ホルンフェルスについて

地質屋さんが、硬い石を見ると「これはホルンフェルスだ」と言っていたのを思い出します。
ではいったいホルンフェルスとはどういった岩石のことを言うのでしょうか?

ホルンフェルスとは、泥岩や砂岩、礫(れき)岩などの堆積岩が、熱による変成作用を受けて変わったものです。
泥岩を例にとると、この泥岩が花崗岩の貫入をうけて温度が上昇すると、変成鉱物である黒雲母が晶出して、岩石の色は黒色から次第に赤紫色を変化して輝きが増してきます。
色の変化だけではなく、ハンマー打撃で金属音を発するほど硬くなり、このような岩石をホルンフェルスと呼んでいます。
この熱による変成作用を、「接触変成作用」と呼んでいます。

愛媛県の地質は、ほぼ東西方向にのびる中央構造線により、アジア大陸側(内帯)と太平洋側(外帯)に区分されています。
内帯には、越智諸島から高縄半島にかけて領家花崗岩類と領家変成岩類が分布しており、この領家変成岩類の岩石がホルンフェルスとなっています。
また、これらの上を不整合に覆う中生代白亜紀の和泉層群や鮮新~更新紀に属する地層が分布しているところもあります。
高縄半島周辺や越智諸島に分布する地質について説明します。

(1) 領家変成岩類

ホルンフェルスは、源岩の種類により分類される場合と、ホルンフェルス形成後に特徴的に生成する鉱物種により分類される場合とがあります。

(1)-1 源岩の種類による分類ホルンフェルス

源岩が泥岩の場合は泥質ホルンフェルス(pelitic hornfels) になります。
源岩が砂岩の場合は砂質ホルンフェルス(psammitic hornfels) になります。
源岩が石灰岩の場合には結晶質石灰岩(大理石) (crystalline limestone)になります。
源岩がチャートの場合は珪岩(けいがん、quartzite)と呼ばれています。

(1)-2 生成した鉱物種による分類ホルンフェルス

生成した鉱物種による分類ホルンフェルス中(特に泥質ホルンフェルス)に特徴的に見られる鉱物として、菫青石、紅柱石、珪線石などがあります。
これらの鉱物は、形成する温度圧力条件が決まっているものが多く、そのため、ホルンフェルス中にどの鉱物が形成しているかにより、そのホルンフェルスを形成した接触変成作用の温度条件を推定することもできます。
また、ひとつのホルンフェルス岩体中で、熱源となったマグマを中心に累帯構造が形成されることもあります。
紅柱石(こうちゅうせき、andalusite)の結晶を含むものは紅柱石ホルンフェルス(andalusite hornfels) になります。
菫青石(きんせいせき、cordierite)という変成鉱物が生成しているものは菫青石ホルンフェルス(cordierite hornfels) になり、その中で形のきれいなものは(専門的には熱水変質を起こし雲母化して、まるで桜の花のようになっているもの)「桜石」と呼ばれています。

愛媛県では源岩の種類による分類ホルンフェルスが主体です。
分布は、おもに弓削島、岩城島、大三島、大下島、小大下島、岡村島、中島、睦月島などです。
この変成岩の源岩は、以前は古生代とされていましたが、放散虫(海産浮遊性原生動物で、深海堆積物の構成要因)の化石の発見により、中生代三畳紀後期~ジュラ紀初頭の堆積物が含まれていることが明らかになり、これらの堆積物が、領家変成作用や花崗岩の貫入によって変成されたと考えられています。

① 片状ホルンフェルスと片麻岩
松山市北条沖の小安居島に分布する灰白色と暗灰色の縞状の岩石は片麻岩で、比岐島、平市島、魚島、高井神島、江ノ島には、おもに石英からなる石英片岩、石英と黒雲母からできている黒雲母片岩が分布しています。

② 結晶質石灰岩(大理石)
弓削島、大三島北部、大下島、小大下島、中島、睦月島、二神島には、白色粗粒で等粒状の結晶質石灰岩が分布しています。
この岩石は、ホルンフェルス中にレンズ状に挟まれており、この中に、弓削島のベスブ石、小大下島の珪灰石をはじめ、ざくろ石、透輝石、蛍石などのスカルン鉱物が含まれています。
弓削島、大三島、小大下島では、セメント、肥料、精錬用、化学工業用として採掘されていましたが、現在では大三島鉱山を除いて、休山または廃山となっています。

③ ホルンフェルス
縞状を呈した、黒褐色から灰黒色の泥質ホルンフェルスと、灰褐色から灰白色の砂質ホルンフェルス、白色の珪質ホルンフェルスがあり、分布範囲も広く確認されています。
弓削島の古法皇(ふるほうおう)山、岩城島の積善(せきぜん)山、大三島の肥海(ひがい)山付近と中腹部、大下島、小大下島、岡村島、中島北東部、睦月島東部、二神島などに分布する。この岩石は、硬く風化に強いため越智諸島の山頂から中腹にかけての急斜面や崖を作っています。
また、石材としての利用が可能と思われます。
  
(2) 領家花崗岩類
 
①  石英閃緑(せんりょく)岩
来島、津島、大島南東部に分布しています。
暗灰色から黒色の、中ないし細粒完晶質の岩石です。

② 片状花崗閃緑岩
角閃石や黒雲母が片状~片麻状に配列している岩石で、四阪島、魚島、高井神島南西部に分布しています。

③ 中粒~細粒花崗閃緑岩
大島北部、伯方島南部に分布する、緻密で灰色から青灰色の岩石です。
大島のものは、「大島石」あるいは「青みかげ」と呼ばれ、日本各地で建築石材として利用されています。

④ 粗粒花崗閃緑岩
大島南部、中島北部、怒和島、興居島などに分布しています。
石英、カリ長石、斜長石、黒雲母、角閃石を含む粗粒の岩石で、深層風化を受け「真砂」となっています。
 
(3) 広島花崗岩類

山陽地方に分布する花崗岩の一つで、愛媛県に分布するものは、領家花崗岩類より貫入時期が若干遅いと言われています。

① 黒雲母花崗岩
本県の島しょ部に分布するこの岩体は、中生代白亜紀末に貫入した中国バソリス(底盤)の南縁部と考えられています。
越智諸島全域と忽那諸島の怒和島を除く各島に分布しています。
優白質で、灰白色から淡紅色をした、粗粒から中粒の岩石で、風化され「真砂」となっています。
領家変成岩類をルーフ・ペンダント状に捕獲していることが多く見られます。

② 細粒黒雲母花崗岩~両雲母花崗岩
淡紅色から灰褐色を呈し、細粒で硬く風化されにくい岩石です。
大三島の鷲ケ頭(わしがとう)山の山頂をはじめ、各所に小岩体として分布しています。
中島の歌崎には、白雲母を含む両雲母花崗岩が分布し、これを歌崎型として他と区別しています。

③ 閃長岩~モンゾニ岩
灰白色で、中粒から粗粒のカリ長石と斜長石を主成分とし、石英をほとんど含まない深成岩で、花崗岩類の中に、小岩体として包有されています。
岩城島東海岸、大三島の口総などに分布しています。
岩城島のエジル石閃長岩は県の天然記念物となっています。

④ ペグマタイト
石英、カリ長石、斜長石、黒雲母などが大きな結晶となっている岩石で、脈状や塊状となって産出しています。
大三島の入日ノ滝、伯方の有津(あろうづ)、伊方、能地(のうぢ)、北浦では、精錬用、窯業用として採掘されたことがあります。
この岩石中には、変種ジルコン、フェルグソン石など希元素鉱物や放射匪鉱物が含まれています。

⑤ アプライト
ペグマタイトと同じ鉱物からなり、結晶が小さく、白色から乳白色の岩石で風化したものは、陶石の原料となります。
伯方島では茶碗石と呼び、採掘されたことがあります。

(4) 和泉層群

中生代白亜紀末の堆積岩で、川之江市から喜多郡長浜町青島にかけて、東西約300 kmにわたり帯状に分布しています。青島の本層からは、イノセラムスの化石が産出しています。

(5) 興居島層群

興居島の黒崎に分布する第三系で、下部の本浦層と上部の黒崎層に分けられ、領家花こう岩類を不整合に覆っています。木浦層から植物化石が採集できます。

(6) 瀬戸内火山岩類

瀬戸内海周辺部、並びに島しょ部に見られる安山岩類の総称で、領家変成岩類や花こう岩類を貫き、岩脈または火山岩頚として、おもに忽那諸島に分布しています。
この岩石は、新第三紀中新世のころの火山活動により噴出したものです。
玄武岩質から角閃安山岩質の組成のものは硬くて緻密であるので、コンクリート骨材や石材として利用可能と思われます。
スポンサーサイト
最新記事
カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム
QRコード
QR