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最近の地下水調査について

最近の地下水調査について調べてみました。

1.はじめに
地下水に関連する問題は、理学.農学.工学.人文学の分野にわたり.きわめて幅広い分野にわたっています。
すなわち、
・地下水の産状や分布を探究する地質学
・水と岩帯や帯水層との相互関係を究明する地球化学
・水の循環から地表水と地下水の関連を解明する水文学
・潅概用水の量と土中水の関連を求める潅概工学
・地盤掘削の際の地下水処理工法を探究する地下水工学
・地下水の湧水地と都市の発展を考える人文地理学
等、多種.多様な社会的ニーズに対応した課題や研究テーマが地下水問題には含まれています。
これらのうち.理農工学における地下水に関連する諸問題を整理すると次の項目が挙げられます。
(1)広域地下水
 (a)水資源探査
 (b)地下水保全
 (c)地盤沈下
 (d)地下水汚染
 (e)温泉源
 (f)涵養源
(2)地盤および構造物の安定問題
 (a)掘削地の安定
 (b)堤体.ダムの安定
 (c)斜面の安定
 (d)トンネル.地下空洞の安定
 (e)凍上
 (f)地震時の液状化
(3)エネルギー問題
 (a)石油備蓄
 (b)天然ガス備蓄
 (c)圧縮空気の貯蔵
 (d)温水.冷水の帯水層貯蔵
 (e)地熱発電
 (f)放射性廃棄物の地層処分
(4)地球化学
 (a)地下水の年代測定
 (b)岩石中の水
上記のように、地下水に関する課題は.大きく4つのテーマに分けられます。.
ここでは.これらの諸問題の中に含まれる具体的な課題を考察し.その課題と地下水調査との関連について述べ、最近の新しい調査法や計測技術の動向について考えてみました。

2.地下水間題と調査の意義
2.1.広域地下水での課題
(1)水資源.涵養源
地下水と人類の関係は地下水を水源として利用しているところにあります。
地表水は処理しなければ飲料できませんが、大半の地下水は直接飲料水になります。
したがって水源としての地下水はきわめて重要な存在です。
.地下水の水源としての探査は.地下水調査の原点です。
地下に存在する見えない地下水脈を探査する方法として.昔は柳の枝を用いて調査したりしていましたが、その後.岩盤の破砕帯中の地下水や、水脈中の地下水を探査するために電気探査が用いられ、さらにRIを探査することによって地下水脈を測定する方法、そして.地下水温.比抵抗トモグラフィーなどが用いられ、3次元の水みち探査が可能になりつつあります。
また、きわめて広域の地下水調査法としてリモートセンシングも有力な方法となっています。
地下水の涵養源の調査も水資源として、地下水を用いる場合にその量の把握のため重要な項目である、涵養された地下水がどのような経路をどのような速度で浸透して行くかを知るための一手法として、地下水の水質調査が行なわれています。
そして.地下水の同位体分析法がこの分野での有効な方法となってきています。
(2)地下水保全
地下水保全は、地下水の環境保全であり.水資源としての地下水の量および質の保全と地表の生物に対しての地表水の水源として地下水保全が考えられます。
したがって.地下水保全の中には地下水位(水頭)低下による地盤沈下防止や地下水汚染防止も含まれ、人為的な行為が地下水にどのような影響を与えるかを予測することを考えなければなりません。
このような地下水の量や質の変化を予測するためには、次のような項目が既知でなければなりません。.
(1)量の変化の予測
 (a)地盤の層構二成(帯水層問の連続性と層厚分布)
 (b)各層の飽和・不飽和浸透特性
 (c)境界条件
 (d)平面および鉛直方向の浸透特性の分布
 (e)平面および鉛直方向の地下水分布とその変動
 (f)年間降雨
 (g)地下水利用状況
 (h)河川および水路の水位変動と地下水位との関連
 (i)平面および鉛直方向の地下水の流向と流速分布
 (j)気圧変動
 (k)地表の土地利用状況とその変遷
(2)質の変化の予測
 (a)平面および鉛直方向の地下水の水質分布とその変動
 (b)地盤構成鉱物の組成分布
 (c)水質に関する境界条件
 (d)地中の物質移動に関する物性
 (分散係数.拡散係数.吸脱着係数)
 (e)地下水の浸透状況
この中の各項目は地下水調査.あるいは地下水を有する帯水層調査として従来より行なわれている項目もあります。
従来は、このような広域の地下水の調査結果より定性的な地下水挙動の説明のみが行なわれてきました。
.しかし、1970年代より開発されてきた数値解析によるシミュレーション技術により.広域地下水の調査結果より地下水の挙動をある程度.定量的に予測できるようになってきています。
また、逆に.地下水の水位(水頭)変動や水質分布から、帯水層の浸透特性や物質移動特性が推定できるようになり、地下水調査の重要性が一層高まっています。
地下水を保全するには.地下水の利用の規制だけではなく、地下水の涵養源の保全もきわめて重要であり、今後このような地下水の源から流末(海.湖.河川)までの一貫した調査が必要です。.
(3)地盤沈下
地下水の過剰利用により地下水位(水頭)が低下して、地盤沈下が発生しました。
.しかし、その後の地下水の揚水規制等により地下水位(水頭)が回復し、我国の地盤沈下は一部の地域を除いて消滅したと言えます。
しかし.揚水によって.どの程度の地盤沈下がどれほどの速度で生じるかを予測できるような正確な調査がなされた例は少ないと思います。.
また、たとえそのような調査がなされても三次元的な地下水の挙動と地盤(粘土層)の変形を予測する方法はそれほど一般的ではありません。
すなわち.帯水層と粘土層を含んだ広域的な三次元浸透解析と粘土層内での有効応力の増大による圧密解析とを連成させる
必要があります。
その際の調査として.粘土層を対象にした圧密試験を室内で行ないますが、これも層全体に対しての代表値を求めることは困難です。
地盤沈下の速度を予測するためには、圧密に対する原位置調査法の確立とともに、簡易な解析手法の開発が必要となります。
(4)地下水汚染
地下水汚染は、地下水の水質保全のところで触れましたが、汚染の現状を調査するだけでも大変な課題です。
.しかし.地下水の汚染の広がりや汚染源の推定あるいは除染の効果の予測を行なうため、汚染の実態調査だけでなく.その移動に関係する物性の調査方法を確立しなければなりません。
すなわち.汚染原因の発生直後に影響のみられない飲料用の井戸水に.数日あるいは数年後.汚染が生じる可能性もあるために動的な調査が必要となります。

2.2.地盤および構造物の安定問題
(1)掘削地の安定
地下水位(水頭)の高いところでの掘削工事では、地下水をどのように処理するかが工事の成功.不成功を支配すると言っても過言ではありません。
掘削地への湧水量あるいは地下水位(水頭)を低下させるための揚水量を予測することは、今日では数値解析によってきわめて簡単になっているため、解析には、それに対応した調査が必要です。
調査の内容は広域地下水の調査法とほぼ同じですが、.地下水位(水頭)低下のための揚水井の揚水能力や地下水位(水頭)を維持するための復水井の復水能力を調査したり、井戸干渉、井戸効率等を定量的に把握しておく必要があります。
掘削地近傍では地下水が山留めを迂回浸透するため.水平方向の透水係数だけでなく鉛直方向の透水係数も知っておく必要があります。
また、広域地下水に関連する問題ですが、完成した地中構造物が地下水の流況を阻害する可能性や、そのような地下水災害を防ぐための地下水保全工法の効果などを確認する調査法も必要となってきています。
(2)堤体.ダムおよび斜面の安定
堤体.ダムおよび人工斜面の浸透水に対しての安定評価は、現時点ではまだまだ正確には行われていません。
堤体内に水が浸透して堤体のせん断強度が弱くなるために破壊が生じますが、堤体内の浸透を支配する浸透特性の中で不飽和浸透特性を原位置で測定する方法が確立されていない.現在では、盛土の飽和透水係数を測定する方法だけが用いられています。
.これは.ダムや人工斜面についても同じです。
安定を論議するための力学に関する調査は皆無に等しく、室内で締め固めた試料のせん断試験だけが行われているのが現状です。
また.堤体や斜面の構造上の弱点を調査するために浅層のレーザートモグラフィーが利用されつつあります。
(3)トンネル.地下空洞
トンネルや地下空洞への漏水や空洞の安定に関する地下水圧を対象とした地下水調査として.地山内の地下水圧分布と岩盤を対象とした透水試験が用いられています。
岩盤は土のような多孔質媒体とは異なり、亀裂や破砕層が存在するため、不均質で異方性に富んだ場を有しています。
このような岩盤の特性を調査して.浸透特性の中に考慮しようとする研究もなされていますが、まだまだ一般的ではありません。.
トンネル内への地下水の挙動は3次元浸透現象であり、3次元の飽和・不飽和浸透解析(西垣,他,1990)が適用されますが、正確なモデルを作成するまでの詳細な地盤調査が行われた例があまりありません。
しかし.詳細な調査技術が開発されると、トンネル掘削以前に揚水量や、地下水位(水頭)の低下状況、あるいは水抜き孔の効果等が予想できるようになり、今後それに従ってトンネルの設計.施工がなされるようになると考えられています。

2.3エネルギー問題
エネルギーに関連する地下水問題は、近年重要な研究課題になっており、この分野での調査法はめざましい進歩をとげています。
岩盤を対象とした地下水調査では.深度500m~2000mの深部岩盤を対象とした透水性や水質の調査が行なわれようとしています。.
検討事項と調査項目を整理すると下記のようになります。
(1)検討項目
 (a)石油の漏洩防止
 (b)天然ガスの漏洩防止
 (c)圧縮空気の漏洩防止
 (d)地盤の保温性
 (e)熱の回収性
 (f)廃棄物の漏洩防止
(2)調査項目
 (a)岩盤の透水性
 (b)非混合流体の挙動
 (c)圧縮気体と地下水の共存による挙動
 (d)地盤の透気性
 (e)地盤の熱伝導性
 (f)2相混合流体の挙動
 (g)密度差のある2相流体の挙動
 (h)移流.拡散係数の計測
 (i)割れ目の目詰め方法
 (j)岩盤割れ目内の物質移動特性
 (k)岩盤割れ目の分布
備蓄のための空洞掘削の際の湧水量の予測と地下水圧(水頭)低下工法の設計には、地山の浸透特性と境界条件.初期の地下水位分布などが必要となります。.
また、備蓄した石油やガスの漏洩のコントロールを地下水によって行なっているため.岩盤の透水性をきわめて正確に把握しなければなりません。
.また.岩盤の透水係数が大きいところでは、泥水などにより透水係数を低下させる方法を用いますが、その効果を定量的に評価して水封機能を満足することが必要です。
放射性廃棄物の地層処分では.マクロな岩盤の割れ目の評価に電磁波トモグラフィーや比抵抗トモグラフィーの技術が応用されています。
また、この分野での岩盤の調査技術が.一般の土木・建設に応用されるようとしています。

3.新しい地下水調査・計測技術の動向
(1)水源調査
地下水調査の中で水源調査(探水調査)に関してはリモートセンシングによる技術がきわめて大きく進歩しています。
この技術により砂漠の中の400m以深の古代の地下水源が発見されたりしています。
また、狭い地域での地下水の流動調査法としては.1m深地温測定.比抵抗.電磁波によるトモグラフィー技術によって「水みち」を調査するようになってきています。
このように.地下水の調査は.Darcyの法則のような平均的な地下水の流動の調査ではなく、地盤(帯水層)をマスとして見て.その中のどこを地下水が浸透しているかを調べる技術へと移行しています。
これは.多くの調査データーがコンピューターにより処理され、系統的に図化できるようになってきたことと関係があります。
(2)地下水位(水頭)調査
地下水位(水頭)の調査も、観測井を設けていた調査から観測井内に高精度の間隙水圧計を深さ方向の複数点に設置し、多層地盤内の各層の水位(水頭)変動を経時的に収録できるようになってきました。(猪瀬,他,1990).
これは.間隙水圧計の精度が良くなったことと、マイクロコンピュータによる膨大なデータ収録が可能になったことによるものです。また.観測井内で地下水の流向流速が計測できるようになり、地下水位の等水位曲線の精度が一層良くなってきました。
この単孔を用いた地下水の流向流速の計測は我国独特の調査技術であると思われます。.
(3)帯水層調査
地下空間利用が計画され.50m以深の地下掘削が設計施工される際に、帯水層は一層ではなく複数層存在することが多く見られます。
このような複数層の浸透特性を計測する技術が必要となり、確立されようとしています。
また、帯水層の層厚の算定に比抵抗トモグラフィーが併用され、帯水層内の透水係数の異方性を測定する方法も開発されてきました。
また、揚水試験にもマイクロコンピュータと間隙水圧計が用いられ、試験中に結果が判定できるようになってきています。
単孔式透水試験法の技術も岩盤を対象として確立され、種々の高度なテクニックが未固結地盤の調査にも適用され.1.0×10"icm/secのような大きな透水係数も計測できるようになってきました。
また.山留めの止水効果の確認のために揚水試験を行って.地下水にインパクトを与えて.その反応を観測井で計測して、その水位の分布より逆解析を行う調査が実施されています。(福原,他,1988).
この方法は薬液注入の止水効果の確認にも応用できる方法です。
また、工事中の地下水低下防止や地中構造物による流況阻害防止のための復水工法の設計のための帯水層調査も行われようとしています。
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