NHKの生番組『解説スタジアム』での原発批判

愛媛県では、伊方原発の再稼動が始まっています。
「何故原発再稼動なのか?」というどうしようもないイライラ感が湧き上がってきますが、8月26日深夜、NHKの生番組『解説スタジアム』で解説委員の7人の委員のうち6人が政府の原発政策を徹底批判していました。

最近でも、福島第一原発は、台風のたびに地下の汚染水の水位が上昇し、流出の可能性が指摘されています。
実際、すでに護岸近くの汚染地下水の水面が、地上まで十数センチに迫っているという報道もあります。
安倍さんは、「アンダーコントロールしている」と言っていますが、福島の事故でさえ何も解決していないことは周知の通りです。
そんな中、NHKで生放送された討論番組『解説スタジアム』ですが、その日のテーマは「どこに向かう 日本の原子力政策」でした。
NHKの7人の主要解説委員が、日本の原発政策を多角的に議論するという番組です。
この日の出席者は、司会に解説委員長の西川吉郎さん、以下、島田敏男さん、板垣信幸さん、関口博之さん、竹田忠さん、水野倫之さん、髙橋祐介さんという解説委員たちでした。
内容は、原発再稼働の是非や核のゴミ問題、そして原発の将来像などかなり踏み込んだものでしたが、もっとも鋭く切り込んでいたのが、財政・金融・エネルギー担当の板垣さんでした。
番組がまず指摘したのは、各地で相次ぐ再稼働の可否そのものであり、原発の安全性についてでした。
これについて板垣さんは、再稼働の基準の甘さを指摘したうえで、「再稼働は認めたくない」とまで断言していました。
「たとえばアメリカの基準のなかには避難計画がちゃんと入っています。で、日本の避難計画は自治体に丸投げ。こんな甘い基準はないと私は考えているんですね。ですからこういう安易な再稼働は、僕は認めたくないと思っています。(略)日本を見ればですね、地震、津波、火山の原発リスクの三大要点が揃っている日本がですね、やっぱり原発に多く依存するのは問題だと思うわけです」
8月12日に再稼働した愛媛県の伊方原発も、地震と津波についてのリスクが非常に高く、避難計画のずさんさが指摘されています。
私も愛媛県に住んでいるのでよくわかりますが、伊方原発は佐田岬半島の入り口、付け根部分に立地していて、その先の半島部分には実に5000人もの住人が生活していることから、もし事故が起きたとき、住民の避難が事実上“不可能”になります。
船で大分県へ逃げる避難訓練を時々テレビでやっていますが、どこまで機能するのか疑問です。
だが、NHKの解説委員がここまで突っ込んだ発言をするのは異例のことでした。
しかも、原発の問題点を指摘したのは、板垣さんだけではありませんでした。
社会保障・経済担当の竹田さんは、そもそも規制委員会が原発の安全性について保証をしていないことを問題にしていました。
「原子力規制委員会の田中(俊一)委員長は会見のたびによく何を言っているかというと『安全性を保証するものではない』。明確に何度も言うんですよ。規制委員会は基準に適合したかどうかを審査しているのであって、安全性を保証するものではないと何度も言っているわけです。じゃあ地元住民はどうすればいいんですか? ようするに電力会社はそこでどんどん再稼働の動きを進める。規制委員会が安全性をきちんと審査してそれにお墨付き付けたと思ったら、いや、規制委員会は安全性は保証しません、と。そうすると地元住民はそれでは(高浜原発訴訟のように)裁判所に判断してもらうしかないじゃないか。こうなるわけですよね」
そして、科学分野が専門の水野さんも、これに強く同意したうえで、政府の責任に踏み込んでいました。
「規制委は『じゃあ審査しろ』と言っても(それは)我々の仕事じゃありません、と。その法律の枠組み上そうなっていない、と言うんですね。だったらその法律を変えればいいんですけれど、その枠組みを変えようという動きが政府からも規制委からもどこからも起こらない」
規制委員会は安全を保証しない。
政府も動かない。
では一体誰が再稼働の、そして事故の責任をもつのでしょうか。
板垣さんも重ねてこう疑問を投げかけていました。
「これまで政府はなかなか自分たちが仕切るとは言わなかったけれど、政府として責任を取るという言葉を吐いたことはあるんです。だけれども責任ってどうやって取るんでしょう? いまの福島の第一原発の惨状を見てて、お金を渡せば責任を取ったことになるのか。ならないわけですよ。災害関連死の人も沢山いるわけですから。そういうことが起きたら責任を取れないのに責任を取ると強弁することこそ問題なのであって、むしろそういうことじゃなくて、きちっと現状を説明して、こうなったらこうしますと説明をしないからいけないんだと思いますね」
板垣さんはさらに、コストの面での欺瞞(ぎまん)についてもこう暴露していました。
「なぜいま原発を再稼働するかというと、原発はいま再稼働したら、非常に安く電気がつくれます。それはなぜかと言うとですね、裏側にあるコストが入っていないからです。(略)原発はこの60年間で国家予算で15兆円つぎ込んでいるわけですよ。現在価格でいえば45兆円くらいです。それからいま、事故の対応でも9兆円使っている。こういうことですと、コストが一体安いのか、いや安くはないんだということにならざるを得ないわけですよ」
「(こうした)裏負担を国民は知らないうちにずっとやってきたし、(事故対応の)9兆円の枠も使ったらそれは(今度は)電気料金で(国民から)取るんですよ。つまり、これから原発事故要因で電気料金が上がってくる。だからいま、再生可能エネルギーで料金が上がっているなんて理屈も一方でありますけど、原発で上がってくる分も相当大きいってことを、やっぱり知っておく必要がある」
実際、時事通信によれば、福島原発事故収束への国民負担額は、2015年度末までに4兆2660億円に膨れ上がり、日本の人口で割ると一人につき約3万3000円になることが明らかになっています。
東電は政府にさらなる支援を求めており、中間貯蔵施設に1兆1000億円が支出されることになっていますが、これは電源開発促進税の名目で電気料金に含まれているものです。
つまり、巨額の税金が事故後の処理で使われたうえに、さらに消費者の電気料金に上乗せされているのが現状です。
番組ではほかにも、40年を超えた老朽原発に対する運転延長決定、避難前提となる電力会社や政府による情報公開の不備など、さまざまな問題が指摘され、地元住民の安全など二の次というずさんさや、政府と規制委員会、そして電力会社の無責任ぶりが炙り出されていきました。
そういう意味では、日本のテレビで原発の問題点をもっとも正確に指摘した画期的番組でした。

NHKはもともと電力会社への広告依存がないため、原発については民放よりも踏み込んだ報道をしてきました。
しかし、「政府が右といえば右」という安倍応援団の籾井勝人さんが会長の椅子に座って以降、政権に批判的な報道はめったにできなくなり、原発についても問題点を追及するような報道はほとんどしなくなっていました。
それがどうして、ここまで踏み込むことができたのかというと、「いちばんの理由は、この放送が上層部が厳しくチェックできる録画ではなく生放送だったということでしょう。しかも、籾井会長が来年1月の会長選で再選されることなく交代する可能性が高くなって、恐怖支配が少し緩くなっている。その間隙をぬって、良識派の解説委員たちが勇気ある発言をしたということでしょう」とのNHK関係者の分析です。
もちろん、こうした番組が放送されたからといって、NHKの状況はけっして楽観できるものではないそうです。
今回の『解説スタジアム』にはたまたま良識派が数多く顔を揃えたのですが、報道局幹部や解説委員の多くは、籾井会長の動向にかかわらず、政権の顔色をうかがって官邸に尻尾をふり続ける“安倍政権の犬”のような連中がほとんどだそうです。
今回の番組でも、“安倍首相とマスコミ幹部の会食会”の常連で“島田スシロー”の異名をもつ島田敏男さんは、原発の問題点を指摘するどころか、ほとんど議論に参加しようとしませんでした。
唯一、高速増殖炉「もんじゅ」については「結論からいうと、高速増殖炉の事業はもう辞めるべきだ」と発言していましたが、実はこれも、政府の「もんじゅ」廃炉の方針転換を知って先取りしたのではないかと言われています。
「しかも、島田氏は番組の最後に原子力政策についての考えと提言を聞かれ、今回のテーマとはほとんど関係のない、テロ対策の必要性を力説していた。これも、安倍政権が9月の臨時国会で成立をめざしている共謀罪を意識してのものでしょう」との全国紙政治部記者の話です。
しかし、それでも、今回の番組はNHKに安倍官邸の恐怖支配に屈しない良心が残っていることを証明したと言えると思います。
解説委員7人のうち、島田敏男さんを除く6人が政府や原子力規制委員会、そして電力会社の問題点を徹底的に批判していたことは勇気のあることだと思います。
さらには「原子力再稼働を認めない」という驚きの発言まで飛び出し、そのためネット上でも「国民必見」「解説委員の勇気か反乱か!」「NHKはまだ腐っていなかった」など絶賛されています。

原発の事故は、発生したら取り返しのつかないことになるのは福島第一原発で周知の通りです。
再稼動なんかもってのほかで、一日も早く廃炉にすべきで、また、日本政府が率先して「原発のない世界へ」とスローガンを掲げるべきだと私は思っています。
原発で事故があれば、森林伐採なんかより数十倍や数百倍も早く地球に住めなくなる日が近づいてくることを世界のリーダー達はわからないといけないと思います。
スポンサーサイト
最新記事
カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム
QRコード
QR