揚水試験での揚水量や揚水時間の考え方

最近、いろいろな現場で揚水試験をする機会が多くなっています。

一般に揚水試験といっても、現場透水試験より少し精度よくするために、揚水量を測定する簡易揚水試験から、予備揚水試験、段階揚水試験、連続揚水試験と順序だって時間をかけてする揚水試験まであります。
(1)予備揚水試験
孔内洗浄である程度きれいな水が出てきたら予備揚水試験の準備にかかります。
予備揚水といっても、やっぱり段階での揚水は行います。
段階揚水試験の目安としての揚水量の把握が主な目的ですが、その他にも目的はあります。
①洗浄効果の確認
②水位変化状況のチェック
③各測定器機の設置状況と作動状況のチェック
④排水設備のチェック
⑤概略の限界揚水量の把握
⑥水理定数の概算
このように、段階揚水試験の前にもいろいろな準備が必要になります。
(2)段階揚水試験
段階揚水試験は、井戸能力の把握を主な目的にしています。
つまり、水位低下量は時間に依存するため、揚水量を各段階ごとに変化させて、水位が一定になるまで測定し、その揚水量における水位低下量を測定します。
ここで限界揚水量を推定することになります。
限界揚水量は、段階揚水試験時の揚水量と水位変化をグラフにプロットした際の屈曲点(急変点)における揚水量のことです。
したがって限界揚水量を上回るとわずかな揚水量変化で水位変化が大きくなります。
一般的な井戸公式に従えば、透水係数が小さくなることを意味しますが、実際には井戸周辺の流速が大きくなり非ダルシー流れ(層流から乱流へ)になり抵抗が大きくなるという解釈や、流速の増大にともなって帯水層を構成する粒子移動が大きくなり目詰まりが生じ始めているという解釈が一般的です。
段階揚水試験が何段階必要かということについては、詳しく書いてある文献では、『予備揚水試験の結果において、概略の限界揚水量を推定できた場合は、それ以下の揚水量で4~6段階、それ以上の揚水量で2段階程度を設定します』と書いています。
私も、概ねそのような基準でやっていますが、揚水量が大量にある場合とかは、水中ポンプの能力もあり、限界揚水量を把握できないこともあります。
この際、水中ポンプの能力をアップして限界揚水量を求めたらいいと思う人もいるかも知れませんが、例えば計算上では1200ℓ/minが限界揚水量だとして、使用量がせいぜい80ℓ/minだとしたら、揚水試験での最大揚水量は150ℓ/min程度で十分だと私は思います。
大量に汲み上げて、せっかくいい状態の井戸の”みずみち”をわざわざ壊す必要がないからです。
あと、段階の揚水時間ですが、1~2時間程度とするのが一般的とは文献に書いていますが、1~2分で、すぐに水位が一定になるような揚水量の段階試験では、私は20~30分程度で次の段階へ進んでも良いと思っています。
また、ものすごく揚水量の少ない井戸での段階揚水試験はもっと困難です。
特に、深井戸の場合、水中ポンプを設置する必要があり、バルブを絞っての試験だと一定の揚水量を汲み上げられない場合があります。
私の経験では、15ℓ/min以下での段階揚水試験は特に困難でした。
(3)連続揚水試験
連続揚水試験は、段階揚水試験で求められた限界揚水量の通常70~80%程度を適正揚水量として試験を行っています。
これは、帯水層を破壊せず、泥だまりへの土砂の流入を極力おさえながら、なるべく多量の揚水量を得ようとする経験的な方策といえます。
でも、先に述べた例のように、限界揚水量が1200ℓ/minで、使用量が80ℓ/minの場合などはどうしたらいいのでしょうか。
1200ℓ/minの70%としても840ℓ/minあります。
私の経験では、使用量より少し多めの100ℓ/min程度で試験を行いました。
これは、
①使用量を考えると840ℓ/minでの連続揚水試験を行う必要がない。
②周辺の井戸への影響がある。
③この井戸自体の影響(砂が大量に上がるとか目詰まりを起こすとか)が懸念される。
④揚水量が多量なので、地盤沈下も想定される。
上記のような理由です。
次に、連続試験の揚水時間ですが、『24時間は測定する必要がある』と書いている文献もありますが、私はこれも井戸しだいだと思っています。
関東地質調査業協会発行の「現場技術者のための地質調査技術マニュアル」によると、水位安定を見極めるのは困難な場合が多いため、以下のパターンになったかどうかで、試験終了の目安としています。
①被圧帯水層で上下に信頼できる難透水層がある場合は、試験中に非平衡解析を行い、時間―水頭低下曲線が理論曲線に一致していると判断できたとき。
②漏水性帯水層では、長時間経過すると理論上水位が一定になる。したがって、この場合も試験途中で漏水解析を行い、理論曲線と一致していると判断できたとき。
③不圧帯水層では、遅れ重力排水の影響で、ある時間経過すると見かけ上水位がほぼ一定となり、その後、再び水位が低下し始める。その水位低下曲線はタイスの標準曲線に従って変化することから、この曲線に一致していると判断できるとき。

なんとも判断基準が複雑ですが、最近では24時間汲むと周辺の井戸に影響を受けたり、夜間での発電機の騒音を嫌ったりするので、そのあたりも加味して『水位が一定になった』ところで終了することが多いようです。
私は、この判断として『1時間程度水位が一定』を目安としているのですが、目安値として『1mmも違わない』ではなく、mm単位の変動は、例えば大規模河川の近くだと当然河川水位の影響をうけているだろうし、海のそばだと潮位の影響を受けています。
したがって、最初測った自然水位にピタッと合わなくても、また、1mm、2mm水位が上下しているとしても、それは平衡水位と考えないといけないと私は思います。
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一般細菌と大腸菌

水道法に基づく水質基準には51項目が設定されています。
その中で健康に関する項目は31項目あり、重要な指標として一般細菌と大腸菌が規定されています。

(1)一般細菌
一般細菌検査の導入はRobert Koch3)の発案によるもので、一般細菌の基準値としては、集落数が100個/ml以下となっています。
これは、一般細菌数が100/ml以下の状態ではコレラ患者の発生がないという事実に基づいたものだそうです。
一般細菌は、決められた方法で培養して増殖した細菌類のことで、特定の細菌を指す言葉ではないそうです。
ほとんどが健康に害のない自然界に存在する細菌だそうですが、一般細菌が検出されると、病原性の細菌が含まれる可能性が高くなるため、この一般細菌は飲用水の汚染の指標として用いています。
分類学的には、特定の菌または1つのグループを指したものではなく、また水中の生菌の総数を示すものでもありません。
清涼な水には少なく、汚染された水ほど多い傾向があるため、水の汚染状況や飲料水の安全性を判定する上で有効な指標となっています。

(2)大腸菌
平成16年以前は、大腸菌群を代替指標として用いてきたのですが、水系感染症の主な原因菌が人を含む温血動物の糞便を由来することから、微生物的な安全性確保に関して大腸菌の検知は重要な意味があります。
大腸菌は人や温血動物の腸管内に常在し、糞便由来でない細菌も含む大腸菌群と比べて糞便汚染の指標として信頼できることより、今は水質基準においても、大腸菌群から大腸菌に検査項目が変わっています。
大腸菌は、検出されないことが基準値です。
大腸菌は、動物の大腸にあり、たいてい無害であり、原則として毒性はありません。
ただし.保健所で行えるような簡単な検査では.毒性のある病原菌と区別できません。
そこで、大腸菌を病原菌の「指標菌」として.使用しています。
大腸菌は糞便とともに排出されます。
水から大腸菌が出るということは、その水は糞便の影響を受けているということで、糞便を通じてうつる伝染病のバイキンを含んでいる可能性があり、ということと同じ意味になります。
塩素滅菌などで大腸菌が見られなくなったら、一応、そういった糞便由来の伝染病のリスクはなくなったと判断できます。

井戸水の水質試験

水道水は水道法第4条に基づき、省令により50項目の水質基準値が決められ、平成21年4月施行されています。

これは「全項目検査」と呼ばれる検査で、水道施設では原則として年1回の頻度で検査が行われています。
但し、水道ではない自家用井戸については、水道水のように水質検査の義務はありません。
したがって所有者の自己責任で使用していますが、私たち井戸の専門業者や保健所等では定期的に検査を受けることを勧めています。
測定項目は、50項目の中から選択して行うことになりますが、重要な項目として、
①大腸菌
②一般細菌
③塩化物イオン
④有機物(TOC)
⑤硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
⑥pH
⑦色度
⑧濁度
⑨味
⑩臭気
が該当しています。
通常、年1回程度の検査で良いと思います。
鉄、マンガンは有害物質ではなく、飲用しても健康に直接関係する項目ではありませんが、多く含まれると井戸水の味を悪くしたり、着色や濁りの原因になり、飲用だけでなく洗濯等にも不向きです。
そこで前述した10項目に加えて、鉄、マンガンの検査を行う保健所等の検査機関も多く見られます。
井戸の周辺で土地利用状況に変化があった場合など、井戸水の水質に影響が出る場合があります。
このような場合は、私たち井戸の専門業者や保健所等に相談されて、検査項目を追加することも場合によっては必要です。

                 水質基準項目一覧表
項目項目
01一般細菌26総トリハロメタン
02大腸菌27トリクロロ酢酸
03カドミウム及びその化合物28ブロモジクロロメタン
04水銀及びその化合物29ブロモホルム
05セレン及びその化合物30ホルムアルデヒド
06鉛及びその化合物31亜鉛及びその化合物
07ヒ素及びその化合物32アルミニウム及びその化合物
08六価クロム化合物33鉄及びその化合物
09シアン化物イオン及び塩化シアン34銅及びその化合物
10硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素35ナトリウム及びその化合物
11フッ素及びその化合物36マンガン及びその化合物
12ホウ素及びその化合物37塩化物イオン
13四塩化炭素38カルシウム、マグネシウム等(硬度)
141,4-ジオキサン39蒸発残留物
15シス-1,2-ジクロロエチレン40陰イオン界面活性剤
16ジクロロメタン41ジェオスミン
17テトラクロロエチレン422-メチルイソボルネオール
18トリクロロエチレン43非イオン界面活性剤
19ベンゼン44フェノール類
20塩素酸45有機物(全有機炭素(TOC)の量)
21クロロ酢酸46pH値
22クロロホルム47
23ジクロロ酢酸48臭気
24ジブロモクロロメタン49色度
25臭素酸50濁度

段階揚水試験と限界揚水量

井戸を掘って、その井戸にどれくらいの揚水量があるかを調べる試験として段階揚水試験があります。
 
段階揚水試験の方法としては、各段階の揚水量をほぼ均等に5~7段階以上に分け、各段階で水位が安定するまで継続して揚水します。
段階揚水試験は、揚水量を順じ上げていく段階上昇と、最大揚水量から揚水量を順じ下げていく段階下降がありますが、通常は段階上昇で実施しています。
段階上昇で実施しますと、最初の1~3段階くらいまでは、揚水量が少ないので水位の安定も早く、揚水時間も30分程度ですが、揚水量が多くなるにしたがい徐々に水位の安定に時間がかかるようになります。
段階揚水試験は井戸の生産能力(揚水能力)を見る試験であると言えます。
段階揚水試験のデータ整理としては、横軸に揚水量、縦軸に各段階の水位降下量をプロットします。
揚水量と水位降下が比例していれば、このグラフは45°程度の右上がり直線になりますが、たいていの場合この直線は揚水量の増加にともないだんだん立っていくようになります。
その際、グラフで変曲点(折れ点)が出てきます。
水道施設設計指針(日本水道協会)では45°を越える変曲点を限界揚水量としています。
つまり、限界揚水量とは、この井戸で揚水するのはこれが限界という数値です。
但し、限界揚水量とは、ここまでが実際に揚水していい数値とは違い、実際にその井戸で揚水してよい数値としては適正揚水量があります。
適正揚水量は、限界揚水量の60~80%としています。
つまり、100t/dayの限界揚水量だと実際に揚水出来るのは60~80t/dayということになります。
最近では井戸能力の減退を考慮して、60~70%程度に抑えているケースが多く見られます。

貯留係数について

地下にどれくらいの水があるかを調べる際に、帯水層の性状、すなわち地下水の貯留層としての透水性や資源量を評価する数値として、帯水層定数(または帯水層係数と呼ばれることもある)があります。
これは、主に透水量係数と貯留係数の2つで評価しています。
この中の透水量係数は、帯水層厚との関係で透水係数が算出されるので、広く用いられていますが、貯留係数は水を学んできた私にとってもまだまだうまく利用できていません。

(1)水の貯水能力のある地層
地下水の貯水についてはまだまだ不明の部分が多いのですが、調査ボーリングを実施することによって地下の地質や土質、またそれに伴う岩石を調べることはできます。
だけど、これだけでは地下貯留量を推定することは困難です。
大雑把な推定の仕方として、水の貯水能力のある地層は、砂岩・礫・砂・粘土です。
地層の貯水能力と保水率から計算した水湧出量は砂岩の場合は容積比で1~5%です。
礫や砂の場合は10%程度です。
粘土は保水能力としてはあるのですが、不透水性であり保水率がゼロなので、湧水能力は実質的にはゼロとなっています。

(2)貯留係数について
地下水がどれくらい貯留しているかを数値で表したのが貯留係数(Storage coefficient)です。
貯留係数とは、帯水層の単位水平断面において、地下水位(または被圧水頭)が単位量変化により生じる出入水量(排出または注入)と定義されています。
これは、不圧帯水層と被圧帯水層では意味が異なり、
①自由(不圧)地下水の場合
帯水層は重力によるものであり、単位の水頭変化により生じる不圧帯水層の単位体積当たりの水の出入量、すなわち単位体積の土の貯留水の変化量を表わします。
物理的な意味としては、有効空隙率あるいは比湧水量になります。
②被圧地下水の場合
帯水層が弾性体に近いとされており、単位の水頭変化によって生じる被圧帯水層の層厚変化量、すなわち圧縮率を示します。
物理的な意味としては、圧縮係数とか開放係数とかになります。
つまり、自由(不圧)地下水の場合は、排出された水量の分だけ、水で飽和されない空間がありますが、 被圧地下水の場合は、かならずしもこうした空間ができるわけではありません。

(3)揚水試験と貯留係数
貯留係数は、揚水試験で算出することができます。
一般的に用いられているタイス法・ヤコブ法・チョウ法で算定式があります。(回復法はありません)
貯留係数とは、この揚水試験で汲み上げられた総水量を帯水層中にできる水位低下体積で割ったものです。
帯水層は「水と砂や礫など」から構成されており、そこから揚水される水量は砂や礫の体積分だけ少ないから、比である貯留係数は、ほとんどの場合は1以上にはなりません。
1以上になった場合は、大きな漏水や絞り出しなどによって多量の水が帯水層以外から補給されていることを示しています。
自由(不圧)地下水の場合は帯水層の有効空隙率に等しくなりますが、被圧地下水では水位低下体積にあたるものが水圧低下量になるので不圧地下水の場合の数分の一ないし数十分の一、もしくは数千分の一にまで小さくなります。
すなわち、貯留係数(S)の値としては、
①自由(不圧)地下水の場合
S=0.01~0.35
②被圧地下水の場合
S=1×10-2 ~1×10-3
程度のオーダーとなっています。
この揚水試験と貯留係数との数値の信頼性ですが、揚水試験は、揚水井と離れた箇所に設置した観測井の複数孔の井戸で実施するものが一般的ですが、深井戸の場合には、費用・時間の制限から揚水と観測を単孔で行う場合がほとんどになります。
この際、井戸の構造によって生じる井戸損失の影響があり、透水量係数は小さめに、貯留係数は大きめに算出されることになります。
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