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森林の保水力について

日本の森林について考えてみたいと思います。
今の日本では、紅葉の名所に行っても、一山全体が紅葉で美しいところはほとんどないと思います。
半分が雑木で半分が杉やヒノキの中途半端な山になっています。
戦後の復興で山の木が非常にたくさん伐採されていました。
この時の山の木は、ほとんどが雑木だったのでしょう。
有名な昭和28年の西日本の大水害の時には、山に木がないので、雨というよりも山全体が滝になったということも聞いています。
その後、杉とかヒノキとか保水量の少ない木を植えました。
でも、杉やヒノキは雑木と違って山から流れ出る水の量は変わってくると思います。
今降っている雨は何カ月か後に川の流量になります。
そして、今、川が流れているのは、数カ月か前に降った雨が流れています。
要するに山が裸で浸透もなく、障害物がないと、降ったら即流れてしまいます。
こういった観点で見ると、森林の保護はとても重要になってきます。

(1)森林と河川の関係
「利根川治水考」(1908(明治41)年の刊行 根岸門蔵)では、
「治水の根源とは何ぞや、即ち河川の水源たる所の山林これなり
古人曰く、樹木は貯水池なりと、又曰く、水を治めんと欲せば、
先ず山林を治めよと」
つまり、「川に水がほしかったら山林を整備せよ 」と言いたいのでしょう。
そして森林と河川の関係を 
①森林は降雨を促し水源を涵養することで、河川の枯渇を防止する
②森林は水分を保有し、土地の乾燥を防止する
③森林は雨水を含蓄し、流出係数を下げるため、河川の洪水を緩和する
④それらにより、土砂流出を防止し、河床が高くなることを緩和して、河川の氾濫を減少させる
としたうえで、植林を説いている。

(2)計画高水流量と流出係数
では、道路や水路などの設計に使われている係数を使って山林の保水について検証していきましょう。
道路設計には計画高水流量が用いられます。
これは、ある流域内にどれだけの水量(流量)が出るかを算出する式です。
流域面積(A)が比較的小さい(流域200km2未満、到達時間2時間未満程度)流域の場合は、計画高水流量は次式で求めます。     
      Q = 1/3.6・ f ・ r ・ A          
         Q:計画高水流量 (m3/s)
          f:流出係数
          r:洪水到達時間内の平均雨量強度 (mm/h)
         A:流域面積 (km2)

この中で流出係数が出てきます。
この流出係数は、降雨量に対して地表を流下する雨水の割合を表す数値です。
つまり、降った雨水は、地中に浸透したり、樹木に付着したり、蒸散したりするから、地表を流れる量は降雨量より少なります。
下の表によると、急峻な山地で、f= 0.75~0.90 という係数になります。
つまり、75~90%は地表面を流れるが、それ以外は地中に浸透したり、樹木に付着したり、蒸散したりすることになります。
ただし、この係数は雑木と杉やヒノキの区別はありません。
あくまでも地形だけの係数になります。

日本内地河川の流出係数表
① 急峻な山地 f=0.75~0.90
② 三紀層山岳 f=0.70~0.80
③ 起伏のある土地および樹林 f=0.50~0.75
④ 平坦な耕地 f=0.45~0.60
⑤ かんがい中の水田 f=0.70~0.80
⑥ 山地河川 f=0.75~0.85
⑦ 平地小河川 f=0.45~0.75
⑧ 流域の半ば以上が平地である大河川 f=0.50~0.75   
(改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解説 調査編より)

(3)流入・流出時間と遅滞係数
流入時間により求める方法があります。
流入時間とは、雨水が流域の最遠点から道路等の構造物(例えば管渠等)に流入するまでの時間のことです。
ここで遅滞係数が出てきます。
ここで、雑木(落葉樹)と杉やヒノキ(針葉樹)に分けてはいますが、落葉樹の方が係数が同じか少なくなっています。
これでは比較できないですね。
参考までに、草地、樹林地等の区域は次式で求めます。
 
L:斜面距離(m)
s:斜面勾配
n:遅滞係数
 
  

地覆状態による遅滞係数表
①不浸透面 n=0.02  
②よく締まった裸地(なめらか)n= 0.10
③裸地(普通の荒さ) n=0.20
④粗草地及び耕地 n=0.20   
⑤森牧草地又は普通の草地n= 0.40    
⑥森林地(落葉樹) n=0.60
⑦森林地(深い落葉等堆植地) n=0.80
⑧森林地(針葉樹林)n= 0.80
⑨密草地 n=0.80

流入時間があれば、流下時間もあります
ただし、流下時間とは、道路等の構造物(例えば管渠等)に流入した雨水がある地点まで管渠内等を流下するのに要する時間のことで、山林の検証にはなりません。
参考までに算式と粗度係数を紹介します。 
L:水路の延長(m)
V:流速(m/sec)
マニングの式
又は
クッターの式
R:径深(m)=流水断面A(㎡)/流水潤辺長P(m)
I:動水(水路)勾配(分数又は少数)
n:粗度係数
 
  
水路の形式による粗度係数表
1)管  渠  
①ヒューム管 n=0.013
②硬質塩化ビニル管 n=0.010
③コルゲートメタル管 n=0.033
2)水  路  
①モルタル n=0.013
②コンクリート、コテ仕上げ n=0.015
③コンクリート、底面砂利 n=0.017
④石積み、モルタル目地n= 0.025
⑤空石積み n=0.032
⑥土、直線水路、雑草あり n=0.027
⑦砂利、直線水路 n=0.025
⑧岩盤直線水路 n=0.035
3)自然水路  
①整正断面水路 n=0.030
②非常に不整正断面、雑草立木多しn= 0.100

(4)貯留関数法
貯留関数法による流出計算もあります。
洪水流出が表面流であるとして、マニングの流れの式から次式を仮定する方法です。
                                          ・・・(1)
ここに、
Sl :流域または河道の貯流量
Ql :流出量
K,P :流域または河道による定数

これを運動方程式として、次の連続方程式と組合わせて、流域流出量と河道洪水流量を計算します。
     〔1流域につき〕       ・・・(2)

ここに、
f :流出係数
R :流域平均雨量
:流域面積
t:単位時間
Sl :みかけの流域貯流量
Ql Ql(t) = Q(t + Tl) 遅滞時間を考慮した流域直接流量
Tl :遅滞時間

この方法はよく使われていますが、なかなかわかりずらい方法です。

(5)まとめ
単純に考えると森林が良いほど流出が遅いことになります。
極端に言えば、原生林ほど出る水がゆっくりになります。
しかも、森は広いほど良いと思います。
多分、森林状態がよければ、表面の土壌が醸成されて、そこに保水能力が出て、流出が少しおくれてくるのだと思います。
それも、非常に大規模な雨の場合には浸透する余裕がないので、保水の効果は少なくなり、小さい雨のときは非常に有効です。
ただし、杉やヒノキの植林というのは保水力がないのでだめだと思います。
今の道路設計などは、流出係数から構造物の断面を決めています。
この流出係数にせめて自然林(雑木)と植林(杉やヒノキ)の要素を入れればもっと確実な排水計画になると思います。
それと、渇水対策にはやはり保水力のある雑木を植えることをおすすめします。
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