地震と流体との関連について
5月5日午後2時42分頃、石川県珠洲市を震源とする地震があり、石川県 珠洲(すず )市で震度6強を観測しました。
気象庁によると、震源の深さは12キロ、地震の規模を示すマグニチュードは6・5と推定されています。
この珠洲市で発生している群発地震は、京大や金沢大の研究や調査から、奥能登地域の地下にある水かマグマと考えられる流体が地盤に影響を与えて引き起こしているとの見方が強まっています。
流体が地震に影響を与えているのではという予想は以前からあったそうですが、昨年秋に京大防災研究所や金沢大が始めた衛星による精密な位置情報(GNSS)を使った地殻変動の観測や、地下を流れる電流の変化の調査でも、それを裏付ける結果が出てきています。
流体が移動すると、周囲の重力がわずかに変化するそうです。
流体が上昇する傾向があった場合、それに伴って地震の震源も浅くなり、被害が大きくなる可能性があるそうです。
これに対して、流体の移動があまり観測されない場合は、地震が終息に向かう可能性もあると考えられています。
珠洲市周辺では2020年12月ごろからこれまでに4センチほど地面の隆起が観測されているそうです。
能登半島の地殻変動の分析を続けている京都大学防災研究所の准教授である西村卓也さんによりますと、これほどの隆起は、活火山がある地域で地下のマグマ活動によって引き起こされる可能性はあるものの、能登半島のように活火山のない地域で観測されるのは珍しいということです。
西村さんは、地殻変動の量などから、地下十数キロほどの深さに“何らかの流体”が流れ込んだと分析しています。
流体によって、周辺の岩盤がずらされたり、流体がいわば「潤滑油」になって岩盤が滑りやすくなったりすることで、地震活動が活発化した可能性があるということのようです。
西村さんは、「詳しくはわからない」としたうえで、太平洋側から能登半島の地下数百キロの深くに沈み込んだプレートから、長い時間をかけて分離した水が上昇した可能性もあるとしています。
また、地殻変動は現在もゆるやかに続いていることから、地下で流体が移動していると考えられ、今後も地震活動に警戒が必要だとしています。
西村さんは「地殻変動が収まっていないことから考えると、少なくとも数か月や半年間、地震活動が続く可能性もある。珠洲市は震源からも近く、緊急地震速報は間に合わないので、家具の転倒を防いだり、転倒をしても安全な場所で休むなど、対策を続けてほしい」と話しています。
地震の発生は、言うまでもなく地球内部の構造とその活動に起因しています。
近年、地球内部の構造を調べる観測データを地球内部の岩石の特性や環境などと合わせ詳しく読み解くことで、巨大地震の発生メカニズムを解明する試みがなされています。
そこには、地球内部に存在する水(流体)が関係していることがわかってきました。
地球の内部を調べるときも、波の性質を利用するのが極めて有効で、良く使われるのは地震波(弾性波)です。
そして、地震波のいろいろな性質を利用して、地球の内部のことが調べられています。
例えば、波は速度が急にかわるところ(異なる物質の境界)で反射したり屈折したりする性質がありますが、これを利用することで、地殻とマントルの境界(モホ面)の位置を推定することができます。
また、地下に液体があった場合、縦波であるP波※1は透過することができますが、横波であるS波※2は透過できません。
この性質から、外殻が液体であることがわかりました。
※1 P波:地震波の1つ。地震発生時に最初に到達する地震波で初期微動(最初の「カタカタ」という揺れ)を引き起こす。伝わる速度は秒速6~7kmと早く、固体・液体・気体、どの状態においても伝わる(透過する)。
※2 S波:地震波の1つ。地震発生時に初期微動の後の大きな揺れ(主要動)を引き起こす。伝わる速度は秒速3~4kmで、固体においてのみ伝わる(透過する)。
また、地震波の速度もとても重要な情報です。
地震波速度は、物質の種類や密度、温度に関係しています。
したがって、物質の異なる「地殻」「マントル」「核」はその速度から分けることができます。
また、同じ物質でも、温度が高いと地震波は遅くなる性質があることから、まわりより熱いところ、冷たいところを調べることもできます。
さて、このような地震波速度に関する観測技術やデータの解析技術が進み、地球内部の速度分布が詳しくみえてくるにつれ、さまざまなことが分かってきました。
そのひとつが、「プレートの沈み込み帯の地下での、周辺と異なる地震波速度の性質が見られる領域の発見」です。
この領域では、「P波の速度Vp」と「S波の速度Vs」の比率(Vp/Vs比)が周りより高いのです。
この領域が注目される理由のひとつは、その位置がスロースリップという、通常の地震とは違う断層すべりが起きている場所とが近いことです。
このスロースリップは、プレート境界の巨大地震との関係性が指摘されており、そのメカニズムを解明することは重要です。
日本でも、例えば東海地方などの地域でスロースリップが観測されておりますが、その発生領域でVp/Vs比が高くなっている様子がみられます。
では、Vp/Vs比が周りより高いということは、何を意味するのでしょうか?
このような、観測で得られた地震波速度の性質の意味を解読するときには、室内実験が重要な役割を果たします。
観測される地震波速度は、先ほども述べたように、岩石の種類や密度・温度など様々な条件に影響を受けていることが考えられます。
また、地下では岩石に大きな力(応力)が働いています。
海の深いところで水圧が大きくなるのと同じ理屈です。
深海の場合、圧力の原因は上にのしかかっている水の重さですが、地下の場合は岩石の重さです。
さらに、岩石の隙間には水などの流体が存在しますが、その圧力(間隙圧:流体が水の場合、間隙水圧)も地震波速度に影響を与えます。
こういった条件を実験室で再現して地震波速度を測定することで、これらの条件と速度の関係を知ることができます。
つまり、室内実験で地下の条件を作り出し、その条件で地震波速度がどうなるかを調べます。
そこでわかった情報をカギとして、地震波速度分布の結果を解き明かすことになります。
こうした室内実験の研究結果から、Vp/Vs比が高い理由は、間隙圧が高いことを意味していると解釈するのが現時点での有力な考え方になります。
高Vp/Vs比を示す領域は、プレート境界だけでなく、内陸地震の震源付近でも見つかっております。
このことは、内陸地震の発生も間隙水圧に関係していることを示しているのかもしれません。
「間隙圧が高い所と地震現象との間に関係ある」ということは、受け入れられやすい解釈です。
というのは、地震のもとである断層は、一般に間隙圧が高いほど、滑りやすくなるからです。
断層が滑るときの抵抗力は摩擦力と呼ばれますが、この摩擦力は摩擦面(断層)に垂直に働く力(垂直荷重)に比例することは、理科で習った人も多いと思います。
すなわち、垂直荷重が大きいほど摩擦力が大きくなる(滑りにくく)なるのです。
ここで、断層面が水などの流体で満たされている状態を考えると、その間隙圧は断層を押し広げるように働き、断層に働く垂直荷重の効果を軽減します。
その結果、断層の摩擦力は下がり、滑りやすくなるのです。
そのため、間隙圧が断層の滑り方や地震の発生に関係していると考えられているのです。
温泉地帯などは、地下水が豊富です。
したがって断層さえあれば地震を助長することは十分考えられます。
愛媛県で言えば道後温泉ですが、断層が近くにないこともあり地震との関連は顕著ではありません。
ただし、別府温泉は過去においても地震との関連は顕著です。
箱根の大涌谷でも水蒸気爆発に伴い、火口の北側斜面に火砕サージ(火山灰を含む高速の風)が発生し、地震も頻発しています。
地下水との関連は、あると思うのが一般的です。
珠洲市で発生している群発地震は、規模がマグニチュード6.5と大きかったことと、震源の深さが12キロと浅かったことが要因となっていることを考えると、震源が浅い時には、特に流体が地震に影響を与えていると考えていいのだろうと思います。
気象庁によると、震源の深さは12キロ、地震の規模を示すマグニチュードは6・5と推定されています。
この珠洲市で発生している群発地震は、京大や金沢大の研究や調査から、奥能登地域の地下にある水かマグマと考えられる流体が地盤に影響を与えて引き起こしているとの見方が強まっています。
流体が地震に影響を与えているのではという予想は以前からあったそうですが、昨年秋に京大防災研究所や金沢大が始めた衛星による精密な位置情報(GNSS)を使った地殻変動の観測や、地下を流れる電流の変化の調査でも、それを裏付ける結果が出てきています。
流体が移動すると、周囲の重力がわずかに変化するそうです。
流体が上昇する傾向があった場合、それに伴って地震の震源も浅くなり、被害が大きくなる可能性があるそうです。
これに対して、流体の移動があまり観測されない場合は、地震が終息に向かう可能性もあると考えられています。
珠洲市周辺では2020年12月ごろからこれまでに4センチほど地面の隆起が観測されているそうです。
能登半島の地殻変動の分析を続けている京都大学防災研究所の准教授である西村卓也さんによりますと、これほどの隆起は、活火山がある地域で地下のマグマ活動によって引き起こされる可能性はあるものの、能登半島のように活火山のない地域で観測されるのは珍しいということです。
西村さんは、地殻変動の量などから、地下十数キロほどの深さに“何らかの流体”が流れ込んだと分析しています。
流体によって、周辺の岩盤がずらされたり、流体がいわば「潤滑油」になって岩盤が滑りやすくなったりすることで、地震活動が活発化した可能性があるということのようです。
西村さんは、「詳しくはわからない」としたうえで、太平洋側から能登半島の地下数百キロの深くに沈み込んだプレートから、長い時間をかけて分離した水が上昇した可能性もあるとしています。
また、地殻変動は現在もゆるやかに続いていることから、地下で流体が移動していると考えられ、今後も地震活動に警戒が必要だとしています。
西村さんは「地殻変動が収まっていないことから考えると、少なくとも数か月や半年間、地震活動が続く可能性もある。珠洲市は震源からも近く、緊急地震速報は間に合わないので、家具の転倒を防いだり、転倒をしても安全な場所で休むなど、対策を続けてほしい」と話しています。
地震の発生は、言うまでもなく地球内部の構造とその活動に起因しています。
近年、地球内部の構造を調べる観測データを地球内部の岩石の特性や環境などと合わせ詳しく読み解くことで、巨大地震の発生メカニズムを解明する試みがなされています。
そこには、地球内部に存在する水(流体)が関係していることがわかってきました。
地球の内部を調べるときも、波の性質を利用するのが極めて有効で、良く使われるのは地震波(弾性波)です。
そして、地震波のいろいろな性質を利用して、地球の内部のことが調べられています。
例えば、波は速度が急にかわるところ(異なる物質の境界)で反射したり屈折したりする性質がありますが、これを利用することで、地殻とマントルの境界(モホ面)の位置を推定することができます。
また、地下に液体があった場合、縦波であるP波※1は透過することができますが、横波であるS波※2は透過できません。
この性質から、外殻が液体であることがわかりました。
※1 P波:地震波の1つ。地震発生時に最初に到達する地震波で初期微動(最初の「カタカタ」という揺れ)を引き起こす。伝わる速度は秒速6~7kmと早く、固体・液体・気体、どの状態においても伝わる(透過する)。
※2 S波:地震波の1つ。地震発生時に初期微動の後の大きな揺れ(主要動)を引き起こす。伝わる速度は秒速3~4kmで、固体においてのみ伝わる(透過する)。
また、地震波の速度もとても重要な情報です。
地震波速度は、物質の種類や密度、温度に関係しています。
したがって、物質の異なる「地殻」「マントル」「核」はその速度から分けることができます。
また、同じ物質でも、温度が高いと地震波は遅くなる性質があることから、まわりより熱いところ、冷たいところを調べることもできます。
さて、このような地震波速度に関する観測技術やデータの解析技術が進み、地球内部の速度分布が詳しくみえてくるにつれ、さまざまなことが分かってきました。
そのひとつが、「プレートの沈み込み帯の地下での、周辺と異なる地震波速度の性質が見られる領域の発見」です。
この領域では、「P波の速度Vp」と「S波の速度Vs」の比率(Vp/Vs比)が周りより高いのです。
この領域が注目される理由のひとつは、その位置がスロースリップという、通常の地震とは違う断層すべりが起きている場所とが近いことです。
このスロースリップは、プレート境界の巨大地震との関係性が指摘されており、そのメカニズムを解明することは重要です。
日本でも、例えば東海地方などの地域でスロースリップが観測されておりますが、その発生領域でVp/Vs比が高くなっている様子がみられます。
では、Vp/Vs比が周りより高いということは、何を意味するのでしょうか?
このような、観測で得られた地震波速度の性質の意味を解読するときには、室内実験が重要な役割を果たします。
観測される地震波速度は、先ほども述べたように、岩石の種類や密度・温度など様々な条件に影響を受けていることが考えられます。
また、地下では岩石に大きな力(応力)が働いています。
海の深いところで水圧が大きくなるのと同じ理屈です。
深海の場合、圧力の原因は上にのしかかっている水の重さですが、地下の場合は岩石の重さです。
さらに、岩石の隙間には水などの流体が存在しますが、その圧力(間隙圧:流体が水の場合、間隙水圧)も地震波速度に影響を与えます。
こういった条件を実験室で再現して地震波速度を測定することで、これらの条件と速度の関係を知ることができます。
つまり、室内実験で地下の条件を作り出し、その条件で地震波速度がどうなるかを調べます。
そこでわかった情報をカギとして、地震波速度分布の結果を解き明かすことになります。
こうした室内実験の研究結果から、Vp/Vs比が高い理由は、間隙圧が高いことを意味していると解釈するのが現時点での有力な考え方になります。
高Vp/Vs比を示す領域は、プレート境界だけでなく、内陸地震の震源付近でも見つかっております。
このことは、内陸地震の発生も間隙水圧に関係していることを示しているのかもしれません。
「間隙圧が高い所と地震現象との間に関係ある」ということは、受け入れられやすい解釈です。
というのは、地震のもとである断層は、一般に間隙圧が高いほど、滑りやすくなるからです。
断層が滑るときの抵抗力は摩擦力と呼ばれますが、この摩擦力は摩擦面(断層)に垂直に働く力(垂直荷重)に比例することは、理科で習った人も多いと思います。
すなわち、垂直荷重が大きいほど摩擦力が大きくなる(滑りにくく)なるのです。
ここで、断層面が水などの流体で満たされている状態を考えると、その間隙圧は断層を押し広げるように働き、断層に働く垂直荷重の効果を軽減します。
その結果、断層の摩擦力は下がり、滑りやすくなるのです。
そのため、間隙圧が断層の滑り方や地震の発生に関係していると考えられているのです。
温泉地帯などは、地下水が豊富です。
したがって断層さえあれば地震を助長することは十分考えられます。
愛媛県で言えば道後温泉ですが、断層が近くにないこともあり地震との関連は顕著ではありません。
ただし、別府温泉は過去においても地震との関連は顕著です。
箱根の大涌谷でも水蒸気爆発に伴い、火口の北側斜面に火砕サージ(火山灰を含む高速の風)が発生し、地震も頻発しています。
地下水との関連は、あると思うのが一般的です。
珠洲市で発生している群発地震は、規模がマグニチュード6.5と大きかったことと、震源の深さが12キロと浅かったことが要因となっていることを考えると、震源が浅い時には、特に流体が地震に影響を与えていると考えていいのだろうと思います。
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