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青函トンネルの技術と湧水

青函トンネルは、本州と北海道を結んでいる有名なトンネルです。

(1)青函トンネルについて
このトンネルは、JR北海道の鉄道トンネルで、本州の青森県東津軽郡今別町浜名と北海道上磯郡知内町湯の里を結んで、1988年(昭和63年)に開業しています。
青函トンネル建設のきっかけのひとつは、1954年に津軽海峡で連絡船が沈没した「洞爺丸事故」だったそうですが、津軽海峡の海底下約100mの地中を穿って設けられたトンネルで、全長は53.85 kmもあり、交通機関用のトンネルとしては、現在では世界一の長さです。
青函トンネルの木古内駅方には、非常に短いシェルターで覆われたコモナイ川橋梁、さらに長さ約1.2kmの第1湯の里トンネルが続き青函トンネルに一体化しており、これらを含めたトンネル状構造物の総延長は、実に約55kmにもなっています。

(2)苦労した青函トンネル
青函トンネルは、貫通 まで21年もかかりました。
今では、よっぽどのことがない限り、どくなに長くてもせいぜい10年もあれば完成するものです。
でも、昭和39年から始まった調査坑工事では、後述するような技術も全く確立されていなかったために、当時の日本鉄道建設公団の関係者と作業員の方々は、トンネルを掘りながら新しい技術を一から開発するという任務を負っていました。
その後、関係者の方々の昼夜を惜しまぬ 努力が報われ海底トンネルに必要な技術が次々と生み出されると、その成果が認められ、昭和46年に本工事着工のゴーサインが決定しました。
本工事着工後は、先進導坑で得られた情報(前方の地質の情報や掘削の状態等)を十分に活かしながら本トンネルや作業抗(本坑掘削のための作業員や資材運送、ズリの搬出などに使われていた坑道)の工事が並行して進められました。
本トンネルの建設工事は大手ゼネコン17社が請負い、最盛期には北海道・本州合わせて3000人を越える作業員が従事されていたそうですが、更なる技術の改善とより高度な工法が考案されたこともあり作業の効率が進み、昭和47年から始まった本トンネルの建設工事は13年の年月をかけて昭和60年に貫通 しました。

(3)青函トンネルで生み出された技術
青函トンネルの建設工事では世界に誇る技術がいくつも生み出されました。
中でも、
①先進ボーリング
②地盤注入
③吹付コンクリート
は青函トンネルの「三大技術」と言われ、この技術はその後のトンネル工法の基盤となり技術開発の急速な発展に大きく寄与したと言われています。

1)先進ボーリング
トンネル工事では、掘削前に前方の地質や湧水の状態を的確にとらえ、設計や施行法に反映させることが、工事の安全性や経済性を高めるために重要と言われています。
特に、地層が複雑に入り組んでいる上に、津軽海峡という水瓶を抱える海底部を掘り進む青函トンネルでは前方予知の技術は不可欠でした。
そのため、これから掘り進む場所に水平のボーリングを行い、前方の地質の状態や断層・湧水の有無を探る先進ボーリング技術が開発されました。
ボーリングから採取した「コア」を分析し、それにあった掘削工法や対策を立てて掘り進めたそうです。
垂直にボーリングする技術に比べ、水平を保ちながら長尺のボーリングをすることは非常に高い技術を要し、関係者がねばり強い研究と改善を重ねた結果 、常時、1000mもの長いボーリング(最長は2150mだそうです)が可能になり海底部の地質を正確に予知できるようになったと言われています。
当社でも水平ボーリングは可能ですが、やはり100mを超えると掘削が困難になってきます。
1000mを掘削できる大規模なボーリング機械と、「コア」採取にすぐれた技術者が必要なのだと思います。

2)地盤注入
海面下240mを掘り進む青函トンネルは、激しく吹き出す湧水との闘いの連続だったそうです。
240トン/㎡という高い水圧で吹き出してくる水をいかに止めながら掘り進むか、止水のための技術の確立が青函トンネル完成の鍵となりました。
地盤注入技術とは、グラウト工法とも言い、岩盤に注入孔を空け、水ガラス(珪酸ソーダ)とセメントミルクという特殊なセメントを混合したものを注入し、岩盤を固めて水の道を防いだ上で掘削するというものです。
注入の範囲はトンネル径の約3~5倍です。
地質の状態や湧水の有無などによって、きめ細かく注入範囲やタイミングを計る必要があり、開発には大変な時間と試行錯誤が続けられました。
トンネル海底部からの排水処理費用は、当時で毎分1トンにつき年間およそ4000万円もかかると計算されていましたので、注入の技術は、安全な工事を可能にするだけではなく、 排水諸費費用の削減にも大きく貢献したと言われています。
当社でも溜め池の漏水の工事などではこのようなグラウト工法で止水しますが、海底トンネルはひとつ間違ったら命取りになることもあるので、大変な工事だったと想像できます。

3)吹付コンクリート
それまで、山岳トンネルでは、掘削し土砂を運び出したあとに、岩盤が崩れないように 支保工を立て込み鋼鉄の枠をはめ込みながら掘り進めるというのが一般的でした。
しかし、湧水の危険性や膨張して押し出される地盤に悩まされていた青函トンネルの現場では、いかに早く地盤を安定させるかが重要課題でした。
そこで、鉄の型枠を用いずにコンクリートを打設することができる「吹付コンクリート」が導入されました。
この技術は、掘削した直後にコンクリートを岩盤に吹き付けて崩壊を防止するというもので、工事の安全性だけではなく掘削作業のスピードアップにも大きく貢献したと言われています。
この技術は、昭和20年代半ばにヨーロッパで試験的に導入されていたそうですが、国鉄の粕谷逸男さんがこの技術の優れた効用をいち早く見抜き、青函トンネルで更に改良が続けられ確立されたそうです。
現在ではこの「吹付コンクリート」は、切土斜面の崩壊防止対策でごく一般的に使用されていますが、これも当時の青函トンネルの技術があってこそと思います。

(4)苦労した異常出水
1)ポンプ設備について
青函トンネルは海底にあるトンネルのため、当然海の水がトンネル内に漏れてきます。
これらを放っておくとトンネルは水浸しになるため、湧水を地上に出す設備が必要になりました。
これが排水設備ですが、当初は、竜飛・吉岡両斜坑の底にポンプ室を設置して、たまった湧水をここにすべて流して斜坑から排水するように計画されていました。
そのため先進導坑は斜坑から海峡中央部に向かって3%の上りとなっているため、斜坑に水が溜まることになります。
ポンプは経済性や設備強度から
①竜飛作業坑(ポンプ1) ポンプ容量10m3/分×3=30m3/分
②竜飛斜坑底(ポンプ2)ポンプ容量9m3/分×3=27m3/分
③吉岡斜坑底(ポンプ3)ポンプ容量12m3/分×6=72m3/分
の3箇所に設置されています。
ポンプ1は本州側本坑入口から13㎞まで、ポンプ2は竜飛斜坑と先進導坑の中央部以外を、ポンプ3は残った本州側と、本州側のすべての湧水を排出し、非常時には最深部に位置するポンプ3へ流れて行きます。

2)異常出水の対策
青函トンネルは、異常出水に悩まされました。
異常出水とは、青函トンネルの海底工事において通常の排水設備能力を超えた4立方m/分以上の土砂を含む水が一緒にトンネル内に流れ込むことです。
調査工事が始まってから完成まで、4回発生してたくさんの費用や時間がかかりました。
異常出水では、断層破砕帯、つまり脆くなった壁で発生したために、周りの地質まで脆くなってしまい、ひびが入って軟弱化してしまい、更に付近に地下水を含んでとても面倒なことになったそうです。
断層破砕帯では丹念に地盤注入をして掘り進んでいましたが、水圧というのは恐ろしいもので、掘り進んでいくうちにやわらかい地盤の山がぬかるんで、地盤注入の外から水が入り込み、水脈を作り、広がったことによって異常出水が発生しました。
異常出水の対策としては、
湧水や土砂の流出を防ぐために出水付近の坑道を一旦閉鎖、ポンプなどの排水設備の強化

排水、土砂の除去作業

復旧のためのボーリング等による入念な地質調査

復旧対策の検討(このまま掘り進めても大丈夫か?まだ対策が必要か?)

遮水し、地盤を強化するための地盤注入
このような作業工程です。
 
3)最大の異常出水
異常出水ので最もたくさんの出水が起こり、トンネル水没の危機にまでなったものは昭和51年5月6日、吉岡作業坑4㎞588m50㎝地点で起こったものでした。
その出水量は70m3/分もあり、吉岡斜坑底(ポンプ3)のポンプ6基の排水容量すべてでも72m3/分なので、排水設備能力が全く追いつかなかったそうです。
出水を広げないために作った水門も次々と破られてしまい一時は手のつけようがなかったそうです。
しかし、排水設備のメインであった斜坑底のポンプ(ポンプ3)が水没しなかったため復旧作業開始までには時間がかかったものの、なんとか異常出水を防ぐことが出来ました。
吉岡作業坑の異常出水以降、竜飛側・吉岡側共に大幅な排水設備の増強を行いました。
その結果、竜飛側110m3/分、吉岡側98m3/分の排水能力となり、水門もその時だけでなく定期的に設置していきました。
この後の出水は一度も起きませんでした。

(5)湧水の利用
今でも作業坑道の脇に溝があり、湧き水が流れています。
トンネルというのは地層や水脈を貫いて掘りますので、地上・海底に関係なく湧き水が出ます。
但し、海底トンネルの場合は構造上自然排水できないので、水抜き用のトンネルがあり、ポンプを使って地上へ汲み上げています。
湧水量は、現在では1分間に約20トン(20m3/分)です。 
現在ではこの青函トンネルの湧水を利用してタービンを回す小水力発電(発電出力が1000キロワット以下の水力発電)事業が、外ケ浜町で完成し、地上部分からも湧水があるので、トンネル周辺にある集落の水源として使われています。
排水施設にくみ上げた水は、直径40cmの導水管で150m先の発電所へ送り、13・3mの落差を利用し、毎分8トンの水で水車を回し、電気を起こします。
湧量は変動しますが、最大24キロワット時を発電し、年間発電量は最大約21万キロワット時を見込んでいます。
これは一般家庭50~60世帯分の年間使用電力に相当するそうです。
 因みに、青函トンネルの耐用年数は約50年だそうです。

トンネルの地図

①本坑(ほんこう)
高さ7.85m、幅9.7mの列車が通るトンネルで、3階建のビルがすっぽり入る大きさです。
②立坑(たてこう)
エレベータを使い、工事中の人や資材・機械を運搬。現在、煙を外に出すための道になっています。
③先進導坑(せんしんどうこう)
最も先行して掘られたトンネルです。
海底の地質や水の出方を調査し施工方法の検討や開発を行ない、作業坑と本坑の施工をサポートしました。
現在は、排水と換気のために使われています。
④斜坑(しゃこう)
主な斜坑は吉岡と竜飛に一本ずつ施工しています。
14度の勾配で海底へ下り、地質調査や工事関係者と資材・機械、ズリ(掘った後の岩石や土)の運搬、排水に使われました。
現在、換気のために風を送る道になっているほか、保守作業の出入り及び資材運搬のためにケーブルカーが運転されています。
⑤作業坑(さぎょうこう)
本坑の横30mのところに平行して掘られています。
常に本坑より先まわりして連絡誘導路を造り、切羽を増やして工事の速度を早めるため造られました。
機械・資材、ズリを運ぶ役目もしました。
現在は、保守のための通路としてトラックや自動車が通っています。


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