渓流における流量を測定と「塩分希釈法」

渓流などの流量を測定する場合にはいろいろな測り方があります。

測定方法として、
①容積法
②流速計法
③堰法
④塩分希釈法
が挙げられます。
これらの測定方法や適用条件などについてまとめてみました。

表1 地表水の流量測定手法
測定方法概要適用条件備 考
容積法渓流を土嚢などにより止水しVP管などを通して流下させ流量を直接測定する方法です。直接的な測定であり精度は高いのですが、流量が多い場合には測定は困難です。簡易な方法では地表水の完全な捕捉が困難です。
流速計法通水断面を測量により作成し、流速計により数ヶ所の流速を測定し流量を求める方法です。流量が多い場合に適していまます。水量が少ない場合は、測定が難しく精度が悪くなります。流速が通水断面内で大きく変化する条件では精度が悪くなります。 流速計は、深度10cm以下の水深では測定が困難です。
堰 法河川や渓流の途中に三角堰や四角堰を設置しノッチ高を測定する方法です。岩盤や玉石の分布地での堰の設置は難しくなります。 砂や礫などの堆積物が分布する場合、地表水が地下へ浸透しやすくなります。一般に堰は常時設置するため、簡易な構造の場合、豪雨時に破損する可能性があります。
塩分希釈法一定時間、定量の食塩水を継続的に渓流に投入し、下流側にて電気伝導度を測定し、流量を計算にて求める方法です。流量の多寡によらず比較的簡易に測定可能ですが精度はよくありません。食塩以外の試薬もありますが、食塩を利用することが多くなっています。




































この中で、あまり知られていない「塩分希釈法」について説明します。
「塩分希釈法」は、山の中の渓流など水の流れが乱れているようなところで、流速計法や容積法などが使えないような時に用いています。
この方法は測定結果の精度や再現性は高くはありませんが、山中の小さな渓流などにおける簡便調査法として実用的なものとされています。
方法としては、上流側から1リットルの食塩水を流します。
同時に下流側で電気伝導度の計測を開始し、食塩水投入から5秒間隔で電気伝導度を記録していきます。
食塩水が流れてくると、下流側の測定地点ではどんどん塩分の影響により電気伝導度が高くなり、あるところまで来ると食塩水は薄められてもとの値に下がっていきます。
もとの電気伝導度に落ち着いたら測定終了です。
増加した電気伝導度と増加から減少までかかった時間から流量に換算します。

塩分希釈法.gif

時間と、電気伝導度の関係は概ね上図のようになります。
上流側から食塩水を流すときは、その間に流れが分かれているところや淵など流れが留まっているところは避ける必要があります。
「塩分希釈法」による流量算出式は下式で計算します。
Q=q・T/[λ(tn-to)]
ここに
q:投入塩水の量
T:投入塩水の電気伝導度
tn:渓流の電気伝導度の増加終了時間
to:渓流の電気伝導度の増加開始時間
λ:渓流の平均増加電気伝導度(λ:Tave-To)
Tave:測定中の渓流の電気伝導度
To:塩水投入前の渓流の電気伝導度
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電気伝導度について

水文調査でよく使う電気伝導度について調べてみました。

電気伝導度(EC・electric condacttivity)とは、電気の通りやすさを示す指標です。
電気伝導度観測は以下の点で役立ちます。
①流域の大まかな水文地質特性
②地下水系統の異なる水の判定
③水質変化の監視
④異種の水塊における混合等の把握
単位は、μS/cmをよく使います。
これを1mS/mに換算すると、1μS/cm=10^-6S/10^-2m=10^4S/mとなり、1mS/m=10^-3S/mで、10^4S/m<10^-3S/mとなるそうです。
これにより1mS/mの方が1μS/cmより10倍大きくなるようです。
日本の天然水の一般値としては、
・雨水・・・・10~30μS/cm
・上流のきれいな河川・・・・110μS/cm
・下流の汚れた河川・・・・200~400μS/cm
・海水・・・・45000μS/cm
です。
海水の値が真水よりも異常に大きい値を示すので、塩水による地下水追跡にも使うことができます。

電気伝導度と同じような言葉で、電気伝導率がありますが、これは違うものです。
違いとしては、JIS K0130によると、
①電気伝導度・・・・電解質水溶液で満たされた電極間の電気抵抗の逆数。
②電気伝導率・・・・ 面積1平方メートルの2個の平面電極が1メートルで対向している容器に電解質溶液を満たして測定した電気抵抗の逆数で、 「導電率」とも言います。

地下水の流向流速測定

地下水の流向流速測定にもいろいろな方法があります。

大きく分けると、
①単孔式
一つの測定孔で観測を行う方法で、熱中性子検出法、電位差法、熱量法、テレビ法、レーザー法などがあります。
②多孔式
複数の測定孔を用いて観測を行う方法で、トレーサー法、水位測定法などがあります。
それぞれの方法の特徴について、以下の表にまとめました。

測定方法測定原理長所短所










ホウ素を測定区間内に注入し、指向性を持たせた中性子検出器にて各方向のホウ素濃度を観測します。ホウ素濃度の希釈状況の変化から流速と流向を求めます。
ホウ素は熱中性子を好んで取り込む性質があり、トレーサーとして利用できます。
幅広い流速範囲で測定可能です。(3×10-5~1×10-1cm/s)装置が複雑です。

大きい孔径が必要です。(観測孔径φ80mm)

地下水の水質を変化させてしまいます。




地下水と比抵抗の異なる溶液(蒸留水、食塩水等)を測定区間内に注入し、測定器の円周上に設置された電気抵抗検出器にて電気抵抗を観測します。
注入溶液の希釈状況の変化から流速と流向を求めます。
 幅広い流速範囲で測定可能です。(1×10-5~1×10-2cm/s)

流向の精度が高いです。(±7.5°)

装置が複雑です。
地下水の電気伝導率により測定できない場合があります。
最大測定時間が大きく、 やや大きい孔径が必要です。(φ75mm~φ100mm)



測定器に内蔵したヒーターにより地下水をあたため、測定器の円周上に設置された温度センサにて地下水の温度を観測します。
地下水の温度変化から流速と流向を求めます。
現在では最もよく用いられている方法です。
地下水が懸濁していても測定ができます。

比較的小さい孔径で測定できます。(φ50mm以上で測定可能)

短時間で測定ができます。(1箇所あたり約2時間)
適用できる流速範囲が狭いです。(0.01~1cm/分
=1.6×10-4~1.6×10-2cm/s)



測定器に赤外線カメラを内蔵し、地下水中を移動する微粒子を観測します。
微粒子の移動速度、方向から流速と流向を求めます。
小さい孔径から測定できます。(φ40mmより測定可能)
機材にも依るが、速い流れでも測定できます。
映像をビデオなどに記録でき、後で再測定することができます。
地下水が懸濁していると測定できません。






レーザー光により干渉縞を発生させ、粒子が干渉縞を横切る周期から流速と流向を求めます。深い深度(200m)まで測定可能です。

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食塩水などのトレーサーをある孔に投入し、その周辺に設置された複数の観測孔でトレーサーの到達時間を測定することによって、流速と流向を求めます。測定孔間の実際の地盤状況を反映した測定値が得られます。水位変動による影響が大きいのが特徴です。
流速が遅いと非常に時間がかかります。
観測孔の配置が粗い場合、測定値が得られません。
地下水の水質を変化させてしまいます。





複数の観測孔で同時に水位を測定し、その水位差から流速と流向を求めます。一度観測孔を設けてしまえば、測定は簡便で、何回でも測定可能です。対象帯水層の透水係数がわからなければ流速が求められません。
できるだけ同時に水位を測る必要があります。

流量の測定について

流量の測定方法について調べてみました。
 
(1)流量測定を行う目的
地表水の流量は、流域、降水量、蒸発量や地下水との流出・流入量などによって変化しています。
このため、流域や降水量などがわかっている場合では、地表水の流量を測定することで、地下水の流出・流入量を想定することが可能となります。
地表水の流量は降雨時の土壌の飽和度や中間流出までの時間的な速さなどの要因によっても変化しますが、直接的な測定ができない地下水の流出・流入量を想定し、地質との関連を検討するために、有効な手段となります。
特に、岩盤が露出し地下水への流入がほとんどない条件で長期間にわたり降雨がない場合には、地下水の流出のみ(基底流量)となり、地質と地下水量の関係を把握しやすくなります。
地質調査の観点から、地表水の流量測定を行う目的として、
①地質区分と水理地質や地下水の関係の把握
②地表水の帯水層への涵養量の推定、或いは帯水層から地表への流出量の推定
③断層などの地下水の供給源の推定
といった内容が挙げられます。
これは、地質調査のなかでも水文調査の項目になりますが、具体的には、
①トンネルや大規模な切土などを対象とする土木工事で問題となる地下水調査
②岩盤地帯での地下水探査

などのような適用事例となります。
 
(2)流量の測定方法について
ここで、当社が行っている小規模な河川や渓流などでの地表水の流量測定方法を紹介します。
測定手法として、
①容器法(直接計測法)
②流速計法
③堰法
④投入試薬の希釈度の測定(塩分希釈法)
が挙げられ、各々の測定方法や適用条件などについて下表にまとめました。

表1 地表水の流量測定手法
測定方法概要適用条件備 考
1.容器法渓流を土嚢や粘土などにより止水し、VP管などを通して流下させ、流量を直接測定する方法です。直接的な測定であり精度は高いが、流量が多い場合は測定が困難です。簡易な方法では地表水の完全な捕捉が難しくなります。
2.流速計法通水断面を測量により作成し、流速計により数ヶ所の流速を測定し流量を求める方法です。
流速計で測定できないような浅い断面では浮きを使用することもあります。
流量が多い場合に適していますが、逆に水量が少ない場合には、測定が難しく精度が悪くなります。
また、流速が通水断面内で大きく変化する条件では精度が悪くなります。
容器法や堰法に比べると、流速計の精度が問題になります。
3.堰 法河川や渓流の途中に三角堰や四角堰を設置しノッチ高を測定する方法です。
流量の少ない場合には三角堰、多い場合には四角堰を設置しますが、四季で変動の大きい所には適していません。
玉石の分布地での堰の設置は困難です。
砂や礫などの堆積物が分布する場合、地表水が地下へ浸透しやすくなります。
岩盤での堰の設置は、コンクリートでの施工となり手間や経費はかかりますが、浸透水がないので精度は高くなります。
一般に堰は常時設置するため、簡易な構造の場合には、豪雨時に破損する可能性があります。
4.塩分希釈法一定時間、定量の食塩水を継続的に渓流に投入し、下流側にて電気伝導度を測定し、流量を計算にて求める方法です。流量の多寡によらず、比較的簡易に測定可能です。食塩以外の試薬もありますが、食塩を利用することがほとんどです。











































地下水盆について

地下水盆という言葉があります。
この言葉は、地下水に携わっている人たちは使っていますが、一般には使わないので専門用語だと思います。

(1)地下水盆とは
この地下水盆(Groundwater Basin)ですが、とは、簡単に言うと、地下水が入っている「お盆」、すなわち地下水の「容れ物」のことです。
この「容れ物」ですが、バケツなどのように単純なものではありません。
地下水は、地層や岩盤の中の「飽和帯」と呼ばれる水で満たされた空間に存在する水のことですから、地下水の「容れ物」は、地層や岩盤からできています。
そして、大規模な「帯水層」もしくはいくつか「帯水層」を包括したものです。
一般的に、「帯水層」とは、地下水を含む地層のことを呼んでいますが、厳密に言うと、「地層や岩盤を構成する粒子間の空隙・間隙が大きく、地下水によって飽和されており、我々人類が利用できる水を産出することができる地層や岩盤」のことだそうです。
松山平野を考えてみると、扇状地の平野ですが、基盤岩と呼ばれている岩盤とその上の地層との境界は鍋底のような形をしています。
基盤岩を構成している岩盤はおおむね緻密で硬く、割れ目も少ないので地下水が浸透しにくい状態になっています。
そこで、深くしみこんだ地下水は、上の地層のなかにどんどん溜まっていくようになります。
このような地下水を大量に貯留するような地下構造を「地下水盆」といい、松山平野のみならず、平野と呼ばれているところの地下は大きな「地下水盆」になっていると考えられています。
但し、地下水は「地下水盆」がどんなに大きくても、渇水が長く続いたり、過剰揚水などの人的要素などで、地下水の急激な低下を招いたり、枯渇したりもします。
したがって、今後は「地下水盆」の管理が大切になってきます。

(2)地下水盆の管理
「地下水盆」の管理は、まずは既存井戸資料を収集するところから始めますが、場合によっては既存井戸での観測や試験が必要なこともあります。
そして、水収支として、シュミレーションを行いますが、
①帯水層における各係数
②過去の水位変動状況
③過去の揚水量実績
④地下水盆の形状や領域区分
⑤帯水層単元の区分
⑥境界条件
などに基づいて試算を行います。
「地下水盆」の管理は、地盤沈下の対策にも役立っています。
地下水は、一般的には、広い「帯水層」の中を非常にゆっくりとした速度で流れています。
これらの地下水は「帯水層」でつながっており、一つの「地下水盆」を形成していると考えられています。
したがって、ある場所で地下水を汲み上げると、その地域だけでなく広い地域にわたって地盤沈下が起きます。
これは、下図の地盤沈下のイメージ図の通りです。
地盤沈下は、主に粘土層が厚く軟弱な地盤の地域に起こりますが、これは地下水を過剰に汲み上げることによって、粘土層が収縮するために起こるというのが一般的です。
そのしくみは、地下水を過剰に汲み上げることにより地下水位が下がると、地下水のとおり道である「帯水層」の水圧が下がります。
そのため、その上にある粘土層の中に含まれていた水が水圧の低い「帯水層」にしぼり出され、粘土層が収縮し地面全体が下がり地盤沈下として私たちにいろいろな影響を与えることになります。
こうして起こった地盤沈下は、たとえ地下水の汲み上げを止め地下水位が元に回復したとしても、ほとんど元に戻ることはありません。

図.1 地盤沈下のイメージ図
地盤沈下イメージ図
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