既製杭および場所打ち杭工法の分類および比較

杭の工法による分類および比較を行いました。

(1)打込み杭工法
打込み杭工法は、ハンマの打撃力により既製杭を地中に打込むもので、施工速度が速く、施工管理が比較的簡単な反面、騒音・振動が発生して建設公害の一つとなっています。
1)打撃工法
主として、ディーゼルハンマ、ドロップハンマにより、下穴を用いる事なく、初めから終わりまで打撃力によって既製杭を打ち込む工法です。
①長所
・最も安定した支持力を得ることができます。
・既製杭のため杭体の品質は保証されています。
・施工速度が速く、施工管理が比較的容易です。
・小規模工事でも割高になりません。
・打止め管理式等により、簡易に支持力の確認が可能です。
・残土が発生しません。
②短所
・ハンマーで打ち込むため、他工法に比べて、騒音、振動が大きくなります。
・コンクリート杭の場合は、径が大きくなると重量が大きくなるため、運搬、取扱いには注意が必要です。
・所定の高さで打止りにならない場合は、長さの調整が必要となります。
・時として周辺地盤に振動が伝わることがあり、地盤変位によって構造物に被害が発生することがあります。
・厚い砂層・粘土層では、コンクリート杭の施工は困難になって層を打ち抜けず、杭が破壊することがあります。
2)バイブロハンマ工法
バイブロハンマ工法は、偏心重錘を持つ回転子を左右一対にし、回転方向を逆にして回転させることによって水平方向の遠心力を相殺し、上下方向の力のみを回転数と同じ周期で生じさせ、その往復運動によって杭全体を上下に振動させて打込む工法です。
①長所
・既製杭のため杭体の品質は保証されています。
・施工速度が速く、施工管理が比較的容易です。
・打込みと引抜きの両方ができます。
・杭の頭部を傷つけません。
・小規模工事でも割高になりません。
・打止め管理式等により、簡易に支持力の確認が可能です。
・残土が発生しません。
②短所
・他工法に比べて、騒音、振動が大きくなります。
・現場条件によりヤットコ施工に制約があるため、ヤットコを用いる場合は事前の検討・確認が必要となります。
・所定の高さで打止りにならない場合は、長さの調整が必要となります。
・硬質地盤(砂質地盤N値50以上、粘土地盤N値30以上)に対しては十分貫入できません。
・時として周辺地盤に振動が伝わることがあります。
・杭の支持力の推定が明確ではありません。

(2)埋込み杭工法
所定の深度まで地盤を掘削し、既成杭を建込み・挿入する工法です。
1)中掘り杭工法
中掘り杭工法は、アースオーガー等を用い、既製杭の中空部を掘削しながら杭自重、圧入または打撃を加え、杭を沈設させる工法です。
杭体の中空部にロッドを差し込んで、ロッドの先端にオーガーヘッドをつけて、杭体といっしょに回転させながら掘り進んでいきます。
径500mm以上の杭に多く使用され、沈設後の杭の支持力を増大するため、支持層に1~1.5m打ち込むか、支持層中にセメントミルクを注入して杭と一体化するなどの対策がとられています。
①長所
・低騒音・低振動工法のため、公害防止に役立っています。
・既製杭のため杭体の品質は保証されています。
・打込み杭工法に比べて近接構造物に対する影響は小さくなります。
・先端処理にセメントミルクを使用する工法は、管理手法が確立した工法に限られるため、施工品質が安定しています。
・場所打ち杭等に比べて排土量が少なく抑えられます。
・杭がケーシング代わりとなる為、崩壊し易い地盤でも杭の周辺地盤を緩める事が少なく長尺杭にも適用できます。
・掘削安定液を使用せず、施工能率が良い為、経済性に優れています。
②短所
・施工管理が打込み杭工法と比較すると難しくなります。
・泥水処理、排土処理が必要です。
・コンクリート杭の場合、径が大きくなると重量が大きくなるため、施工機械選定には注意が必要となります。
・杭頭部の装置が複雑になります。
・一般に施工速度が遅く、排土の処理に手間が掛かります。
・打ち込み杭に比べ、支持力が低下します。
・施工の巧拙が支持力に大きく影響するため、十分な施工管理が必要となります。
2)プレボーリング杭工法
プレボーリング杭工法は、あらかじめ、地盤をオーガー等で所定の深さまで掘削し、既製杭を挿入してハンマ(ディーゼルハンマ・ドロップハンマ・油圧ハンマなど)を使用し、打撃を加えて施工する工法です。
あらかじめアースオーガーなどによって掘削液(孔壁の崩落を防ぐもの)を注入しながら掘削してから杭を立て込む工法です。
①長所
・低騒音・低振動工法のため、公害防止に役立っています。
・既製杭のため杭体の品質は保証されています。
・打込み杭工法に比べて近接構造物に対する影響は小さくなります。
②短所
・施工管理が打込み杭工法と比較すると難しくなります。
・泥水処理、排土処理が必要です。
・杭径が大きくなると杭体重量が大きくなるため、施工機械選定には注意が必要です。
・杭頭部の装置が複雑になります。
・一般に施工速度が遅く、排土の処理に手間が掛かります。
・打ち込み杭に比べ、支持力が低下します。
・施工の巧拙が支持力に大きく影響するため、十分な施工管理が必要となります。
3)鋼管ソイルセメント杭工法
鋼管ソイルセメント杭工法は、地盤にセメントミルクを注入し、攪拌混合して築造する固化体と外面突起付き鋼管により構成され、鋼管と固化体が一体化する工法です。
①長所
・低騒音・低振動工法のため、公害防止に役立っています。
・既製杭のため杭体の品質は保証されています。
・打込み杭工法に比べて近接構造物に対する影響は小さくなります。
・中堀り杭や場所打ち杭に対して建設発生土が低減されます。
・従来の鋼管杭工法に比べ、リブ付鋼管とソイルセメントを合成することにより周面摩擦抵抗を大きく取ることができるようになり、場所打ち杭を上回る周面摩擦力と、中掘り杭と同等の先端支持力が得られます。
・地盤条件に対する適用性が高く、被圧地下水に対しても適用が可能です。
②短所
・施工管理が他の工法と比較すると難しくなります。
・泥水処理、排土処理が必要です。

(3)回転杭工法
回転杭工法は、板又は螺旋羽を取り付けた鋼管杭を全回転圧入機等を用い、地盤に回転・圧入する工法です。
①長所
・低騒音・低振動工法のため、公害防止に役立っています。
・打込み杭工法に比べて近接構造物に対する影響は小さくなります。
・杭先端の羽根を介して支持層へ荷重を伝達することより、大きな押込み支持力・引抜き抵抗力を有します。
・残土が発生しません。
・傾斜角10度程度までの斜杭が比較的精度良く容易に施工出来ます。
・逆回転での引抜きが可能であり、リサイクルにも貢献できます。
②短所
・所定深度で打止りにならない場合は、長さの調整が必要となります。
・回転抵抗値(電流値やトルク値)、貫入量、押し込み力等が重要となるため、施工は慎重に行う必要があります。
・玉石等が混入している場合は補助工法にて撤去等を行う必要があります。
・小径の杭の場合は、肉厚が薄く杭体の破損には十分注意する必要があります。
・地中に硬い石や異物が多く混ざっている地盤では、回転羽が破損し、施工に支障を来す事があります。

(4)場所打ち杭工法
場所打ち杭工法は、現場で組んだ円筒状の鉄筋を掘削した地盤の中に落とし込み、後からコンクリートを穴の中に流し込み、固めて杭を形成する工法です。
1)オールケーシング工法
オールケーシング工法は、土留.めとなるケーシングを回転させながら地盤に圧入し、ケーシング内の土を掘削・排土しながら掘削する工法です。
特に崩壊し易い地盤に適する工法で、杭全長にわたってケーシングを圧入し、孔壁を保護し、内部の土砂は、ハンマーグラブを落下させつかみ取ります。
①長所
・低騒音・低振動工法のため、公害防止に役立っています。
・打込み杭工法に比べて近接構造物に対する影響は小さくなります。
・大径の杭が施工可能です。
・長さの調整が比較的容易です。
・掘削土砂により中間層や支持層の土質を確認することができます。
・杭全長にケーシングを使用するので孔壁の崩壊がありません。
・確実な杭断面形状を確保しやすいケーシングチューブ内径の1/3以下位の玉石の掘削が可能です。
・掘削した土砂の含水比が小さいため残土処理が比較的安易です。
・岩盤や転石などの掘削が容易です。
・鉄筋コンクリートなどの障害物の削孔・撤去が可能です。
•孔壁崩壊がないので地下鉄等地下埋設物への近接施工も可能です。
②短所
・施工管理が打込み杭工法と比較すると難しくなります。
・泥水処理、排土処理が必要となります。
・小径の杭の施工ができません。
・杭本体の信頼性は既製杭に比べ小さくなります。
・地下水位以下の細砂層が厚い場合には、ケーシングチューブの引抜きが困難となることがあります。
・杭径に制約があります。
・ボイリングやヒーリングが発生しやすくなります。
・鉄筋の共上りが発生する事があります。
・掘削機の自重や、ケーシングチューブ引抜き時の反力が大きくなります。
・敷地境界から杭心までの施工必要距離が比較的大きくなります。
2)リバース工法
リバース工法は、ドリルビットを回転させ地盤を掘削し、その土砂を孔内水とともにエアリフト方式等を用い、ドリルパイプより地上に排出する工法です。
その後は、土砂を分離し水は再び孔へ循環させます。
孔壁の保護は、表層部ではケーシング(スタンドパイプ)を使用し、ケーシングより深部では、掘削泥水及び地下水の水頭圧により保護を行います。
①長所
・低騒音・低振動工法のため、公害防止に役立っています。
・打込み杭工法に比べて近接構造物に対する影響は小さくなります。
・大径の杭が施工可能です。
・長さの調整が比較的容易です。
・掘削土砂により中間層や支持層の土質を確認することができます。
・大径(φ3.0m)で、大深度(約75m位)の杭の施工が可能で、60mを超える深度でも掘削能率が落ちません。
・通常は、自然泥水で孔壁保護ができます。
・特殊ビットによって岩の掘削が可能となります。
・水上、低空頭での施工が可能です。
・逆循環汚水掘削の為、砂質土が多い地盤でも崩壊せずに施工が可能です。
②短所
・施工管理が打込み杭工法と比較すると難しくなります。
・泥水処理、排土処理が必要となります。
・小径の杭の施工ができません。
・杭本体の信頼性は既製杭に比べ小さくなります。
・ドリルパイプ径より大きい玉石(約15cm以上)層の掘削は困難です。
・仮設が大がかりとなります。
・廃泥水の処理量が多くなります。
・通常は、自然泥水で孔壁保護ができますが、水頭圧および比重の泥水管理が不十分であると孔壁崩壊を起こす事があります。
3)アースドリル工法
アースドリル工法は、アースオーガーを使用して掘削を行い、鉄筋を吊り入れ、コンクリートを打設して杭を形成する工法です。
孔壁の崩落を防ぐため、ベントナイトを用います。
①長所
・低騒音・低振動工法のため、公害防止に役立っています。
・打込み杭工法に比べて近接構造物に対する影響は小さくなります。
・大径の杭が施工可能です。
・長さの調整が比較的容易です。
・掘削土砂により中間層や支持層の土質を確認することができます。
・場所打ち杭の中では、機械装置が簡単です。
・仮場所打ち杭の中では、設が簡単で施工速度が速く工費が安く抑えられます。
・敷地境界から杭までの施工必要距離が小さくなります。
②短所
・場所打ち杭工法の中では最も問題のある工法とされており、実際に土木分野で採用されるケースは殆どありません。
・施工管理が打込み杭工法と比較すると難しくなります。
・泥水処理、排土処理が必要となります。
・小径の杭の施工ができません。
・杭本体の信頼性は既製杭に比べ小さくなります。
・礫(約10cm以上)層の掘削が困難になります。
・安定液の管理が不適切な場所には、孔壁崩壊を起こすことがあります。
・安定液の管理が不適切な場合は、支持力およびコンクリート強度の低下を生じます。
・異常な被圧地下水や伏流水については中掘杭工法以上に厳重な注意が必要です。
・大量の泥廃水が発生するので特別な設備・対策を必要とします。
・騒音レベルが意外に大きくなります。
・スライム処理が困難です。
4)深礎工法
深礎工法は、建物重量を地中の支持層に伝達する役目を担う杭を地中深く施工する杭工法の一種です。
現在施工されている場所打ち杭の中では最も歴史が古く、掘削は人力または機械により行いつつ、鋼製波板とリング枠(主にライナープレート)で土留めを行う工法です。
①長所
・低騒音・低振動工法のため、公害防止に役立っています。
・打込み杭工法に比べて近接構造物に対する影響は小さくなります。
・大径の杭が施工可能です。
・長さの調整が比較的容易です。
・掘削土砂により中間層や支持層の土質を確認することができます。
・人力掘削の場合は、狭い敷地や傾斜地又は根切り面からの施工が可能です。
・大口径で大深長の杭施工が可能です。
②短所
・場所打ち杭工法の中では最も問題のある工法とされており、実際に土木分野で採用されるケースは殆どありません。
・施工管理が打込み杭工法と比較すると難しくなります。
・泥水処理、排土処理が必要となります。
・小径の杭の施工ができません。
・杭本体の信頼性は既製杭に比べ小さくなります。
・湧水が多い場合や崩れやすい地盤には適していません。

杭工法の比較の参考資料としては、社団法人 日本道路協会 「杭基礎設計便覧」(平成19年1月)、「道路橋示方書・同解説IV」(平成24年3月))などがあります。

※ 1)道路橋示方書・同解説 平成24年3月改訂版に記載があります。

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