をそこなわない

地下岩盤タンク方式の備蓄基地は愛媛県波方基地(45万t)の他に岡山県倉敷(40万t)でも実施しています。
工期は平成15年4月~平成20年12月だったのですが、平成19年に見直しを行い、平成22年12月に工期延長しています。
当初の事業費は862億円だったのですが、湧水対策費70億円(これが苦労した原因かも?)、欧州基準対応費30億円、環境対策費80億円が変更増になり、事業費も1,086億円に膨らんでいます。

2004年の資料によると、液化石油ガス(LPG)は、日本の総世帯の約55%に相当する2,500万世帯の台所や暖房などの家庭用熱源として、国民生活に不可欠なエネルギー源となっており、このLPガスの需要は、過去30年間で7倍以上に増加し、今後も増え続けると予想され、2010年度には2,300万tに達するとの見込みの数値によって計画されています。
日本のLPGの供給量は4分の3を海外からの輸入に依存し、その輸入量の約8割がサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの中東地域に集中し、このような情勢に対して供給の安定性を確保する観点から、年間輸入量の約50日分に相当する民間法定備蓄に加え、国家備蓄として2010年度までに年間輸入量の約30日分に相当する150万tを備蓄することが、当初の計画で、この中の波方基地での備蓄は45万tとなっています。

ただし、2004年の見込みと違い、2010年度(今年)の需要は1,677万tで、2014年度予測でも工業用・都市ガス用需要の増加などにより1,783万tとしています。
今年の需要と2004年の見込みとの差は623万tです。
水封式地下備蓄という計画案そのものを否定する気はないのですが、では、莫大な国家事業で150万tを備蓄する意味はないのかな?と考えてしまいます。
道路計画にも似たような見込み数値が存在しますが、この計画でも当初の見込み自体が、国家事業を進めるためのものだったのでしょうか?
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