愛媛県岩城島の杉石と片山石

瀬戸内海のほぼ真ん中にある愛媛県越智郡上島町の岩城島にはエジリン閃長岩が産出されます。
そして、このエジリン閃長岩からは、「片山石」と「杉石」の2種の新鉱物が発見されています。

まず「杉石」ですが、九州大の杉健一さんと久綱(くつな)正典さんという学者が最初に気づき、1942~43年に岩城島で現地調査をして、1944年の学会誌にユーディアル石の鉱物として発表したのが始まりです。
杉さんは1948年に他界しましたが、杉さんの研究を引き継いだ山口大の村上允英さん(九州大出身)が、X線回折パターンから大隈石-ミラー石グループの構造を持つことをつきとめました。
それは1964年のことで、まだ成分の明らかでないこの石を、その当時村上さんは「岩城石」と呼んでいます。
リチウムを含む可能性に思い至り、正しい化学組成を見出すまでに、さらに10年経っています。
そして、新鉱物である「杉石」がIMAに申請されたのは1975年で、その年にはちょうど南アフリカで紫色の「杉石」が発見されています。
岩城島の次にはインドで発見されています。
1955年にインド中部のマディヤ・プラデシュで、マンガン鉱の中からピンク色の結晶が見つかりました。
しかしこれが「杉石」と分かるのはずっと後のことになり、南アフリカ産の石が「ソグド石」と誤認され、再分析の結果これが「杉石」と判明し1977年に認定されています。

「片山石」は、杉さんと久綱さんによって、斜灰れん石とされていたものですが、村上さんらは「杉石」を研究する過程で新鉱物を発見しました。
ちょうどその頃、タジキスタンのアルカリ閃長岩中によく似た鉱物が見つかり、1975年ソ連の岩石学者ラウフ・B・バラトフから「バラトフ石」(Baratovite)と命名されました。
「片山石」は1983年に申請され、承認されました。
命名は東京大学教養学部を退官した後、村上さんの出身大学である九州大学の教授となった日本の鉱物学者、片山信夫さんからきています。
当初から「バラトフ石」は「片山石」に類似していましたが、村上さんらの原記載論文での両者の違いは、「片山石」は三斜晶系、「バラトフ石」は単斜晶系であること、「片山石」では水酸基がフッ素基より多く、ジルコニウムがチタンを置換していないことが挙げられています。
ところがその後、1992年に「片山石」は「バラトフ石」と同じ単斜晶系であるとの構造解析が発表されました。
一方、「バラトフ石」は記載と異なり、フッ素基より水酸基を多く持つことも分かってきました。
現在では、「片山石」は「バラドフ石」と同一のものであるとする考えが優勢です。
今のところ国際鉱物学連合の新鉱物および鉱物名委員会には正式な提案がないのですが、すでに1999年に出版されたJ. A. Mandarino著のFleisher's Glossary of MINERAL SPECIESには「バラトフ石」の名はありますが、「片山石」の名は掲載されていません。
近い将来、「片山石」は「バラトフ石」と同一のものとして、その名前が抹消されてしまう可能性も指摘されています。



杉石と片山石 -愛媛県越智郡岩城村船越産
(杉石は灰褐緑色/片山石は白色粒、蛍光して青色
/黒色はエジリン)

杉石
    エジリン閃長岩の中の杉石と片山石
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