八箇峠トンネルの事故原因

2012年5月24日の10時30分頃、新潟県南魚沼市欠之上の八箇峠トンネル(南魚沼工区)の現場で、爆発事故があり、4人が死亡しました。
当ブログでも、この時の様子を「八箇峠トンネルでの爆発事故」と題して説明しています。
http://ntooffice.blog21.fc2.com/blog-entry-1327.html 

(1)事故原因の推定   
あれから一年近く経過し、原因究明もなされました。
あの当時は、工事を請け負った佐藤工業の広報担当者が取材に対し、「事故の当日、従業員はガス探知機を携帯せず、トンネル内に入った」と認め、マスコミもずいぶん騒ぎました。
その当時の原因として、「昨夏の豪雨と冬期休止のため、工事は約10カ月間中断し、坑内に滞留したガスが、引火爆発したのではないか」ということでした。
地層からしみ出すガスは少量ずつなので、通常の工事は換気などを行いながら進めれば問題ないのですが、八箇峠トンネルの事故は10カ月の中断後の再開なので、中断中に少しずつガスが充満した可能性が高いのではないかと推察され、ガスが充満しているかどうかの点検自体は簡単だが、工事再開の際にそういう意識を持って点検できていなかった可能性があるとの結論だったと思います。
でも、この後公開された「八箇峠トンネル事故に関する調査・検討委員会」などの情報を整理してみると、
①爆発時トンネルの切り羽は、坑口から1.4㎞でした。
②但し、4人の作業員の遺体が確認されたのは、1.3㎞の位置で、100mのズレがあります。
③工事中止前は、毎日ガス検知を行っていましたが、異常は検出さませんでした。
④事故前日も切り羽迄点検していますが異常はありませんでした。
⑤事故が発生したのは5/24午後8時頃です。
⑥通常トンネルは二方交替で作業していますが、死亡した作業員は2番方と思われます。
⑦番方交替が何時かは知らないのですが、一般には昼前後です。
⑧1番方は問題なく施工出来ています。
⑨2番方も問題無く切り羽に入っています。
⑩これによると、番方交替から事故発生までの数時間の間に、切り羽に何らかの異常が発生したものと推定できます。
⑪異常が発生したあと、作業員は慌てて退避し100mほど走った時点でガスが引火爆発したと推察できます。

(2)八箇峠トンネル付近の地質
まず、八箇峠トンネル付近の地質ですが、八箇峠トンネルは魚沼丘陵を横断するトンネルで、この付近の最高点は標高682mの中将岳です。
トンネルの最大土被りは約250mで、トンネル付近の地質は、地表では魚沼層上部の礫岩が広く分布していますが、その下位には和南津層(わなづそう)と、西山層が伏在しています。
そして、和南津層と魚沼層の境界付近、上下40mの岩相は極端に細粒分の含有率が少なく、トンネル切羽が流動化しやすいという特徴があります。
これらの地層は緩く褶曲しているため、和南津層と魚沼層の境界がトンネルにどの程度出現するかが、施工前から問題だったそうです。
八箇峠トンネルは、延長9.7kmの八箇道路の一部で、当初は、完成4車線で計画されていましたが、2003(平成15)年に見直しが行われ、有毒ガスが発生し膨張性地山である西山層を避けるルートに変更され、完成2車線の道路として施工されていました。
つまり、トンネルルートの標高を上げて西山層を通過するのを避け、トンネル延長も約5kmから約3kmへと変更されています。
それだけでなく、2006(平成18)年にトンネル中間部で100mを超える追加調査ボーリング3本を行い縦断図を作り直しています。
このボーリングの主な目的は,和南津層と魚沼層の境界がどのようにトンネルに出現するかを把握することであったとされています。
ルート見直しによってトンネルに出現する地質は、西山層より上位の和南津層と、さらにその上位の魚沼層だけになり、可燃性ガスが発生する危険性は小さくなったとの見解でした。
トンネルに出現する和南津層は、細粒~中粒砂岩で、魚沼層は礫岩です。
施工前の調査では、和南津層、魚沼層とも地山等級は DI で,両層の境界付近が「不安定領域」として DII とされていました。
今回の事故との関連で注意すべき点としては、爆発が起きた南魚沼市側の坑口から約1.2km付近のトンネル下部に西山層がドーム状(平面的には多分,背斜構造)に分布していると予想されていたそうです。
西山層中の可燃性ガスが、背斜構造の頂部に集まると言われていました。

(3)当時の施工状況の推察
次は、施工状況の推察ですが、地山が魚沼層群ということで、先受けボルトを入れたと思われます。
通常のNATMなら精々4m程度ですが、最近は施工効率を上げるために長尺ロックボルト(AGF)を使うことが多く、一般的には10m程度ですが、場合によってはアンカー並の20mもあります。
こういうロックボルトの場合、穿孔によって、奥にある地下水や天然ガス溜まりを貫くケースがあります。
これにより、水圧やガス圧を軽減出来るので、補助工法にも利用できる利点もあります。
今回のケースは、AGFの穿孔が坑奥部にある天然ガス埋蔵層を抜いてしまったのではないかと推定されます。
先に述べたように、可燃性ガスは背斜構造の周辺に貯留されます。
西山層だけでなく、魚沼層群も向斜・背斜を繰り返す複背斜構造が特徴です。
こう考えると、事故区間が背斜構造に掛かっていた可能性があり、事故発生地点周辺の地形は、急に標高が高くなっているとの報道があり、つまり、トンネル土被りが大きくなることによって、地質的には背斜構造の可能性が高くなり、この結果ガス圧も高くなると想定されます。
新潟大名誉教授で地質学専門の立石雅昭さんの話だと、新潟は国内有数の石油・天然ガスが埋蔵されており、特に中越から上越にかけて天然ガスを含む地層が多数分布するそうです。
2008年7月にも上越市の天然ガスパイプライン掘削工事現場で爆発事故があったそうです。
こう考えると、長期の切り羽停止で坑内に滞留したガスが、引火爆発したのではなく、突発性ガス噴出の可能性が高いと思われます。
このような状況では、ガス探知機を携帯したとしても防ぎようにない事故だったと思えます。

 

【工事概要】
工事件名: 八箇峠トンネル(南魚沼工区)その2工事
工事場所: 新潟県南魚沼市欠ノ上地先
発 注 者  : 国土交通省 北陸地方整備局
施     工 : 佐藤工業株式会社
契約金額: 2,320,500,000円
工     期 : 平成21年9月30日~平成24年12月21日(当時)
契約延長: 1,628m
掘削延長: 1,434m
掘削工法: 上半先進ショートベンチカット工法
進 捗 率  : 88.2%(平成24年4月現在)

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