日本に原発は必要?

『原子力防災─原子力リスクすべてと正しく向き合うために』(松野元著、創英社/三省堂)という本があります。
愛媛県松山市の出身の松野元さんが書かれた本ですが、原子力防災の基本書みたいなもので、2007年1月に発行したものです。
福島原発の4年も前に発行した本ですが、原発事故がもし発生したら、そのあとの住民の避難誘導などの原発災害すべてについて「そうならないためにはどうすればよいのか」という方法が細部に至るまで具体的に書かれている本です。
今となってみれば予言書みたいなものですが、松野さんは、原子力防災研修の講師もしていたそうで、この研修には、原子力発電所の防災対策を「監督」する経産省の原子力防災専門官も参加していたそうです。

(1)福島原発は人災か?
福島原発の事故はやはり人災なのかも知れません。
私の判断ですごく残念なことが2点あります。
 ①ERSSとSPEEDIの活用
一つは、原子炉の情報収集をする「目と耳」であるERSSとSPEEDIの活用が出来なかったことです。
SPEEDIが本来の機能を果たしていれば、3月15日に放射性雲が北西(南相馬市~飯舘村)に流れることは予測できたはずであり、その住民に警告を出して避難させることができたはずです。
国は「原子炉が高温高圧になって温度計や圧力計が壊れたため、SPEEDIのデータは不正確だから公表しなかった」と説明していました。
但し、たとえSPEEDIが作動していなくても、熟練した防災の専門家なら事故の規模を予測して、避難の警告を出せると松野さんは言っています。
台風や雪崩と違って、原子力災害は100倍くらい正確に予測通りに動くそうです。
原発から放出された放射性物質の量がよくわからなくても、「スリーマイル島事故」と「チェルノブイリ事故」で放出された希ガスの総量から割り出して、22キロとか25キロ程度と判断していたそうです。
そして、全交流電源を喪失したので、格納容器が壊れることを考えて、25時間以内に30キロの範囲の住人を逃がす判断が必要だったと言っています。
②1号機の廃炉の判断
二つ目は1号機の廃炉をためらって被害を拡大したことです。
廃炉にすると、1炉あたり数兆円の損害が出そうです。
松野さんは、「1号機を廃炉する決心を早くすれば、まだコストは安かった。2、3号機は助かったかもしれない。1号機の水素爆発(12日)でがれきが飛び散り、放射能レベルが高かったため2、3号機に近づけなくなって14日と15日にメルトダウンを起こした。1号機に見切りをさっさとつけるべきだったのです」と言っています。
特に、1号機は40年経った原子炉なのですから、これをためらった東電の責任者は判断力不足だったと思います。

(2)日本での原発立地は?
「広島に原爆が落とされたとき、日本政府は空襲警報を出さなかった。『一矢報いてから』と講和の条件ばかり考えていたからです。長崎の2発目は避けることができたはずなのに、しなかった。国民が犠牲にされたんです」
「負けるかもしれない、と誰も言わないのなら(電力会社も)戦争中(の軍部)と同じです。負けたとき(=最悪の原発事故が起きたとき)の選択肢を用意しておくのが、私たち学者や技術者の仕事ではないですか」
これも松野さんの話です。
そして、「そもそも、日本の原発周辺の避難計画は飾りにすぎない。国は原子炉設置許可の安全評価にあたって、格納容器が破損して放射性物質が漏れ出すような事故を想定していない。もしそれを想定したら、日本では原発の立地が不可能になってしまうからだ。そんな逆立ちした論理が政府や電力業界を支配している」と締めくくっています。
「日本に原発なんて必要だろうか?」改めて考えてしまいました。


松野さんの「原子力防災」の本です。
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